2016年07月21日
3モデル インプレッション Vol.18/ANCHOR RS9 (スタンダードモデル)
ANCHOR / RS9
アンカーのレーシグモデルの最高峰、そしてブリヂストンアンカーサイクリングチームのメインバイクのRS9。車体が前に進む性能を最大化するアンカー独自の最新解析技術『PROFORMAT』を用いて開発。さらにこれまでよりはるかに高い弾性率を誇るカーボン素材を使用することで「進む性能を最大限に高め、大幅な軽量化」を実現。選手が求めた感覚的な性能を的確に数値化しフレームの性能へ落とし込んだ。科学的解析によって推進力を最大限高めることに成功した、メイドインジャパン最高峰のカーボンフレームである。
RS9■フレーム:PROFORMAT 3Pieces UHM-Carbonインテグラルヘッド Pressfit BB■フォーク:HM-Carbon カーボンコラム+アルミインサートクラウンレース一体成型ストレート形状 スーパーオーバーサイズ■試乗車のコンポーネント:シマノ・デュラエース■ホイール:シマノ・WH-9000 C35■完成車実測重量:6.8kg(ペダルなし)■カラー:レーススタイル1色、エッジスタイル33色(一部アップチャージあり)■サイズ:430、 460、490、520、550mm■価格(税抜):750,000円(シマノ・デュラエース完成車、完成車基準価格、付属品:LEDランプ, ベル, リフレクター, マニュアルバック)、350,000円(フレームセット、付属品:LEDランプ, ベル, リフレクター, マニュアルバック)
BB付近の独特な形状は『走行中の無駄な変形を抑制し、進む性能を最大化する』というアンカーの設計思想を具現化する構造の一部だ。
シンプルなヘッド回りの構造。トップチューブは角断面であることがわかる。ダウンチューブにシフトケーブルを内蔵できる。
フォークはヘッドパーツの下玉押しをフォーク自体に成型することで軽量化にも貢献。高い制作技術により回転精度も高く保つ。
あらたに採用されたウルトラハイモジュラスカーボンはこれまでの旗艦モデルに使用されていたカーボンよりも1.5倍以上の弾性率をもっている。
高い剛性としなやかなリアのしなりを実現するループエンド形状。MTBでその性能が実証された形状だ
IMPRESSION
優れた開発技術によって生み出された■菊地武洋
RS9はPROFORMAT(推進力最大化解析技術)という、妙に仰々しい名前の技術が用いられている。「今まではどうだったんだよ!」と突っ込みたくなるが、静荷重試験から動的試験に移行して進化したということだ。結果、より高弾性のカーボン繊維を用いてと……リリースに書かれている対策内容に目新しさはない。大丈夫か?と心配になるが、それでもブリヂストン中央研究所の名が出てくると、にわかに期待が高まるのが“ブリヂストン”の威光である。ジオメトリーは旧型となるRis9と一緒だが、バックステーの構造と素材を見直して剛性を向上。駆動輪の挙動の乱れを抑えることで、踏み出しが軽くなった。旧型は可もなく不可もないという印象だったが、厳しめに評価してもRS9は価格相応の剛性が出ていると言える。前後の剛性バランスが整ったことでハンドリングにもシャープさが出た。一方、高弾性カーボンによって振動の収束が早くなったので全般に快適性は向上しているが、高剛性化によってハンドルに伝えてくる微弱振動も多くなった。インナーチューブの材質や空気圧、タイヤの選択で調整可能な範囲ではあるが、レース参戦を目的にしていない初中級者は違う選択をするべきだろう。シートポストのクランプ処理は古臭いとも、質実剛健とも言える。後者だと思う人向けのバイクである。
国立受験型の優等生★芦田昌太郎
困った。どう書くべきか非常に困ってしまう。このバイクは申し分ない完成度を誇る1台で、文系理系、全部出来てしまうのではないかという優等生なのだ。軽くて進み、下りも安心感があり、ハンドリングもキレがある。それにフォークの剛性感も良い。さらにこれらの利点がバラバラではなく、しっかりとまとめ上げられている。はっきり言って、トータルバランスは満点に近いだろう。ラフに乗って遊ぶ時も、レースで攻める時も、如何なる時も問題点が見当たらない。ブリヂストンサイクルの自転車に対する想い、安全性への配慮、レースへの情熱などなど、日本ブランドの底力を見せつけられたような気がした。「謹厳実直」な想いがつまっているバイク、これからも楽しみである。
レーシングバイクのベンチマークになりうる1台◎山本健一
一言で表現するならロードバイクの原点というべきか、質素ながらも軽快な運動性能を実現しているバイク。フォルムからは最新鋭!という雰囲気はないが、古さも感じさせない。今回の試乗車がカーボンクリア一色で妙な凄みをかもし出しているので、層感じたのかもしれないが、グラフィックが入るとまたイメージが変わってくるだろう。個人的な趣味ではロゴもブラックにして、よりシークレット感を出して乗りまくりたい。ライディングフィールはまさしくオールラウンドなバイク。踏み出しが非常に軽く、上りでは重力を感じずに加速していく…..というイメージだ。コンセプト通りで高剛性ながらもしなりを活かすというフレームの性格はうまく表現されていて、高剛性フレームというイメージは持たせない。むしろややしなやかな感じで、秀作な和竿のような雰囲気すら感じさせる。ケーブルのインターナルシステムなど行なっているもののシンプルな仕様でメカニックへの負荷も小さそう。欧米メーカーのカーボンバイクはゴテゴテしたバイクが多く、それらは見て楽しませてくれる。だが乗ってみても所有欲を満たしてくれるが、はたしてスピードに活かされているか。またメンテナンス時に自分でできる範囲を狭めていないか? そんな疑問を持っていたり、堅実さに魅力を感じる人にはこのRS9なら不要なストレスもなくライディングに集中できるだろう。シンプルながらもレーシングスペックといえる。よってコンペティションな場面での勝利を目指すサイクリストに最適だろう。よく乗る人ほどこのバイクの良さが伝わりそうだ。ロードレースからヒルクライム、週末のアドヴェンチャーライドといった幅広いレンジに対応できるバイクといえる。
(写真/和田やずか)
問:ブリヂストンサイクル http://www.bscycle.co.jp/
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。