2016年03月10日
3モデル インプレッション Vol.11/795 AERO LIGHT(エアロロードモデル)
LOOK / 795 AERO LIGHT IMPRESSION
レーシングカーデザイナーの協力を得て、フランス・マニ・クールサーキット内の風洞実験室で繰り返しテストを行い、10年の歳月を掛けて生み出された究極のエアロロード。695シリーズから継承した、というよりもミドルグレードの675に近いフォルムで、有機的なデザインはカーボンファイバーを使うメリットを最大限に生かしたといえる。空力特性を高めるための造形によって、高速走行時の空気抵抗を695ライトと比べ11.7%も削減しているという。フレームセット重量は2,700g(フレーム+クランク+フロントフォーク+ステム+E-POST2+ヘッドパーツ+前後ブレーキ 未塗装Sサイズ)。
795エアロライト■フレーム:HM、IM、HR ウルトラライト1.5Kカーボン■フォーク:HM、IM、HR ウルトラライト1.5Kカーボン■試乗車のコンポーネント:シマノ・デュラエースDi2■ホイール:マビック・コスミックアルチメイト■完成車実測重量:6.3kg(ペダルなし)■カラー:プロチーム、ブラックリフレクト、フローリフレクト、カーボンレッド■サイズ:XS、S、M、L、XL■付属ステムサイズ:XS=90、S=100、M/L=110、XL=120■価格:799,800円(フレームセット、カラー:プロチーム。付属品:HSC8エアロフォーク、フロント/エアロブレーキシステム、リア/シマノDA 9010ダイレクトマウント、ヘッドフィット3ヘッドパーツ、エアロステム、ZED2クランクセット、BB65カートリッジシールドベアリング、Di2内蔵バッテリー対応E-POST2)、749,800円(フレームセット、他のカラー。付属品はプロチームカラーと同様)
シマノ製ダイレクトマウントブレーキが標準装備される。空力特性は高いが、メンテナンス性という意味ではややハードルが高くなる。
695ライトと比べ、BB、チェーンステー剛性は15%上がったが、よりしなやかになったバックステイによって快適性を確保している。
専用のケーブルアジャスターを用いフレームたステムにケーブルを内蔵しても、扱いやすい。
695ライトから導入したエアロフォーク。ブレーキはVブレーキと同じような機構だ。
セライタリアのモノリンクサドルにも対応したE-POST 2は、空力と剛性、快適性を兼ねている。
Cステムのハンドルマウント部分にはマグネットで固定するカバーが付く。見た目も重要。
ルックのカーボンエアロハンドルバー。このフレームにピッタリの形状だ(価格:49,000円)
IMPRESSION
悪いコンディションの状態で乗ることが許されない◆菊地武洋
もっともルックらしいルック、それが795エアロライトである。ポジティブな面については素の795ライトと変わらないので、今回は795の賛否両論な部分について触れてみよう。まずはスタイリング。これは話題になるだけで価値があるし、他ブランドからフェイクのようなモデルが出てきたので、成功したといえるのだと思う。ただ、795のデザインのオリジナルは下位モデルの675である。トップモデルが後追い……というのは淋しい気がする。765までラインナップで統一したデザインならともかく、そうではない。セッティングにも美的制約があるデザインだけに、ツボにはまればカッコいいが……である。オリジナルのパーツも然りだ。最大のチャームポイントであると同時に、最大の弱点でもある。特にブレーキは制動力が不足しており、僕は購買意欲を削がれてしまった。しかし、シンプルで美しいスタイリングはフロントフォークに内蔵したブレーキがもたらす美点でもある。チェーンリングもステムもずいぶんと進化した。とはいえ、車格を考えればデュラエース並みの変速性能が及第点だろうし、そうなると物足りない。ステムにしてもシートポストにしても互換性がなく、制約がある。これらの難所を越えたところに佇んでいるのが795エアロライトのオーナーだ。メンテナンス性にも弱点を抱えるだけに、買うには相当な愛情を求められる。してみると、もっているだけでエンスー。それは795エアロライトがオーナーに与える最大の賛辞だと思うし、汚く、コンディションの悪い状態で乗るのは恥ずかしいことだ。まぁ、最高級モデルとは買うのも、買ってからも面倒なものだ。
ラグジュアリーなエアロバイク◆小高雄人
795ライトよりも幾分フォーク、およびリア側の剛性が抑えられている印象で、レーシングモデルながらどっしりとした安定感を感じる。高級車に乗っているような、ラグジュアリー感はほかのバイクでは感じ得ない感覚であった。安定感があるとはいえ、それが「もっさり」といったネガな印象に繋がるわけではない。BB部などぺダリングパワーを伝達する部分に関しては高剛性であり、あくまでレーシー。走行性能と快適性が見事に両立されている。
フォーク内蔵のフロントブレーキの効きはコンポーネントメーカーの最上位キャリパーブレーキに比べたら制動性に劣るものの、不満に感じることはない。ロングライドからロードレースまで、どのようなシーンで使用しても申し分ない性能ではあるが、乗り心地が良いぶん、ついつい踏みすぎてしまうと脚が売り切れることもあるので、注意が必要だ。
方向性がわかりやすい1台◆山本健一
バイクを見るとブランドのコンセプトが浮かび上がるが、ルックというブランドほどわかりやすいものはない。すべての機構をオリジナル化=最適化することを目指した第7世代は、第6世代の695を古めかしい過去のモデルへと追いやることに成功している。少々大げさかもしれないが、旧モデルが旧モデルらしく感じるというのは、まさしく革新に成功した証といえる。当方も695ユーザーで、名作であることは認めるが、795エアロライトを前にすると、やはり前世代感を強く感じる(なにしろ当方の695SRは電動コンポに対応していない!)。まさしく一体化こそがルックの目指すところで、この第7世代はさらなるパーツのインテグレーション化を促進させた。この795エアロライトともなると、電動コンポーネントでないと組みにくいというのもまた時代を感じさせる。機能的な魅力は695に快適性とトラクションの向上を付加したイメージだ。さらに空力特性という魅了的な要素も加わった。795ライトよりも快適性という意味では優れているが、加速性能は譲ってしまうだろう。よく使う表現では、795ライトを基準にするならば快適性が103、加速性は97といったイメージだ。リアのブレーキ位置も賛否が分かれるところだが、あくまでもホビーということでであるなら、むしろ空力の恩恵、ルックスの良さを楽しむのによい。先述したオリジナル機構においては、より難解さを増しているのは隠すことはできない難点と言い切りたい。これはトレック・マドン、スペシャライズド・ヴェンジ バイアスを加えた3大難解バイクといってもいい。この3モデルの中では先鞭?をつけたのが795エアロライトだが、どれも甲乙つけ難いといえる。だが、この難しい調整は身近なショップメカニックに委ねればよい。いつも良い状態にしておくのがこの手のバイクでライディングを楽しむコツだ。むしろ、そう考えるとこの尖った性能はむしろハイアマチュア向けともいえる。常套句ではあるが、乗りこなす楽しみ、メカをいじる楽しみ、所有する喜びを満たすラグジュアリーなバイクだ。
(写真:和田やずか)
ルックのお問い合わせ先:ユーロスポーツインテグレーション TEL.03-3329-1065
http://www.eurosports.co.jp/
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。