2020年05月19日
サイクリストがUber Eatsをやってみた
どんな自転車や機材を使うの?
さて次は、サイクリスト的に気になる使っている自転車や機材について。
まず必要だなと思ったのは、ハンドルなどにスマホを固定するホルダーだ。アプリを操作したり、マップを見る機会が多いので、バッグからいちいち取り出していては大変。自転車を離れて持ち歩くことも多いので、取り外しが簡単にできるほうがいい。自分はたまたま使ってなかったミノウラのホルダーが手元にあったので、それを使っている。
ハンドル周りにつけているのはライト、サイコン、スマホホルダー、ベル代わりの鈴。サイコンが2つついてるのは特に意味はないです……。トップチューブバッグにはモバイルバッテリーを入れて、充電している
なんといっても、スマホの電池が切れると仕事にならない。実際にバッテリーの残量がなくなって、その日の配達を終えることが何度かあったので、トップチューブバッグにモバイルバッテリーを入れてそこから充電するようにしている。以前はUberからスマホホルダーとバッテリーの貸し出しをしていたようだが、配達パートナーの数が増えたせいか、最近はやっていない。
自転車は何を使ってもいいが、筆者はマウンテンバイクを使っている。もう1台、ロードバイクも所有しているが、盗難や傷がついたりするリスクを考えてのチョイスだ。スピード的には劣るかもしれないが、ちょっとした段差もこなせるし、取り回しもいい。あとロードバイクのように前傾姿勢がきついと料理が傾いてこぼれたりするかもしれないという心配もある。
マウンテンバイクは、10年ほど前に買ったKONAのアルミフレームのエントリーモデル。セール品で6万円ぐらいとお値打ちだったが、シマノディオーレの3×9速のギア、油圧ディスクブレーキなどパーツは充実している
ホイールは小回りの利く26インチ、タイヤは舗装路でも走りやすいブロックパターンのものを使っている。フロントサスペンションは、ほぼつねに固定。別にUber用にこのセッティングにしているわけではなく、以前からほとんど街乗りにしか使っていないから
スタンドはつけていないので、とめるときは壁などに立てかけている。立てかける機会は多いので、フレームの傷に神経質な人はお気に入りの自転車を使わない方がいいだろう。
もちろん、カギも携行している。自分の場合、短時間で目が届く範囲にとめるときは、カギをかけないこともあるが、大きなマンションなどに配達するときは施錠するにこしたことはない。
服装はUberのルール上は、常識の範囲で身だしなみに気を付けていれば自由。僕の場合、ヘルメットはもちろんかぶっている。ウエアは上半身はサイクルジャージ、下半身は7分丈のパンツと動きやすさを重視している。バックポケットがついているサイクルジャージはカギや小銭入れなど、頻繁に取り出すものを入れておくのに都合がいい。
配達するときの格好は、ジャージに七分丈パンツ。ヘルメットも忘れずに
シューズとペダルはマウンテンバイク用のSPDを使用している。歩く機会も多いし、SPD-SLなどのロードバイク用クリートだと、お店やマンションの中を歩くときにカツカツ音がしたり、傷つけそうになるので気を遣うかもしれない。もちろん、フラットペダルにスニーカーでもいいだろう。
交通ルールやマナーを考える
他の配達パートナーが使っている自転車はママチャリだったり、クロスバイクもどきだったり、さまざま。ロードバイクなどのスポーツバイクは少数派のようだ。都内で増えてきたコミュニティサイクル(レンタサイクル)を使っている人もたまに見かける。もちろん、原付バイクを使っている人も少なくない。さらに、Uberでは自転車や原付のレンタルもやっているそうだ。
ネット上のコメントなどでは配達パートナーのマナーや交通ルール違反を指摘するものをたまに見かけるが、極端にひどい人はそれほどいないと感じている。ただし、交通量の少ないところでの信号無視などを見ると、やはりスポーツバイクに乗っているサイクリストと比べると意識は低いかも。早く配達できれば配達の件数も増えるし、お客の印象もいいから、ついつい急いでしまうのだろう。ヘルメットを被っている人もめったに見ないし、メッセンジャーなどの仕事と比べると自転車に興味がある人は少ないようだ。それよりも空いた時間を使って、仕事をしたいという考えの人が多いのだろう。もちろん、自分は信号無視や走行中のスマホ操作などは絶対しない。飲食店の立地の都合上、歩道上を走ることもあるが、歩行者のいるときはスピードに気を付けているし、押して歩くこともある。マナーとルール順守は心がけているつもりだ。
結局のところどれくらい稼げるの? どれくらい走るの?
で、気になるのはどれくらい稼げるのか、ということ。
配達のインセンティブは、基本料金+飲食店から利用客のところまで配達する距離で変動する。配達距離はだいたい1~3kmの範囲内で、1回のインセンティブは400~600円ほど。ちなみに利用客が払う配送料は距離問わず一律380円とのことなので、差額は飲食店かどこかが負担しているのだろう。なお、自分の現在地から飲食店まで走った距離はインセンティブにカウントされないので、お店が密集しているエリアで働く方が効率がいいことになる。
またお昼(11時~14時)や夕方(17~20時)は配達パートナーのインセンティブが1.1倍になり、雨の日や週末、GW中など多くの注文が見込まれるときは一定の報酬も設定される。配達が多い時間帯やエリアをよく分析すれば、稼ぎも多くなるだろう。
意外にも登録したばかりでも、注文はそこそこ入ってくる。連続して注文が入れば、1時間に2回は配達できるので時給にすれば1000円前後といったところ。しかし、30分~1時間ぐらい注文が来ないときもあるので、他のバイトと比べて特に割りがいいということはなさそうだ。ちなみに、インセンティブは1週間ごとに振り込まれる。
またUberの大きな特徴が、相互評価である。配達パートナーである僕も飲食店と利用客を評価するし、僕もお店とお客から評価されることになる。お金と時間のかかる研修などはほとんど行わず、実際に働いて優秀だと評価された配達パートナーに優先的に仕事が回るようにしていき、そうでない人は淘汰していくことでサービスの品質を保っている。こういうのは、いかにもIT的な効率重視の考え方で少し違和感も感じるが、これについて論じるのは本題からずれそうなのでこの辺にしておく。
で、1日トータルどれくらいの距離を走るかというと、バッテリーの限界まで6~7時間オンラインにしていれば50~60kmは走っている日もある。都内は絶えずアップダウンがあるし、思わぬ激坂も登場したりするので、獲得標高が500m超になることもざらだ。その人のレベルにもよるが、練習やダイエット目的の運動としての効果も期待できるだろう。
個人的には、いろいろな街を走れるのも楽しみになっている。以前から都心をよく自転車で走っていたが、配達を通じて今までいったことのない街や地域に行ったり、「ここにこんな店があるんだ。この道はここにつながっているんだ」という発見があったりというのは意外と楽しいものだ。まあ配達中はあまり寄り道をすることはできない。
すべてに満足というわけではないが、空いた時間に体を動かして多少のお金を稼ぐことができ、ポタリング的な自転車の楽しみもある。そういう意味では、今後もしばらく続けてみようかなと考えている。
関連URL:Uber Eats https://www.Uber Eats.com/ja-JP/tokyo/
(写真/本人)
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著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。