2017年07月28日
【ROADBIKE IMPRESSION 2018】PINARELLO DOGMA & GAN S
PINARELLOのフラッグシップモデル、『DOGMA F10』、そしてドグマのレーシングスペックを受け継ぐミドルグレードモデル『GAN S』をグランフォンド八ヶ岳の一部コースを用いてインプレッションを行いました。
ピナレロはグランツールでの勝率が非常に高いメーカーであるのも特徴。先日もスカイチーム のクリス・フルーム選手をしてツール・ド・フランス4勝目を挙げました。ということは厳しいコース、環境であればあるほどそのパフォーマンスが活きているということか!? グランフォンド八ヶ岳のコースはロードバイクのライドにはうてっつけのネイティヴな空間です。ここでピナレロ最新のテクノロジーを堪能してきました。これらのバイクの性能が良いことはもはや周知の通りですが、実際のライドシーンでどんなパフォーマンスが発揮されるのか、今回のテストライドではそこにフューチャーしました。
DOGMA F10/F8のエボリューションモデル
F8の後継モデルのF10。もちろんF8を超えるバイクの開発されたが、具体的には優れた空力バランスを備え、軽量で剛性を増した「オールラウンド」な特性を維持することに注力したという。同時にどのようなシチュエーションでも、俊敏で精度の高いコントロールを保証する「ピナレロ・フィーリング」は損なうわけにはいかない。すでに高い評価を得ているF8をベースに、マテリアルを変えず大きなデザイン変更もなく性能をアップさせる設計は困難を極めたという。
エアロダイナミクス
BOLIDE TTとアワーレコードマシンのBOLIDE HRで培った空力解析が応用された。CFD(数値流体力学)解析技術を用いて、フレーム単体だけでなく、ライダー+自転車の状態でも解析され、チームスカイが実際に使用するコンポーネントを装着した状態でおこなれた。結果はシートチューブにもボトルを装着した状態でもDOGMA F8と比較して、12.6%の空気抵抗軽減に成功した。
ピナレロ・フィーリング
チームスカイからは、F8のその素晴らしいライド・フィールは変えないようにとリクエストがあったという。
剛性アップ・軽量化
日本の東レが開発した現時点で最高の強度と剛性の「TORAYCA T1100G」カーボンファイバーを、使用する樹脂量を最小限に抑えたプリプレグとして使用する。
そしてF8と比較して7%の剛性アップと、6.3%の軽量化の実現に成功。フレーム単体で820g(53サイズ・塗装前)を実現した。
DOGMA F10 フレームセット
サイズ:42/44/46.5/47/50/51.5/53/54/55/56/57.5/59.5/62(C-C) ※42と57.5以上のサイズは取り寄せになります。
DOGMA F10フレームセット 価格(税抜):650,000円※2017年6月30日改訂
DOGMA F100 914/Giro D’italia (限定受注発注色)フレームセット 価格(税抜): 697,000円
※限定品につき予告なく終了する場合がございます
MYWAY フレームセット 価格(税抜):697,000円※確定オーダーによる受注発注のみ
●エアロヘッドセット・シートポスト付属
フレームサイズ:42、44、46.5、47、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5、62
マテリアル:TORAYCA T1100 1K nanoalloy カーボン
重量:820g(サイズ53、塗装前)
カラー:167 BLACK LAVA / 166 Red MAGMA / 905 Team SKY / 170 BOB / 165 Sideral White / 168 Sulfur Yellow / 169 Asteroid Red / 906 Team WIGGINS / 909 RHINO 2017
IMPRESSION・Kenichi YAMAMOTO
万能な性能をより明確に感じられた
話題のモデルだけあって、過去に筆者もテストライドを実施していたり、多方面で語り尽くされた感のあるドグマF10ではあるが、この八ヶ岳のコースにおいて新たな発見もあった。
八ヶ岳のコースはロングダウンヒルあり、平地あり、アップダウンあり、そして上りも緩急揃う、走り応え抜群のレイアウトだ。コースの標高差をグラフで見ると上りの多くは後半に控えているため、さしずめグランツールのクイーンステージのような雰囲気も醸し出している。雰囲気的にも親和性が高く気分を高めながら走ることができた。
そのスムーズな加速性は交差点で一時停止することに、軽快さを実感する。ときどき声に出してしまうほどで、すれ違う通行人から見たら単なる奇人と思われたことだろう。高剛性感というよりもしなりを適度に抑えてスムーズに進んでいるようなイメージだ。それは振動吸収性のよさにもつながっている点だと思う。一年を通じて気温差も激しい地域であるので、路面状況もめまぐるしく変わる。お世辞にも綺麗とは言えない路面もあるが、避けきれずヒビ割れに乗ってしまっても落ち着いて処理できる安定性もピナレロの特徴だろう。その軽さからダウンヒルではやや慣れが必要に思えるが、下りでスピードに乗った時の吸い込まれるような加速感はそう多くのバイクが持っている特性ではない。ぜひスキルを磨いてF10を乗りこなす喜びを感じてほしい。
上りは非常に鋭く走る。フルクラム・レーシングゼロとの相性は抜群で、硬質なホイールの性能が良く発揮されている。重量の軽さはもちろんのこと、ペダリング時のパワーロスが極めて低いイメージだ。どんなペダリングも許容するような頼もしさがある。
エアロ・軽さ・コンフォートとすべてを兼ね備えているということが、グランフォンド八ヶ岳のコースを走ったことでより明確に感じられた。まさにグランツールを制覇するにふさわしいバイクといえる。(山本)
