2016年10月29日
【ORBEA】オルベア2017年モデル「オルカOMR」「アヴァンOMP」発表
スペイン・バスク地方に本拠を置くオルベアの2017年ロードモデル、「オルカOMR」と「アヴァンOMP」の2車種が発表された。先日、オルベアのロード製品マネージャーであるヨゼバ・アリザガ氏が来日し、ニューモデルのコンセプトについて解説してくれた模様をお届けする。
「オルカOMR」フロント周りの進化で、レース性能をアップ
オルベアのフラッグシップロードであるオルカは、2003年に初代モデルが登場。独特の曲線が特徴的なフレームと、同じくバスク地方に拠点を置くプロチーム「エウスカルテル・エウスカディ」が使用したことで、人気モデルとなった。
2015年には、6代目モデルとなるオルカOMRが登場。フレーム形状は直線基調のオーソドックスなスタイルとなった。
そして新たに登場した7代目・2017年モデルのオルカOMRは、先代OMRを全体的にブラッシュアップし、レース性能を高めたモデル。見た目の変化は大きくないが、剛性、空力、重量、ジオメトリーとすべてが見直されている。
オルベアの新フラッグシップロード「オルカOMR」。オーソドックスなルックスながら、全体にわたって前モデルから見直しが図られている。
オルベアのロード製品マネージャー、ヨゼバ・アリザガ氏。自転車を愛する生粋のバスク人だ。
その中でも、特に大きく進化したのはフロント周り。ヘッドチューブは5㎜短くなり、フロントフォークも新設計された。
そのフォークは、昨年登場したTTバイクのオルドゥで採用されたフリーフローという形状を採用。ホイールとフォークブレードの隙間を拡大することで、ホイール周りを通過する気流をスムーズにし、空気抵抗を削減する仕組みだ。この結果、時速40kmで10㎞走行した場合、4秒のタイム短縮につながるという。
一見、フォークの幅が広くなったことで剛性面では不利に思えるが、ブレードの中間付近のカーボン積層を厚くすることで対策。フォークとヘッドチューブを合わせたフロント周りだけで、前モデルから横方向に26%、前後方向で20%の剛性アップを果たしており、ハンドリングやレスポンス性能を高めている。
新たに採用されたフリーフローフォーク。ホイールとフォークブレードの隙間を広げることで、ホイール周りの気流を改善し、空気抵抗を削減している。
オルベアは、エウスカルテル・エウスカディの解散に伴い、2015年からフランスのコフィディスにオルカを供給している。ニューモデルの開発には過去18カ月間、コフィディスの選手たちからのフィードバックがあり、今年のツール・ド・フランスでも新型オルカOMRのスパイバイクをジェフリー・スープ、ルイス・マテマルドネスらが駆った。
「特にコフィディスの選手からはフロントの剛性を上げてくれというリクエストが多かった。ナセル・ブアニのような強力なスプリンターがいるからね。新型フォークはコーナリングの精度も高く、一般サイクリストでも変化の違いを感じられるでしょう。私も、このフロントのデザインがお気に入りだ」と、アリザガ氏も自信を持っている。
フロント以外の部分も、全体的に進化している。ダウンチューブはほぼ円形の断面となり、チェーンステイと合わせて剛性アップ。ドライブトレインと呼ばれるフロントフォーク〜ヘッドチューブ〜ダウンチューブ〜チェーンステイと続くラインの剛性が向上したことで加速性能が向上している。
ジオメトリーも変更し、チェーンステイとホイールベースを短くし、BBの位置も1.5㎝下がった。これにより反応性、加速性を高めるとともに、ライダーがより低い前傾姿勢をとれるようにもなっている。
アリザガ氏も「加速力のアップは、スプリンターにとっても、クライマーにとっても武器になるでしょう」と語っている。一方、フレーム上部のトップチューブ〜シートステイ、シートポストは振動吸収性を高める設計となっており、快適な乗り心地とともに、トラクションの向上にも貢献する。なお、フォーク、リアステイは28Cタイヤも装着可能なクリアランスを確保している。
振動吸収性を高める細身のシートステイ。28Cタイヤが入るクリアランスを確保している
素材も、剛性の異なる3種類の東レ製カーボンを積層。剛性アップを果たすとともに、重量もフレーム単体で790g(53cmサイズ)と前モデル比80gの軽量化を果たしている。オルカOMRは、来季からプロレースでの試験導入が再開されるディスクブレーキ仕様も用意。その他、ミドルグレードのカーボンを使用したオルカOMP、ジオメトリーをややコンフォート寄りにしてカーボンのグレードを下げたオルカOMEもラインナップする。
国内での販売は、2017年はじめ〜春ごろの予定。カラーオーダーシステムMyO(マイオー)にも対応する。
「オルカOMR」のディスクブレーキ仕様。5年前からディスクロードを生産するオルベアは、ディスク化にともなう剛性の最適化にも豊富なノウハウを持っている
ディスクブレーキのキャリパーは、ロード用に開発したフラットマウントで装着する
「アヴァンOMP」パリ〜ルーベも走るエンデュランスロード
「アヴァンOMP」は、ロングライドを得意とするエンデュランスロード。
前傾の浅いコンフォート寄りのポジションがとることができるジオメトリーで、振動吸収性も高めた設計となっている。なお、OMPはオルベアのロードモデルの中でも中間グレードのカーボンを使用するモデルだ。
しかし、ただの快適性だけが持ち味のロードバイクではない。エラストマーなどの衝撃吸収材を使わず、カーボンの積層だけで高い振動吸収性を達成したおかげで、2015年モデル比で200gも軽量化し、フレーム単体990gと歴代のアヴァンでは最軽量モデルとなった。また、コンフォートモデルはヘッドチューブが長めになる傾向があるが、アリザガ氏は「見た目の印象も大切」とヘッドチューブを10㎜短縮し、代わりにフロントフォークを10mm延長。ロードバイクらしい精悍なルックスを手に入れた。
さらにフォークの延長により、バンプの乗り越え、衝撃吸収性も向上している。ロングライド、グランフォンド用途のみならず、オルベアはこのアヴァンOMPがレースでも十分な性能を発揮すると主張。実際、来年4月の石畳クラシックレース「パリ〜ルーベ」ではコフィディスの選手たちが駆る予定だ。2017年モデルのアヴァンはOMPのみのラインナップで、ブレーキもディスクブレーキ仕様のみ。2017年はじめから国内販売される予定だ。
オルベアの2017年ロードモデルは、オルカOMR&OMP、オルカOME、アヴァンOMPの3種のジオメトリーを展開。さらに各モデル7サイズあるので、ユーザーは計21種類のモデルの中から自分の身長や体格、乗り方にあったバイクを選べるラインナップとなっている。またサイズが違っても同じハンドリングが得られるように、フレームの設計、フォークのオフセット量なども調整されている。
ORBEA オルベア
創業は1840年。スペイン・バスク地方でオルベア兄弟が武器や鋼管の製造からスタート。1920年に自転車を作り始め、幼児用バイクから高級スポーツ車まで手掛けるスペイン最大規模の総合自転車メーカー。バスク地方は、数多くのプロ選手を輩出し、バスク一周、クラシカ・サンセバスチャンなどのプロレースも開催。ヨーロッパの中でも長いロードサイクリング文化をもつ。
(写真と文/光石達哉)
著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。