2016年07月28日
3モデル インプレッション Vol.18/ANCHOR RL8(エンデュランスモデル)
ANCHOR / RL8
レースマシンの研究で培われた設計思想に、滑らかな快適性を加えたロングライドモデル・RL8。ボリュームを抑えたフレーム形状が振動吸収性を高め、横剛性にしなやかさを加えたことで長距離を走るライダーへの脚の負担を低減。その一方で、テーパードヘッドをはじめ要所の断面積を広げて剛性を確保、レースモデルに並ぶ加速性も獲得した。さらに980g(480mm)のフレーム重量により軽さも確保、ヒルクライムにも最適な走行性能となっている。RL8も予算や用途に応じてコンポーネントのグレードを変えたモデルをラインナップしている。今回の試乗車でもある、シマノ・アルテグラをアッセンブルしたRL8エリートがボリュームゾーンといえそうだ。
RL8■フレーム:3Pieces Carbonインテグラルヘッド■フォーク:HM-Carbon Monocoqueストレート形状スーパーオーバーサイズ■試乗車のコンポーネント:シマノ・アルテグラ■ホイール:シマノ・RS011■完成車実測重量:6.9kg(ペダルなし)■カラー:レーシングカラー3色、シンプルスタイル33色×3タイプのコーティング■サイズ:390、420、450、480、510、540mm■価格(税抜):605,000円(シマノ・デュラエース完成車、付属品:LEDランプ、ベル、リフレクター、マニュアルバック)、375,000円(シマノ・アルテグラ完成車、付属品:LEDランプ、ベル、リフレクター、マニュアルバック)210,000円(フレームセット、付属品:LEDランプ、ベル、リフレクター、マニュアルバック)※Di2仕様はアップチャージでセレクト可能。
内蔵式シフトケーブルはケーブルの摩擦抵抗を軽減するために上部に設置している。
ヘッド付近は五角形のダウンチューブはBBにむかうにつれ角断面へ変化する。
バックステイには横扁平したモノステイを採用。この形状が振動を吸収し、快適性を高める。
角断面チューブを用いるチェーンステイ。BB側は剛性とペダリング効率を最適化しているl。
上下異径ヘッドチューブを採用し、正確なハンドリングをもたらす。フォークブレードは縦横を強調した扁平形状のストレートフォークだ。
シンプルなシート集合部。オーソドックスなパーツを使用した。
IMPRESSION
パーツとフレームが調和している★菊地武洋
昨年から始まった3台インプレを通して漠然と感じるのは、エンデュランス系バイクの地位がエアロやレース用よりも低そうなのだ。どことなく手を抜いているというか、「こんなもんです」的な脱力感がある。レース用=高剛性、エンデュランス=しなやかさ(低剛性)という図式は本当なのだろうか? 最初に言っておくが、RL8は今回の3台の中ならベストチョイスだ。レース用のRS9はRis9比で高剛性化したのに対し、RL8は剛性を20%ほど落としているという。反応性はRSに分があるものの、心地よい伸びがあるのはRLだ。選手は体感よりも実際の数字(タイム)だろうが、我々のようなホビーサイクリストにとって大切なのは心地良さである。反応性に劣るのはねじれ剛性が低いからで、振動を受けたときの収束も遅い。したがって、フレームだけで考えると乗り心地も良くない。この矛盾が生じる理由は、自転車の性能がフレームにだけ依存していないからだ。RL8の優れた走行性能が偶然の産物なのか、アッセンブリーの妙を利用したものか分からないが、後者ならば担当者は称賛されるべきである。中でもタイヤの開発担当者は、少なくともRL8におけるMVPだろう。
信頼のブランドイメージ◆芦田昌太郎
ロングライドバイクと位置付けられているとり、コンフォートさに特化されている。颯爽とサイクリングしている姿が容易に想像できるバイクで、ロードバイクがここまでマイルドな乗り心地になるとは驚きだ。この手のバイクではガツガツ攻めようとは思えないし、またバイクの方でも、そう思わせてくれない。しかし、それは走らないということではなく、感情の問題なのだ。乗り手に対して「ゆとり」を与えてくれて、大人なサイクリストになれたような気がした。ゆとりは安心感・信頼感につながり、それがまた安全性へとつながっていく。挙動も安定していて、速さも犠牲にすることなく、省エネ。快適に目的地まで身体を運んでくれる、ハイブリッドカーのような1台だ。
見た目以上に良質なパフォーマンス●山本健一
誤解を恐れずに言うと見た目以上….という表現が適切だろうか。外見ではオーソドックスなカーボンフレームなのだが、内に秘めているパフォーマンスはなかなかのもの。軽やかなステアリングフィール、不安を感じさせないフレームの剛性感。3台中もっともシンクロして走れたバイク、つまり走っていて心地よく、加速したときの満足感などが高かった。実際のところエンデュランスバイクという印象を与えないバイクだ。過度にショック吸収性に依存せず、ペダリング効率やレスポンスを犠牲にしている感はなく軽やかに前へ進んでくれる。ロードバイクらしい加速性能をキープした上で路面からのノイズを抑えている、といった雰囲気で実に乗りやすく軽快な踏み出しのバイクだと感じた。またジオメトリーに関しては、よく練られているだろう。アップライトなポジションをフレームのフォルムを崩すことなく実現でき(ヘッドにスペーサーコラムを積むことなく)、バイク本来の走りを楽しめる。もちろんスペーサーコラムを積むことが罪なわけではないが、従来のレーシングフレームを用いるよりも少ないスタックでポジションが出せるというメリットがあるということだ。昨今のエンデュランスバイクというと、色々な機能を付加したバイクと思ってしまうが、RL8はシンプルかつ十分なエンデュランス性能をもたらしてくれる。RL8ならカッコいいエンデュランスバイクが組めるはず。シンプルでおとなしめのバイクが欲しい人にもうってつけだろう。
(写真/和田やずか)
問:ブリヂストンサイクル http://www.bscycle.co.jp/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得