2016年02月20日
3モデル インプレッション VOL.10/RIDLEY FENIX SL(エンデュランスモデル)
RIDLEY / FENIX SL IMPRESSION
ヘリウムSLがF1だとすれば、これは24時間耐久レーシングカー。そんな位置づけのフェニックスSLはエンデュランス能力に特化したカーボンフレームである。フレームは独自配合の30.24tonハイモジュラスカーボンによって、優れた重量比強度を誇り、リアトライアングルはヘリウム”スタイル”を採用し、リアセンターをわずかに伸ばした新たなジオメトリーは快適性と走行性能を調和している。またカーボンフォークは新テクノロジーであるエアロインテグレーションを採用し、空力特性の向上を図っている。そしてフレーム単体重量はフェニックスよりも250gも軽量化を実現。エンデュランスバイクだからといって、ヘリウムやノアの影に隠れるようなモデルではない。場面によってはプロのレースでも用いられるプロユースオールラウンドモデルなのだ。
フェニックスSL■フレーム:30ton.24ton. HM Carbon■フォーク:オリジナルカーボンフォーク■試乗車のコンポーネント:シマノ・アルテグラ■ホイール:FFWD・F4R■完成車実測重量:7.1 kg(ペダルなし)■カラー:JP15-6As(PBP)、JP15-7As(Team JP)/完成車、FSL-01Bm、FSL-01Cs/フレームセット■サイズ:XS, XS, S, M■価格:305,000円(シマノ・105完成車、税抜)、235,000円(フレームセット、税抜)
軽量モデルのヘリウム”スタイル”のリアトライアングル。ツインブリッジのシートステイは横方向に扁平させている。
横に薄く扁平したシートステイは高い振動吸収性と剛性のベストバランスを実現。
美しい曲線を描くトップチューブは優れた振動吸収性を発揮する。
エアロインテグレーションにより統合されたダウンチューブ、フォーク、ヘッドチューブは優れたエアロダイナミクスを実現。
フォークはエアロダイナミクス性能に優れるだけでなく、28Cサイズのタイヤを装着できるクリアランスを確保する。
BBの規格はプレスフィットBB86。Qファクターを変えずにBBエリアをよりワイドにすることで高剛性に。
IMPRESSION
エクササイズやロングライドで輝く◆菊地武洋
ツールなどのプロのレースをきっかけにスポーツバイクに興味を持った人にとって、リドレーは身近なブランドであり、初めて買うヨーロピアンバイクの有力候補だろう。それはプロツアーチームに機材を供給し続けていることもさることながら、手頃な価格のフェニックスSLの存在が大きいのは否めない。フレーム価格で23万5000円と、入門用モデルとしては安くはない。それでも、イメージを含めて所有欲を満たしてくれることまで含めると、やはり手頃な1台といえるだろう。カタログに「ヘリウムSLがF1だとすれば、これ(フェニックスSL)は24時間耐久レーシングカーです」とあるが、確かに瞬間的な速度のキレを楽しむというよりも、エクササイズやロングライドで輝くタイプだ。大きなギヤ比でガシガシ踏んでいくよりも、軽いギヤ比でケイデンスをあげて走るほうがフレームの良さを引き出せるだろう。断面積の大きなフロントフォークは高速コーナーからヘアピンまで剛性不足を感じさせることなく、初心者からホビーレーサーまで安心して曲がれる。ブレーキ&シフトケーブルのストッパーの位置も適切で、ブレーキや変速機のもつパフォーマンスをしっかりと引き出せる。どんなに高価なパーツを取り付けても、フレーム小物の位置が不適切だと機械的な摩擦損失によってコントロールレバーの操作感が重く、タッチも悪くなる。逆に言えば、雑な設計のフレームに高価なパーツを装着するよりも、フェニックスのようなフレームでミッドレンジのコンポで組んだほうが走行感もいい。フェニックスSLはよくできたフレームだが、体重の重い人やレーシーな加速感を求めるならヘリウムやノアがベターだろう。
男前エンデュランスロード◆小高雄人
走り出した瞬間に、芯の強さを感じる硬派な乗り味。ぺダリングパワーをダイレクトに推進力に変えるようなライディングイメージは、非常に好みであった。レーシングモデル顔負けの俊敏性を持つが、振動吸収性もしっかり確保されている。とくに大衝撃に対して、細身の扁平シートステイが効いているように感じた。見た目通りバイクは軽量で上りでも小気味よく、ダンシングを多用し駆け上がっていける。加えて、ダウンチューブからフォークへかけての造形からは空力性へのアプローチも感じられ、サイクリストのココロをくすぐる。オールラウンドな性能で価格も手が届きやすく、とても魅力的なモデルだ。
大きなポテンシャルを秘めるバイク◆山本健一
エンデュランスバイクとして提示されているコンセプトは操作性と安定性の融合。そのスタイルは最新鋭を誇るライバルメーカーのエンデュランスバイクと比べるとややおとなしい印象を受ける。だが百閒は一見にしかずで、踏み出しからの軽さが気持ちがよくカーボン素材の良さを十分に引き出させているのがわかる。これは乗ってどんどん好きになっていくタイプのバイクだ。反応性もさることながら安定指向のステアリングがコーナーでのゆとりを生み出す。試乗車にアッセンブルしているようなコンペティションなカーボンホイールもよく似合い、とてもスタイリッシュだ。グラフィックもひと目でリドレーとわかるもののシンプルなデザイン。爽やかなフレームカラーからは苦痛に満ちたレースの面影は見られないが、そういった走りにも許容するのがフェニックスSLのポテンシャルだ。上り性能の高さもさることながら、特筆は下りだ。少々荒れていてアンジュレーションを感じる場面でも、普段のバイクよりも余裕をもってこなせる。最初のバイクとしてやや奮発しフェニックスSLを手に入れることは間違いではない。ビギナーにもやさしい安定性は、走る喜びを感じさせてくれるだろう。ライダーが経験を積み走力が高まったとき、その高度な要求に応えられるポテンシャルも秘める。永きに渡りパートナーとして楽しめる1台だ。
(写真:和田やずか)
リドレーのお問い合わせ先:ジェイピースポーツグループ e-mail: info@jpsg.co.jp
http://www.jpsg.co.jp/ridley/index.html
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。