2016年04月26日
3モデル インプレッション VOL.14 TIME 総論
3モデル インプレッション VOL.14 TIME 総論
山本:フランスにはユニークなブランドが多いので、タイムと言えども普通に見えてしまいません?
菊地:変人3兄弟だからね。
山本:タイム、ルック、ラピエール?
菊地:でしょう。Bトゥインは歴史が足らないかな。しかし、タイムは久々にいいモデルイヤーだと思うな。
小高:でもちょっと寂しいですね。しゅっとしたデザインが個人的には好みだったので。かつてのZXRSみたいな。
山本:前口上でも触れていますけど、ラインナップ・フルモデルチェンジという荒技を繰り出したにも関わらず、この完成度の高さというか、普通っぽさには驚きました。<普通>の意味もいろいろ含んでいますけど。
菊地:フロントフォークに異物を入れているのが普通に思えるってのが、今の時代を感じさせるね。ドッキリ・フレームが結構あるからね。アクティブ フォークの性能には舌を巻くけど、フレームの中に構造体を入れるのは好きじゃないな。そんなこと言っていると、年寄りっぽく聞こえるかもしれないけど、フレーム内部に仕掛けがあるってのは、クリエティブではないね。
山本:そこですよね。アクティブフォークは確かに良いものだったけど、この構造に対して、生理的に受け付けない人はいるでしょうし。実際に3モデルを走らせたときに感じたのは、すべてがフォークの印象だけが強く残ったということ。10年近くも開発に費やしたというタイムの大作フォーク。その構造をあえて可視化していないというところにある一定の男気も感じますけど。
小高:アクティブ フォークはちょっとボリュームがありすぎて、視界にも入ってくるのでちょっと気になりました。今回のバイクはすべてアクティブ フォークだったので、ノーマルに乗って、違いを感じたいですね。
菊地:今回はフロントフォークにフレームがついているって感じだね。小高くんも言っている通り、もうちょっと細かったら……とも思うけど、こういうのは慣れだからね。今、スチールのフォークを見ると細くて怖いもんね。大切なのは、他社が真似をできないことをやってきたということでしょう。単に先行するだけでなく、相手が追いかけられない技術を具現化した。そこに価値がある。そういう特許対策までやっている自転車って、まぁ、数えるほどしかない。
山本:見て安心、乗ってみてもっと安心でしたね。このフォークは後生に語り継がれるものといってもいいかも。
小高:フォークの印象は本当に強かった。でも乗り味が硬くなるといわれるISPを全車が継続していて、それでいて軒並み上質な乗り味なのだから、フレームのポテンシャルは否定できないですね。
山本:エンデュランスバイクのセオリーを否定するわけではないけど、積極的にしならせるような構造とは違ったアプローチで、ロードバイクらしさを前面に残しつつというスタイルがむしろ好印象。
菊地:レーシングエンデュランス……とでも命名したら、いいのかな(笑)。リアルレーシングって感じだけどねもっと進化すると、ゲームみたいになっちゃいそう。振動の周波数帯については、じっくりと話を聞いてみたいねぇ。
山本:言い得て妙ですね! 人間が不快に感じる周波数帯は筑波のとある技研でかなり研究されているみたいですよ。タイムのデータと比べてみると面白いかもしれませんね。ロードバイクの楽しみといえば操る楽しさも挙げられますが、そういうスキルの領域までも機材で補える時代になりつつありますよね。振動は四肢も使っていなすものだったのが、そういうテクニックを必要としなくなる。乗りやすくなる反面、ライダーが無頓着になっちゃうような。でもそれが当たり前になったらノスタルジックなロードバイクがロデオ的に流行るとか(笑)
菊地:速さと面白さ、速さと安全は似て非なるモノ。趣味とプロのレースではわけて考えるべきだろうし、10年後は違う価値観が出てきているかもね。ロデオじゃ怖いけど、峠を攻めているギリギリ感ってのは、楽しみの1つだしね。タイムって小さなメーカーだけど、こういう提案をしてくるところに価値があるんだと思う。技術的にはRTMも面白いけど、このブランドの価値からしたら、そんなことは些末なことだと思う。
山本:創造力あってこそのRTM製法でしょうね。正直、この3モデルはタイムの傑作だと個人的には思っています。昇華しきったかな、と思っていたけど、まだまだ成長し続けているブランドなんだなあって。これからタイムの快進撃が始まるのかな、と。
菊地:キャラが似通っていて三つ子みたいでしょ。そういう商売が下手なところが魅力。これ以上、モデル数を増やさない方がいいね、タイムは。
(写真/和田やずか)
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著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。