2016年05月27日
【Mt.富士ヒルクライム】どんなウエアがいいの? ハイテクウエアのASSOSレイヤー術を大公開
サイクリングへの愛は、ハイテクノロジーのウエアを生み出した。スイスメーカーのアソスはいつの時代も最先端を突き進む製法や素材を用いており、サイクリングウエアのトップメーカーといえるだろう。お世辞にもリーズナブルとは言い難い。しかしその生地の肌触り、ライディングポジションをとったときにはじめてわかるその優れた裁断とパネル。身体にタイトフィットしながらもペダリングを邪魔せず、スムースなライディングを可能にする着心地は、一度まとってしまったらもう離れられないだろう。
富士ヒルクライムというと、スタート地点の富士北麓公園は標高約1000m、ゴール地点の富士山五合目は2400m。100m標高が上がるごとに気温は0.6度下がり、さらに風速1mごとに1度体感温度が下がるとされる。最適なパフォーマンスを発揮するには、天候や気温も大きく左右する。その上、標高が高い富士山ともなれば、もっと影響は大きいだろう。そこでアソスの豊富なラインナップから気温や気候ごとに最適なウエアレイヤー術を紹介しよう。
15〜20℃ / SUNNY(上り / 晴天&気温15〜20℃)
6月の晴天なら、このコーディネイトでまず問題ないだろう。通気性がよくつねにウエア内部をドライに保つことができ、不快感を与えない。グローブも指切りでいいだろう。ただし下山用のウエア、長指のグローブは必ず持っていくこと(下山用荷物として預けよう)。
A.SS.カンピオニッシモジャージ 価格(税抜):28,600円
B.T.カンピオニッシモ_s7 価格(税抜):48,600円
C.サマーグローブ_s7 価格(税抜):7,200円
サイドは伸縮性のあるメッシュ加工が施されている。最上級のサマーレーシングジャージのSS.カンピオニッシモジャージと、同じく最上級のレーシングフィットS7ショーツのパーフェクトなアッセンブル。SS.カンピオニッシモジャージの斬新なカッティング、そしてフロントの胸部はスキンフォイル(インナーウエア)と同様の素材の2レイヤー構造で放熱性を高めつつも軽量に仕上がっているのだ。また背面部はメッシュ素材を採用し、快適なライドを約束するだろう。
まったく新しいカッティング。そしてメッシュ構造のバックサイドがサマーシーズンでも快適なライドを提供する。
胸部は2レイヤー構造で、肌に触れる部分はインナーウエアと同様の素材。最小限の素材構成なので快適かつ非常に軽量に仕上がる。
裾には滑り止めが配置されるが、部分的なので必要以上に肌がつっぱることがない。
Yフレームキャリア(ビブ)も腹部や肩部を圧迫することなく身体へ沿うように装着できる。
これまでのパッドとはまったく違う新感覚、といったパッド。適材適所のパッド構成で前部の通気性も確保されるなど、妥協のない設計だ。
IMPRESSION
まさにこの組み合わせは暑さを感じるような天候では、快適な状態でライドを続けることができるだろう。肌に密着するウエアながらも屈曲部はシームレスなのでごわつきもなく非常に着心地がよい。背面部のメッシュは涼しさが感じられ、高温時のライドや上りは高い放熱性が快適性をさらにアップさせてくれるはず。インナーウエアを不要とした設計で、フロント部分のメッシュ素材の2レイヤー仕様は、既成概念を崩す構造だ。ショーツも同様に弾力性に富んだ素材ながらもペダリグを阻害しない形状だ。ショーツ自体はやや着圧感があるものの、ほどよい圧力に感じられた。パッドはこれ以上の性能は試したことがないような質感だ。硬くなく、柔らかすぎず絶妙な肌触り。そのパッドは臀部をしっくりと包み込んでくれる。サドルの印象を変えてしまうほどのパッドの快適性は、まさに最上級と呼べるものだ。
[TIPS】ファスナーを下ろして体温調整!?
