2023年10月19日
【2023ジャパンカップ】宇都宮ブリッツェン、1年生監督が戦った第30回大会
今季から宇都宮ブリッツェンを率いる若き西村大輝監督が、30回の歴史を数える地元のビッグレース「2023ジャパンカップサイクルロードレース」(栃木県宇都宮市、10月14日:クリテリウム、15日:ロードレース)で采配を振るった。初めてチームカーから見たジャパンカップは、どのように映ったのか。
今季限りで5選手が退団
ジャパンカップで最も多く声援を受けるチームのひとつが地元の地域密着型チーム、宇都宮ブリッツェンだ。活動15年目となったチームを指揮するのは、今季監督に就任した弱冠28歳の西村大輝監督だ。
西村監督はジュニア時代にアジア・ロードレースチャンピオンに輝き、選手としてシマノレーシング、NIPPO・ヴィーニファンティーニ、宇都宮ブリッツェンで活躍。しかしそのキャリアの大半をケガや病気に悩まされ、昨年のジャパンカップ前に現役引退、ブリッツェン監督就任を発表した。
監督1年目のシーズンも終わろうとしているが、新たな役割にも「楽しく充実しながらやっています。チームカーの運転も楽しいですし、自分たちの立てた目標を達成したときは『やった! よかった!』という喜びがあるので、そこが醍醐味かなと思います」と笑顔を見せていた。
ジャパンカップ前にはチームから大きな発表があった。長年チームで活躍した阿部嵩之、小坂光、堀孝明ら5選手が今シーズン限りでの退団を発表。また、同じく退団を発表した小野寺玲が新型コロナ陽性により、残念ながらジャパンカップ参戦を見送ることになった。
そして開幕したジャパンカップ、10月14日のクリテリウムはスプリンターの小野寺を欠く中、元台湾王者のフォン・チュンカイの17位がチーム最高位だった。
翌日15日のロードレースは、朝から冷たい雨。ブリッツェンは他チームと同じく厳しい戦いを予想しつつ、地元ファンに見せ場を作るべく意気込んでいた。
「レース展開としては、スタートから速くなると予想しています。3周目に山岳賞もあるし、雨も降っているし、速いレースになる。年々ジャパンカップに来るワールドチームの選手がちゃんとコンディションを整えてモチベーションも高く来ていると感じてはいるけど、今年はさらにレベルの高いレースになっています(西村監督)」
そんな中、チームはキャプテン谷順成をエースとしてスタートラインに並んだ。
「今日のレースは谷順成が一番向いていると思いますので、彼がチーム最高順位を目指してがんばってほしい。ブリッツェンのジャージを着て走るジャパンカップが最後となる選手もいるので、彼らにも熱い声援をいただきたい(西村監督)」
目標のUCIポイント圏内でフィニッシュ
予想通り、レースは序盤から速いペースで展開していく。2周目で集団が分裂したとき、約20人のメイン集団にブリッツェンは残れなかったものの、谷と元シクロクロス全日本王者の沢田時の2人が後方集団で粘りの走りを見せていた。
一方、これがブリッツェンでの最後のレースとなる堀、小坂、阿部の3人、そしてフォンはレース半ばで自転車を降りることになる。
先頭ではジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)が長時間に渡って逃げ続け、最後はルイ・コスタが(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)が少人数スプリントを制して優勝するなど、2人の元ロード世界王者が躍動。
一方、ブリッツェンの2選手は地元ファンの声援を受けながら走り続け、最終的に谷が28位、沢田が39位とUCIポイント圏内の40位以内でフィニッシュした。
谷は「13周に短縮されたことと雨により、1周目からハードな展開になった。ブリッツェンは自分と沢田が残り、チームとしては最低限の走りができたと思うが、ワールドチームと比べてまだまだ力の差を感じた。雨の中、古賀志山の上りなどでお客さんがたくさん声援を送ってくれた。それが僕たちの力になり、本当にホームの力を借りて僕らは走っていると感じた」と振り返った。
西村監督は海外選手との力量差を感じながらも、一歩ずつステップアップしていくしかないと語った。
「年々ジャパンカップはレベルが上がっている。昔から来日する選手は豪華だったけど、近年はモチベーションが高い状態でジャパンカップに挑んでいるので、まったく別のレースになってきている。世界の壁を見せつけられている。それでも、谷、沢田はUCIポイント圏内に入れたので、今後につながっていくいい走りができたと思います。自分たちの設定した目標をクリアしていくという小さいことの繰り返しだと思います」
実は選手時代、療養や海外遠征などでジャパンカップに出場したことはないという西村監督。
「監督として初めて挑むジャパンカップだったので、チームカーからは初めて見る景色だった。たくさんのお客さんが大雨で寒い中、ずっと応援してくださって、ありがたかった。選手も自分もうれしい気持ちで力になったと思います」
来季のブリッツェンは、選手の入れ替えで大きな変革が予想される。若い監督のもとでどんな新しい姿を見せてくれるか期待したい。
写真と文:光石達哉
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著者プロフィール
光石 達哉みついし たつや
スポーツライターとしてモータースポーツ、プロ野球、自転車などを取材してきた。ロードバイク歴は約9年。たまにヒルクライムも走るけど、実力は並以下。最近は、いくら走っても体重が減らないのが悩み。佐賀県出身のミッドフォー(40代半ば)。