2018年03月27日
【2018 NEWプロダクツVOL.13】TIME/Alpe d’Huez 01
タイムの2018年ニューモデル「アルプデュエズ」を紹介しよう。すでにニュースリリースでも紹介されているが、タイム史上最軽量となるモデルだ。ラインナップは2モデル、旗艦モデルのアルプデュエズ01と、テクノロジーを継承しながらもリーズナブルな価格に抑えたアルプデュエズ21である。まったく新しい方法で作り上げられたこのフレームは、既存モデルのアイゾンが誇るダイナミック・パフォーマンスを維持しつつ軽量化を目指す。目標を達成するため、アルプデュエズの開発は従来と違う発想からスタートしているという。まずはHM(高弾性)ファイバーの最適な比率を探り出し、チューブの断面を薄くするためにカーボンブレイド(ソックス状に編んだカーボン)の数を減らし、より機能性に富むカーボン繊維を採用した。さらに可溶性コア材の使い方を工夫し、エポキシ樹脂をより高圧で押し固める新工法を確立した。
また、最大限の軽量化を達成するためには、チューブの断面積を拡大し、少ない材料で同等の剛性を得ることができ、結果、タイム史上最軽量でありながら、非常にすぐれたパフォーマンスをもつフレームへと仕上がった。その軽さはフレーム単体で840g(アルプデュエズ01・フレームサイズS)となる。ちなみにアルプデュエズ01のカーボン素材の配分はHM 60%・HR / HS 37%・Vectran 3%となる。アルプデュエズ21はHM 8%・HR / HS 85%・Basalt 7%となり、素材の配分が全く異なっていることがわかる。
アルプデュエズが採用した新しい設計は、TIMEが培ってきたレーシングジオメトリーにコンパクト感と安定感を与えている。また、新型クイックセットにより、今までのクイックセットよりハンドル位置を9mm下げることが可能になり、上りでのポジションを最適化。同種のバイクよりもスロープ角が大きく、コンパクトで剛性の高いフレームが完成した。既存モデルのフルイディティ、アルプデュエズ21のようなBB中心からサドル中心までのシート角74.5°ではなく1.5°立たせ、シートポストのオフセット0mmのダイレクトリンクによって、パワー伝達効率も向上しているという。
◾️アクティブフォーク
レギュラーカラー :650,000円(税抜)
カスタムカラー :700,000円(税抜)
カスタムカラー(ハンドル+ステム):810,000円(税抜)
◾️クラシックフォーク
レギュラーカラー:590,000円(税抜)
カスタムカラー :640,000円(税抜)
カスタムカラー(ハンドル+ステム) :750,000円(税抜)
レギュラーカラー:レッドブラックレギュラー、ホワイトブラックレギュラー、レーシングエディション、フランスエディション、カスタムヒーロー
カスタムカラーは、フレームとロゴの色を組み合わせて選ぶことができる。3パターン、それぞれ27通りの組み合わせが可能。アルプデュエズ カスタムカラーフレームと同時購入のみハンドルとステムのカラーのカスタムが可能。
ジオメトリー
ディテール
振動を減衰するアクティブフォーク。ノーマルフォークと2通り選ぶことができる
左右非対称設計のチェーンステー。またリアエンドまでが一体成型となる
細身のシートポストはD型のカムテールを意識したデザインか。クランプ部は2本締め
新型のクイックセットにより、アイゾンやサイロンよりもハンドル位置を9mm下げることが可能となる
フレーム形状に合わせたオリジナル規格ヘッドパーツのクイックセット。トップキャップがより軽量化された
オリジナルステムには、シマノDi2のジャンクションを搭載する機能が設けられている
トップチューブには小窓が用意されている。トリコロールもしっかりと配置
IMPRESSION
柳のようなしなやかなフィーリング★山本健一
ここ数年はハイエンドモデルに高止まりしていたタイムだが、アルプデュエズは2モデル用意しており、「旗艦モデル」となる01と「ミドル」の21を用意。今回は旗艦モデル、軽量シリーズの最高峰に躍り出たアルプデュエズ01をインプレッションした。日本では600gのカーボンフレームが流通していることもあり、「840g」はインパクトに欠けるか? しかし小柄なアジア人と比べると体格の良い傾向にある欧州メーカーが考えるフレーム思想の違いともいえる。語弊を恐れずにいうなら軽いだけのフレームならいくらでも作ることができるが、軽さとライディングフィールを兼ねそなえるのは難しく、永遠のテーマともいえるが、それに果敢にチャレンジし、克服せんとしたのがアルプデュエズといえる。軽いながらもボリュームがある立体断面のチューブは見た目にも安心感がある。そしてヘッドチューブを短くしたジオメトリーも上り勾配になったときにペダリングしやすいようなポジションが容易にセッテイングできる。このスペックによって生み出される上りでのフワリとした巡行性能は秀逸だ。スピードが乗ってくるとサイロンやフルイディティの加速感に軍配が上がるだろうが、もちろん基本性能の水準はもちろん標準的なカーボンバイクを上回っているといえる。
タイムのバイクを見ていると本当に「自転車が好きなんだなあ、よく考えているな」と改めて思う。安直ながらも、このバイクを使っていくうちに噛みしめていくはずだ。一見奇抜に見えるが堅実な作りなのも好感触。例えば、シートクランプのオスネジがフレーム側に配置されていたり、長い目でみて「乗っていてよかったなあ」と思えるディテールがそこかしこで確認できる。アクティブフォークはもはやマストにすべき性能だろう。見た目にも物理的にも可動部を持たないフロントフォークでこれほどまでに実感できる構造(実際には内部で動きがあるけど)はほぼ存在しないといえる。路面をフラットにしてペダリングロスを解消してくれるようなフィーリングは心地よい。フォーク性能のおかげでアルプデュエズの軽量フレームも活きるというものだ。また下りでのセイフティマージンも高めてくれるので、グランフォンドにも適しているだろう。
オスネジをフレーム側に設置するなど、ユーザビリティを考えた設計には好感がもてる
タイムのヒルクライム用。しかもモデル名がアルプデュエズとなれば、ゴリゴリの競技用というイメージだが、そうではない。ヒルクライムレースで優勝を狙うライダーの求める鋭い反応性よりも、中低速の続く峠道でペースを上げるのに適した味付けがされている。というのが、今回乗った印象だ。以前、ホイールをライトウェイトにして乗ったときの方がキレがあったので、私のように体重のあるライダーはより剛性の高いホイールを選択したほうがいいだろう。タイムの走行感とは美しく軽い日本刀というよりも、青竜刀のような強さと鋭い切れ味が特徴だった。そう考えると、重量以上の軽さが際立つ仕上がりである。下りの速さは最新のタイムらしく、共振して振動を抑える構造を内包するアクティブフォークが抜群の高速ダウンヒルを可能にしてくれる。ヒルクライム用というと登坂性能ばかりに目がいくが、下りが遅いとせっかく上りで稼いだアドバンテージを失うことになるし、少々、上りで遅れても下りで挽回することもできる。予算が許すなら、オススメは圧倒的にアクティブフォーク仕様だ。個人的にはコスメチックに課題があるが、こればかりは良し悪しではなく、好き嫌いである。プロダクトマネージャーが替わり、新世代のタイムを感じるに十分な出来映えである。
このバイクは……
タイムたる所以を証明した一台。山岳はもちろんグランフォンドにも最適
Mt.富士ヒルクライム
グランフォンド八ヶ岳
関連URL:ポディウム http://www.podium.co.jp/
写真:和田やずか
文:菊池武洋、山本健一
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得