2017年08月25日
【2018 NEWプロダクツVOL.2-1】CERVELO / R5
非常に厳しい山岳コースで知られるジロディタリア2017にて“密か”にデビューを飾ったサーヴェロのNEW R5を紹介しよう。
秀作とよべるRシリーズは2004年に発表された(R2.5)。これまで2005年ジロディタリア、2007年ツール・ド・フランス制覇、パリ〜ルーベやリエージュ〜バストーニュ〜リエージュなどクラシックレースでも勝利を飾っている。10年前にはすでにエンデュランスモデルのRSをリリースするなど高い拡張性も示している。
つねに先見性に長けたRシリーズは、このフルモデルチェンジでいったいどのような進化を遂げたのだろうか。
CERVELO / R5
極細シートステーによる快適な乗り心地と、軽さで輝かしい戦績を残してきたサーヴェロのRシリーズ。2018モデルとしてR5とR3の2モデルが発売された。4年振りのモデルチェンジは機材供給するプロチームのフィードバックを元に、スクォーバルチューブを大口径化。新型のシートクランプなど細部のブラッシュアップをはじめ、ジオメトリーにも大幅に手が加えられている。
タイヤのクリアランスは最新モデルでは主流になりつつある28㎜まで対応。ツーリングからレースまでこなす仕様である。R5にはリムブレーキの他に、ディスクブレーキモデルもラインナップされている。さらに市場規模からしてブルーオーシャンであるアジア圏からの声に応えるように、ミニマムサイズのジオメトリーにも注力しているのも、サーヴェロの新しい側面が垣間見れる。
新型Rシリーズでも、R5とR3の違いは素材だけに留まらない。R5は快適性向上に効果を発揮する細いシートステーの他にも、シートポストの断面をD型にして垂直方向にしならせ、サドルに伝わる振動を軽減している。また、スクオーバルチューブは形状が見直され高剛性化と軽量化を両立したスクオーバルマックスへと進化。ヘッドチューブはカーボンの積層を改良して従来比21%の剛性アップに成功している。トップチューブを短くし、チェーンステーを410㎜へと伸ばし、かつBBハイトを下げてスタビリティを向上させている。
R5 Dura-Ace Di2 9150完成車 ¥1,400,000(税抜)
R5 Dura-Ace 9100完成車 ¥1,000,000(税抜)
R5 SRAM eTap 完成車 ¥1,370,000(税抜)
R5 フレームセット ¥580,000(Cervélo Carbon SP18、FSA IS2 1-1/8 x 1-1/2″付属。税抜)
D型断面をしたシートポストはR5だけの専用設計。ポストの固定は2重方式で固定力を維持しやすく、微調整も行いやすいように工夫されている
ヘッドチューブはカーボンプリプレグの積層を見直して21%も剛性アップ。正確なハンドリングに貢献している。ヘッドのロワー(下側)のベアリング口径もより大きい1-1/2となる
剛性と軽さを両立するためにボリュームアップしたフレームチューブ。形状は空気抵抗を軽減するカムテール(仮想テール)デザインだ。
ケーブルの内蔵方法もブラッシュアップされて、よりスマートな外観をなった。Di2のジャンクションAはフレームではなく、オリジナルハンドルとステムのAB06に内蔵が可能だ
IMPRESSION
オールラウンド ロードバイクの真打★山本健一
サーヴェロのRシリーズは、まさにオールラウンドモデルの真打といった存在だ。そう言わしめる理由は走りの質はもちろん、造形にも現れていて複雑な機構を用いることなく、明瞭シンプルかつ速い。とはいえスマートなイメージのフォルムからは、ややボリュームアップしていて、より力強くなった印象だ。
軽さが生きているライディングフィール。剛性アップをしているというがそれほど過剰な剛性には感じさせない。軽さも発揮されてか、踏み出しの加速はかなり軽快だ。巡航中からの加速も鋭く力負けしないフレームワークだと感じた。
またジオメトリーにも変化が現れた。ややヘッドチューブが長いイメージがあったが、このNEW R5はより深く低い前傾姿勢をキープするため、フレーム56サイズで8mm短くしている。もうひとつはスタンドオーバーハイトを低くするということ。48サイズでは44サイズ相当にあたる。
ジオメトリーを変更した理由としてはハンドリングと安定性の向上を目指すもので、その効果は顕著に現れている。軽いバイクでの下りではテクニック、あるいは慣れ、度胸といった部分に頼る必要があるが、NEW R5については軽さゆえの腰高感はあるものの、下りやコーナーでの安定感は高い。
オールラウンダーとしての性能はより練磨された。走りのセンスは昇華したが、価格は少し手が届きやすくなった。
基本性能を磨き上げた新境地★菊地武洋
Rcaの登場によって、前作のRシリーズはインパクトにかける不遇をかこってしまったが、軽さと快適性というコンセプトに陰りはない。新作はプロのリクエストでトップチューブを短く、ハンドル位置を下げているが、他にも大きな変更を伴うモデルチェンジを行なっている。試乗車のサイズが小さめだったのを差し引いて考えないといけないが、近くて低いハンドルポジションはレーシーでありながら、それでいて乗りやすさを失っていない。チェーンステー長とBBハイトの変更はメーカーの意図通りに機能していて、ほどよい直進安定性を作り出している。さらにメインフレームとフロントフォークの剛性を高くし、シャープなハンドリングも両立している。
全体の剛性が上がっているので振動そのものの伝わり方はダイレクトだが、高弾性な素材らしい収束の速さで全体にはフラットだ。声高に自らを主張してくるタイプのバイクではないが、長く乗るのはこういう堅実で基本のしっかりしたタイプがいい。
このバイクは……
レース・エンデューロ向け
すべての調和がとれた軽量ロードバイクのベンチマーク。
Mt.富士ヒルクライム
富士チャレンジ200
グランフォンド八ヶ岳
クライムジャパン
関連URL:東商会 http://www.eastwood.co.jp/lineup/cervelo/r5_1.html
写真:編集部、江西伸之
文:菊地武洋、山本健一
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得