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2024年06月26日

篠さんの日本縦断ギネス世界記録挑戦記 <本編・6日目、7日目>

最終日 留萌~宗谷岬

走行距離 205km 獲得標高 1100m
グロス平均速度 22.4km/h
経過時間 9時間8分
走行時間 8時間23分
活動時間 2:40~11:48

5月27日、2時20分起床。

1時間だけ寝るつもりでしたが、アラームの音で起きてはみたものの、脳も体もまったく動かなかったから二度寝して自然覚醒。

通勤電車で寝落ちた5分が最高に気持ちいいのと一緒で、極限に眠い時の仮眠は効率よく回復します。
起きあがったら、憑き物が落ちたように体が軽くなって頭も冴えていました。

就寝前ヘルメットとアイウェアをその辺にぞんざいに置いたせいで、アイウェアが荷物に紛れ込んで見つからない事件が起きました。

予備アイウェアの保管ケースの発掘にも時間がかかってしまい、結局走り出したのは2時40分。
※最終日だけ違うアイウェアをかけているのはこれが理由です。

人は疲れているといろいろ抜けちゃいますよね。

その時はめちゃくちゃ焦りましたが、今になると笑い話です。ほんとしょうもないことで10分ロスしました。(笑)

残り200km。

北海道区間は全行程で一番要求Ave.が低いです。

休憩込みでAve.17km/hさえ維持できれば、今回設定した目標タイムは達成。予定通りにいくと、180時間台の現女子記録を約29時間更新できます。

ある意味それが最低ラインでもあり、体に続行できないレベルの支障が起きない限り遂行できるペースです。

「そこからどれだけ詰めていけるか」が、本当の意味での私のチャレンジかもしれません。

最後の最後であとどれぐらい絞り出せるか。
自分の意思でどこまでやりたいか。

突き詰めると、最後は気持ちの問題な気がします。

最後の試練

6時過ぎから本降りの雨に変わり、一旦道の駅遠別にピットインして装備を整えます。
ゴールまでの残り113kmはほぼ平坦で雨も強まるので、バイクをXELIUSからディスクのORCAにチェンジ。

ここで貯金1時間49分、少しずつ確実に巻いています。
天塩町を通り過ぎ、天塩河口大橋を渡れば、異世界のような景色が広がっていました。

巨大な風車が右手側にずらーっと並んでいて、真っ直ぐな道がどこまでも続いていきます。

北海道は地図だけ見ると縮尺感覚がおかしいとよく言いますが、サイコンに表示された短い直線が32kmもあります(笑)。

自分は進み続けているのに、風車がなかなか近づいてこなくて、三本ローラーを回し続けているような気分に陥りました。視覚情報で脳がバグります。

どんどん雨も強くなって、轍に水が溜まって道路が川と化して、そこに対向車の大きなダンプカーが遠慮なく突っ込んでいく……。

北海道の大型車は高速道路並のスピードで走っているから、対向とすれ違う度に、凄まじい風圧とともに、スプラッシュマウンテンみたいな水飛沫が頭より高い位置から振りかかってきました。

2、3分に1台の頻度で来るから、スプラッシュマウンテンを浴びた回数は軽く50回は超えてるかな……。
稚内まで残り25km辺りから横殴りの風もプラスされて、油断すると普通に持っていかれます。

10℃未満の雨は体の芯まで冷えていく感じで、ふと“自分何やってんだろう”と我に返る瞬間もありましたが、止まると低体温で死ぬから踏み続けるしかなかったです。

悪天候で気分は世紀末でしたが、稚内に向かうまでの道、広大な野原の奥に向かって道が消えていく様子はとても日本離れしていて、深く記憶に刻んだ景色でした。

天気が良ければ、この区間は利尻島を横目に走り続けられる絶景ロードらしいです。

抜海を通過したのは9時52分、貯金2時間54分。

稚内市街を抜けたのは11時、貯金2時間57分。

遂に、宗谷岬まで残り27kmの看板が見えました。

気分はもうウィニングランですが、宗谷岬方面に左折した瞬間、押し戻されるような強烈な向かい風が出迎えてくれました。

予報見返したら風速10m/s超えでした。

向かい風だけではなく、いろんな方向から突風が吹いて、そのタイミングで対向車がくると予測できない煽られ方をされ、心臓に悪い区間でもありました。

昨日まで順調過ぎたから、神様が最後の最後に過酷さを演出してくれたんじゃないか説ですが、やり過ぎです。

身体的な限界はとうに越えたはずですが、最後の18kmは強風に耐えながら無心に踏みました。

ラストの区間、あとからデータ見返したらあの向かい風でAve.25.4km/hでした、びっくりです。

残り僅かだから、体のリミッターが外れたと思います。

遠目に宗谷岬らしきものが見えて、広場に入っていって、「終わったー!!」

と声出したら、奥で待っていたNobさんが、「まだだよ!石碑の前まで来て!」と誘導してくれて、何ともぐだぐだなゴールでした(笑)。

あとから沢山の方が宗谷岬のライブカメラでゴールする瞬間を見守ってくださったと知り、嬉しかったです。
SNSにコメントをくださった皆さんも本当にありがとうございました。

宗谷岬に到着したのは11時48分。

予定から3時間14分を巻いて、全行程を走破しました。
総距離2536km、獲得標高15641m
記録は148時間48分(6日4時間48分)※睡眠休憩込みのグロス計測

ゴールの瞬間、もっといろんなものが湧き上がってくるかなと想像しましたが、九州の端っこからここまで走ってきた実感が湧かないのと、無事走り切った安堵の方が強かったのか、ただただ石碑を眺めていました。

その後「やり切った!」と言ったのかな?

うろ覚えです。
サポートチームのみんなで集合写真を撮った時が一番はしゃいでいた気がします(笑)。

ゴール後は温泉で人権を取り戻してから、稚内のマクドナルドを聖地巡礼して、札幌の美味しいジンギスカンを堪能しました。

長かったようで体感一瞬だった濃すぎた一週間。

自分にとって本当に貴重な経験になりましたし、いろんな人を巻き込んで、沢山の方に応援されて走り抜けた日本縦断ギネス世界記録チャレンジでした。

勇気を出して挑戦してよかったです。

写真:Nobuhiro Toya 文:篠


<関連URL>
篠さんの日本縦断ギネス世界記録挑戦記 <機材編>
篠さんの日本縦断ギネス世界記録挑戦記 <準備編>
篠さんの日本縦断ギネス世界記録挑戦記 <本編・0日目〜3日目>
篠さんの日本縦断ギネス世界記録挑戦記 <本編・4日目、5日目>


ギネスワールドレコーズ公式サイト : https://ultracycling.com/record/yaofeng-cheng-japan-s-n-record-2024-05-27/

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