関連URL:http://www.riogrande.co.jp/news/node/55354
GAN S/航空機にも用いられるT700カーボンを使用
ドグマ直系のモデルで、GANシリーズは3モデルラインナップしている。上位からGAN RS 、GAN S、GANとなり、その大きな違いはメインマテリアル素材の違いだ。いずれもカーボンフレームであるが、カーボンファイバーのグレードを変えることで、グレードに差を設けている。
ハイエンドのGAN RSには高強度T900カーボンが用いられ、今回試乗レポートに用いたGAN Sは中間のグレードにあたり、T700カーボンをもちいている。もっともお手頃な価格のGANのフレームにはT600カーボンを採用している。
ハイエンド・レーシングモデルとしてGAN RSが、サイクリングからレースまで幅広く対応するフルカーボンロードとしてGANが、そしてGAN SはドグマF8の特徴を色濃く受け継ぎ、もっともコストパフォーマンスに優れたミドルグレードモデルとなる。まさにグランフォンドのようなライドシーンには適したモデルといえる。
GAN S
マテリアル:ハイストレングス T700 カーボン
サイズ:44SL, 46.5SL, 50, 51.5, 53, 54, 55, 56, 57.5, 59.5 (CC)
フォーク:ONDA F8 T700
New アルテグラ 11S 完成車 価格(税抜):435,000円
SPEC:メインコンポ / ULTEGRA R8000 11S、ホィール / シマノ WH-RS010、シートポスト / 専用フルカーボンエアロ、ハンドル・ステム / MOst アルミ・エアロ、バーテープ / MOst UGバーテープ、サドル / フィジーク・アンタレス R7※ペダルは別売り
カラー:175/カーボンレッド、177/BOB、179/レッドカーボン
完成車参考重量:8.2kg※サンプル車両を実測したもので、実際との誤差がある場合があります
105 11S 完成車 価格(税抜):375,000円
SPEC:メインコンポ / 105 11s、ホィール / シマノ WH-RS010、シートポスト / 専用フルカーボンエアロ、ハンドル・ステム / MOst アルミ・エアロ、バーテープ / MOst UGバーテープ、サドル / フィジーク・アンタレス R7※ペダルは別売り
カラー:175/カーボンレッド、176/カーボンスカイ、177/BOB
完成車参考重量:8.6kg※サンプル車両を実測したもので、実際との誤差がある場合があります
カンパニョーロ・ポテンツァ 11S 完成車 価格(税抜):435,000円
SPEC:メインコンポ / ポテンツァ 11s、ホイール / フルクラム レーシング5、シートポスト / 専用フルカーボンエアロ、ハンドル・ステム / MOst アルミ・エアロ、バーテープ / MOst UGバーテープ、サドル / フィジーク・アンタレス R7※ペダルは別売り
カラー:175/カーボンレッド
ドグマF8のテクノロジーを受け継ぎハイストレングスT700カーボンを用いたフレーム
エアロダイナミクス効果を高めるために、シートポストクランプは内蔵式だ。フレームとポストのグラフィックに統一感がある
曲線美あふれるONDAフォークのデザイン。グラフィックがさらに引き立てる
IMPRESSION・Taketo KOTAKA
レースレディ・モデルとしてベストな選択
ピュアレーシングモデルであるDOGMA F8のDNAを引き継いだ弟分であるGANシリーズにはフレームおよびフォークで使用しているカーボンのグレードに差をつけてGAN、GAN S、GAN RSの3つモデルを用意している。今回私が試乗したのは、真ん中のグレードにあたる、GAN Sだ。試乗した瞬間、ONDA F8 T700フォークの強烈な印象が、走行フィールに現れる。フレームの印象が霞むほどのかっちりとした剛性感は、ばんえい競争の競走馬や犬ぞりの犬のようにぐいぐいとバイク全体、そしてライダーを前へ前へと導く。乗り味はあくまでレーシーだ。また歴代のONDAフォーク同様の下りでの安定性も忘れてはいけないポイント。安定性が安心感につながり、レースの下りコーナーでも狙ったラインを思うままに攻めていけるだろう。フォークの印象が強いモデルだが、一方のフレーム自体の性能は少し穏やかな気がした。ステイ部分がしなやかで、振動吸収性に優れていると感じたのは、フォークとの性能バランスをとるためだろうか。これからレースを始めようと考えているサイクリストにとっては、ベストな選択のひとつであることは間違いない。
2018年モデルはカラーリングが一新。シートステイからシートポストにかけてのグラフィックは今までのピナレロのイメージを覆すような前衛的デザイン。サイズ調整のためにシートポストを上げてみると、フレームとのグラフィックの繋がりがキレイに表現できていた。サイズによってできない人もいるかもしれないが、粋な計らいといえる。(小高)
関連URL:http://www.riogrande.co.jp/news/node/55458
ウエア提供:Rapha Racing
文:山本健一、小高雄人 写真;海上浩幸
協力:カワシマサイクルサプライ http://www.riogrande.co.jp/
グランフォンド八ヶ岳 公式ページ:http://gf-yatsugatake.jp/
グランフォンド八ヶ岳 公式FB:https://www.facebook.com/gfyatsugatake/
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著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得