晴天+上りともなると、気温が20度を下回っても暑く感じることもある。熱気を感じながら走るよりも、胸のファスナーを少し下ろすと外気が身体を冷やしてくれる。開口部を調整すれば快適性を保てる。だが、これは一般的なウエアの話。SS.カンピオニッシモジャージはその2レイヤー構造の恩恵により、ファスナーを下ろさずとも優れた快適性を保つ。このジャージに関して言えば、ファスナーを下ろすのはNGなのだ!
10〜15℃ / CLOUDY (上り/曇り&気温10〜15℃)
曇りがちでやや肌寒いならアームウォーマー、レッグウォーマーを着用するとよい。標高が高くなるにつれ、どんどん寒くなっていくので、指先も冷えやすい。長指のグロープがあれば安心だ。また風も出てきたものなら体感温度はより下がっていくだろう。
D.アームウォーマー_evo7 価格(税抜):6,000円
E.レイングローブ_evo7 価格(税抜):8,800円
F.レッグウォーマー_evo7 価格(税抜):12,300円
スタート地点で肌寒さを感じたら、上りは間違いなく寒いだろう。標高が上がるにつれて気温はどんどん低くなる。アームウォーマーは着脱も容易だ。またライディングポジションに合わせてカッティングが施され、動きを邪魔しないのがいい。レッグウォーマーは最小限の重量ながらも最高の保温性を実現している。形状も特徴的で臀部までカバーしてくれるので、長い下りでの冷え対策にはもってこいである。雨が心配ならグローブも長指に。ウォータープルーフのグローブは超軽量ながらも防水性に優れている。手のひらの面は滑り止め加工が施されていて、ハンドルをしっかりと握れる。
裏地はソフトで伸縮性に富んでいる。
一般的なレッグウォーマーとは異なり、臀部までカバーするカッテイングである。長い下り坂でも高い保温性を約束してくれるだろう。
ネオプレーン素材を用いた雨用グローブ、指の股はリフレクト素材を用いている。
ライディングポジションに最適な形状にカッティングされているアームウォーマーは、左右専用設計となる。
レッグウォーマーのふくらはぎ部分にはリフレクト素材が配される。安全面にも配慮した素晴らしい設計だ。
【TIPS】アームカバーは手首にまとめる
腕は思ったよりも放熱性が高い。アームカバーが暑く感じたら、手首でまとめておく。冷えてきたらまたアームカバーを上げればいいのだ。
10℃〜/DOWN HILL 下山/気温10℃〜
晴ればれとした天気なら五合目からのダウンヒルは爽快だ。比較的軽装でも下ることができるだろう。気温が高ければsV.ブリッツフェーダーをまとうことで、保温性は十分。薄手のベストは風をはらむことなくダウンヒルを楽しめる。ただし指先の冷えには注意したいところ。正確なバイクコントロールを行なうために長指グローブをおすすめしたい。
G._エクスプロイトキャップ_evo7 価格税抜):3,220円
H.sV.ブリッツフェーダー 価格(税抜):17,800円
風や小雨、肌寒さ等から身を守りたい時に手軽なプロテクションアイテムとなるsV.ブリッツフェーダー。使い道が多岐にわたる軽量プロテクションシェルである。サマーキャップはヘルメット内部に被るのに適した設計。
サマー用のキャップはコンパクトなつば、サイドは伸縮性のあるメッシュ加工が施されている。
ベストの内ポケットにはコンパクトな収納スペースが。
背面は余計な熱を放出するためにメッシュ加工が施されている。
風や雨を防ぐ、素材を用いたオールラウンドなウインド/レインベストだ。
IMPRESSION
心配になるくらい薄手のベスト”sV.ブリッツフェーダー”は、触り心地もソフトで華奢だが、装着してみると風を通さず保温性に優れていることがわかる。降りたためばコンパクトになり背中のポケットにすっぽりと収まってしまう。風だけではなく雨にも強い素材で、オールシーズンで活躍しそうなアイテムだ。余談ではあるが、夏の雨は濡れたくはないが、蒸れたくもない。そんなとき背面から熱を逃がす設計のこのベストなら、ウエア内部の快適性を保ちつつ、雨も防げるだろう。
