2020年04月13日
【ARAYA】新型チューブラー/チューブレス・フルカーボンホイールの実力はいかに TEST&CHECK
新家工業では自転車の性能を司るリムの開発を、国産としていち早く手がけ、その歴史は1903年まで遡る。もちろん現在も製造は続けられており、2020年モデルの最新ロードバイク用ホイールとして、フルカーボンホイールを2機種リリースした。
チューブラーとチューブレスの2タイプで、いずれもリムブレーキ用となる。カーボンリムとハブは自社製、スポークはサピム社、ベアリングはエンデューロ社製。クイックレリーズ※も極限まで軽量化したタイプ(ペアで70g)を採用し、軽さを追求した仕様となっている。
※市販のクイックレリーズは黒色となる。
公称の参考重量はクイックレリーズを除いてチューブラータイプでフロントは550g、リアは670g(±5%)と軽量に、
チューブレスタイプではフロント630g、770g(±5%)と、こちらもチューブレスホイールとしては実に軽量な仕上がり。
いわずもがな軽いホイールは市場に存在しているが、前後セットで17万円(税抜、チューブラー)という戦略的価格だ。
カーボンリムは総じて一見では語れない。使ってみて初めてその特徴を体感できる。このARAYAも例に漏れない。
リムハイトは横風の影響を受けにくい38mmだ。横風にハンドルをとられるとペダリングが乱れてパワーロス=スピードが落ちてしまう。すなわちコントロール性が高いほうが疲れにくい。低いハイトながらホイールのたわみ・変形量が少ないのだろう、走りは軽やかだ。スポーク数が少ないものの、剛性アップに比重を置いている。振動吸収性はテンション構造のなせる技で、乗り心地が悪いという印象もない(タイヤにの影響も大きいが)。ちなみにテスト用タイヤは2モデルともヴィットリア・コルサスピードだ。こういったハイスペックなタイヤがぴったりのホイールだ。
リムブレーキ面はバサルトファイバーを含有させることで、様々な条件下でも安定した制動力を提供する。ブレーキシューはカーボンリム用であることが前提だ。カーボンリムの制動力としては妥協点をクリアしている。
あえて23mm幅のリムを用いているという設計思想は軽量化という強い想いがある。25mm、28mm幅リムに比べ30~50gの軽量化を実現しているという。50g軽くなると体感できる差だ。
したがってタイヤのチョイスは25mm以下が望ましい。その差はわずか2〜3mmだが太いタイヤに慣れていると、やや繊細に感じる部分もある(タイヤの性格にもよるところはある)。その点、ロードインフォメーションはダイレクトに感じていい点もある。路面状況を事細かく感じることができ、滑走感がいかにもレーシングで心地いい。
オリジナルハブの設計も手が込んでいる。51Tラチェットノッチを採用しきめ細かいノッチ音を奏で、踏み込んだときの反応も鋭い。ロード用としては細かいラチェットノッチは抵抗に感じるのではないか、と思うが杞憂であった。
フロント、リアともにストレートプルスポークを採用する。最小限のスポーク数で剛性を高めるために、最大限にハブの外側にフランジを配置するワイドな設計で、横剛性を強化している点にも好感がもてる。軽く繊細なフォルムながらも乗り味は想像以上にがっちり。しっかりとパワーを伝えるホイールだ。
チューブラー・チューブレス問わず外観もバイク全体に調和するようなシックなデザインだ。カーボン地にブラックロゴが貼られているので一見して黒いホイールだが、日が差してカーボン繊維に反射するとロゴが浮きあがってきて美しい。
日本のロード市場としては、やはりヒルクライム人気がダントツだ。したがって軽さにおいて一日の長があるリムブレーキのロードバイクには根強い人気がある。だがグローバル市場ではリムブレーキ対応のハイスペックなホイールは減少傾向にある。マスプロメーカーのラインナップからぽっかり空いた隙間を埋める高性能ホイールとして、小回りのきくARAYAの、このカーボンホイールの存在意義はあるだろう。チューブレスタイヤも目覚ましい勢いで開発は進んでおり、リムブレーキ用軽量チューブレスホイールとしても活路はある。
さて、この2タイプ、筆者の個人的好みとしてはレース用としてならチューブラーであるが、ホイールの安定感としてはチューブレスに軍配があがる。チューブラーの軽さは、もっとも秀でた武器であるが軽さゆえの腰高さを感じてしまう。その点、チューブレスの扱いやすさは万人受けするだろうし、なにしろ軽く仕上がる。超軽量で玄人向きのチューブラーか、先端スペックのチューブレスか。
どちらも捨てがたく、なかなか悩ましい。
アラヤ チューブラー/前後ペア 価格:170,000円(税抜)
スペックはこちら
http://araya-rinkai.jp/wheel-tubelar.html
アラヤ チューブレス/前後ペア 価格:180,000円(税抜)
スペックはこちら
http://araya-rinkai.jp/wheel-tubeless.html
関連URL:新家工業 http://araya-rinkai.jp/index.html
写真:小野口健太
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得