10℃〜 / RAINY 雨天/気温10℃〜
考えたくはない雨のヒルクライム。富士スバルラインは雨が降ると過酷なコースへ変貌してしまう。そんな状況でもモチベーションを奪われることなくトライしたいサイクリストをアソスは応援している。
I.rS.シュトルムプリンツ 価格(税抜):54,600円
悪天候でのテストを数千時間も行ない、開発したジャケットがこのrS.シュトルムプリンツだ。レースでの使用も想定されている高性能レインジャケットで、優れた保温性と防水性を実現している。ブラックとこのレッドの2色で、視認性にも優れ、サイクリストの安全面も配慮している。
背面は通気性を考慮したベンチレーション機能に優れている。
胸部は保温シェル素材を用いており、風も通さず、雨もシャットアウト。
視認性の高いレッドカラー。リフレクト機能があるファスナーはもちろん防水処理されている。
防水性に優れながらもコンパクトに折り畳めるコンパクト設計。
IMPRESSION
着心地は軽量ながらもヘビーデューティさが伝わってくる。重さは感じないが重厚、そんなイメージだ。生地は薄くやや張りのある素材だが、コンパクトに折り畳めるなど実用性が高いのが印象的だった。その保温性から気温が高いとやや暑いが、悪天候時は素晴らしい防風、防水性を発揮してくれるだろう。
5〜10℃ / DOWN HILL,RAINY 下り/雨天&気温5〜10℃
雨天時は気温が下がってしまう。あまりに冷えるとレッグウォーマーでは追いつかない。そこで活用したいのがレインニッカーだ。究極ともいえるスペックのレインニッカーは、あえてパッド無しで設計されている。低温時の防風にも最適で、ロングライドで威力を発揮してくれるだろう。また頭部の冷えは集中力を奪っていく。レインキャップで雨から頭部をしっかりと保護したい。
J.レインキャップ_s7 価格(税抜):5,600円
K.シュトルム ニッツ 価格(税抜):39,600円
悪天候時に頭部を守ってくれるレインキャップ。保温やプロテクションキャップとして活用できる。ニッカーはASSOSが開発した高い防水性と浸湿性、さらに外気温に応じて素材の膜が伸縮し温度調整をするインテリジェントなトリトン防水素材を採用。ライディングポジションに合わせたカッティングで、ペダリングの邪魔をしないのが特徴的だ。オールシーズンで使える優れたニッカーである。
レインキャップには防水性に特化した伸縮する防水トリトン生地を採用。縫い合わせた部分はシールされ、水がしみ込むことがない。
カッティングはペダリングを重視した、サイクリング用に特化した設計となる。
伸縮性の異なる2種類の異なるトリトン素材を最適な場所に組み合わせている。
ビブは用いていないが、ウエストでしっかりとホールドする滑り止め素材を用いている。
ニッカーでは膝下が寒い場合には、レッグウォーマーを組み合わせて使ってもいいだろう。
IMPRESSION
正立している姿勢が窮屈になるほど、ライディングポジションに特化したカッティングのニッカー。まさにバイクにまたがって初めてしっくりとくる超特化モデルだ。無論、ペダリングはスムーズで、違和感なく走ることができる。レックウォーマーやタイツよりはゆとりがあるデザインではあるが、空気の層が保温性を高めてくれる。パッド無しなのでビブショーツの上から履いて使いたい。
(写真:和田やずか)
問:株式会社 ダイアテック http://www.diatechproducts.com/assos/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得