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2017年03月29日

弘前で冬のおさんぽ

いつも乗るのはロードバイクのみ。会社までの15㎞ほどのジテツウや、トライアスロンのトレーニングとして週末に100㎞ほどを走る程度。そろそろ違うことにもチャレンジしてみたいと思っていたところ、ファットバイクを使った「弘前城とその周辺 おさんぽツアー(冬期対応)」という楽しげなツアーを発見。じつは弘前という街は、高校卒業までを過ごしたまさに故郷。改めて考えると、ジテツウしていた高校時代から約20年以上あの街を自転車で走ったことがない。ここ数十年は帰省したときに年に4日ほどしか滞在していないからしかたがない。

知っているようで知らない街、弘前を目指した。

今回、冬の弘前を案内してくれるのが、101デザインズの花田カズオさん。春・夏・秋は登山ガイドとして周辺の山々を、そして冬にはスキーや冬季のライドを行うなど、アクティブな方法で青森を紹介してくれる。

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花田さんは「チャレンジヒルクライム岩木山」の実行委員も務める、青森のサイクル人気を支えるひとり

 

「冬のファットバイクツアーは今年から始めたんですが、国内のお客さんはもちろん、海外からの旅行客にも人気です。
ファットバイクの魅力は、道を選ばず誰でも手軽に乗れるところ。そしてあまりスピードが出ないところですね。じっくり景色を楽しみながら乗れるので、観光目的のツアーには最適なんです。もちろん自分のファットバイクで走ってもOKですし、レンタルバイクも準備していますので、手ぶらでも気軽に楽しめます。今回は途中でおやつタイムもある、通常のツアーですが、参加者のレベルによって走るルートはアレンジしますよ」

ファットバイクは、アメリカの豪雪地帯に住むライダーが、雪道を走るためMTB用のホイールを2本並べて溶接し極太ホイールを作ったのが始まり。登場したときは完全に異端扱いだったが、今ではメジャーブランドまでその開発に着手。雪はもちろん、岩場やダートなどの悪路を走るその走破性、インパクトのあるビジュアルから、ファッションアイテムとして街乗りするライダーも増えつつある。

「基本的に城内を走りますが、雪が比較的少ない時には歩道も走ります。雪が積もると歩道が狭くなって歩行者の迷惑にもなるので、そこは気を付けています。歩道を走る時は歩行者絶対優先・車道を走る時は冬なので自動車を優先。僕ら自転車は常に通行の邪魔にならないことを意識しています。ただ歩道が走れると行動範囲が広がるので弘前城周辺も案内できますよ」とのこと。

ちょうど取材日は雪が少なく、歩道の走行も可能ということで、歩道をバイクを押しながら歩いて城内からスタート、ではなく花田さんのショップ「101デザインズ」から走り始めた。

バイクは「キュキュキュ」という雪を踏みしめる音を鳴らして、するすると進んでいく。タイヤの空気圧は普段のロードバイクからは考えられない1.5気圧くらいだが、意外と走りが軽い。しかもタイヤのエアボリュームがとてつもなく大きいため、乗り心地がふかふかしていて、気持ちがいい! ボヨボヨしたタイヤが雪をつかんで雪の上でも全く滑ることなく進んでいく。

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101デザインズにほど近いコーヒースタンド「猫又舎」でこだわりのコーヒーをポットへ。走り始めたばかりだが、今から「おやつタイム」が楽しみ
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弘前城北側の仲町は、津軽藩時代の武家屋敷が今も残る地域。ボヨボヨとゆっくり進むファットバイクなら、散歩や観光に最適

 

花田さんのショップを出て、まずは武家屋敷群を通る。渋墨塗りの黒塀の中をゆっくりと抜けるといよいよ城内へ。弘前城公園内は49万2000平方メートル(お決まりの東京ドームで換算すると10.5個分)の広大な敷地。それなりにアップダウンもあって、公園内を走るゆるいツアーとはいえ走りごたえは十分。しかも雪が解け気味だったこともあり、普段舗装路しか走らない自分にとっては、走りづらいけれども、なんだか楽しい。

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城内への侵入は重要文化財の「北門(亀甲門)」から。矢傷も多数あり、戦国時代の面影を今に伝える。……18年住んでいたけど、知らなかった……
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本丸に通じる「下乗橋」。往時はここで馬を降りることからこの名前が付いた……これは知ってた

 

往時のお作法どおりバイクを下車して下乗橋を渡り、いよいよ本丸へ。現在、2015年から行われている石垣の大規模修復のため、天守は約70m曳屋されて移動。

曳屋とは建築物を解体することなく、移動する建築工法(曳屋の詳細はこちらhttp://www.hirosakipark.jp/ishigaki.html#ishi01)。石垣の上に載った「普段の弘前城」とは違うが、これはこれで違った趣があっていい。展望台もあり、いつもとは違った角度から見ることもできるので、城を見慣れた市民にも好評だとか。

 

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展望台のおかげで、ちょうど2階くらいのレベルから見ることもできる。これまでは下から見上げるだけだった天守がすごく新鮮!
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城内を出た後は、歴代津軽藩城主の菩提寺「禅林街(長勝寺)」へ。道路の両側には曹洞宗の三十三ヵ寺が立ち並ぶ。杉林の奥に見える「三門」は重要文化財のひとつ
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雪上のおやつタイム。ソフトな生地の中にシャリシャリのりんごを包んだ弘前の新銘菓「らぷるhttp://www.shikanai.co.jp/rapuru/#pagetop」を、スタート時にポットに入れたコーヒーとともに

かなりお決まりの散策コースだったが、ファットバイクで走る冬の弘前は新鮮。初めて訪れる人にとっては、さらに街の姿が新鮮に映るだろう。

青森といえども、近頃は1月でも雪が少なく、3月中頃には雪解けもはじまる。雪上ライドはあまり長い期間できないが、だからこその貴重な楽しみもある。普段ロードばかりで新しいジャンルにチャレンジしたいライダーには、雪×ファットバイクをおすすめしたい。短い時間と距離でもかなりの充実感が得られるだろう。

 


~弘前城周辺の周遊スポット~

藤田記念庭園 大正浪漫喫茶
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りんご王国・弘前には、アップルパイの種類もたくさんある。藤田記念庭園の大正浪漫喫茶では、6種類のアップルパイを提供(桜祭りの時期には7種類)。雪景色と一緒にどうぞ。
http://www.city.hirosaki.aomori.jp/gaiyou/shisetsu/2014-1206-1549-48.html

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大正8年に建てられた八角形の塔が目印



津軽藩ねぷた村
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弘前ねぷたの展示はもちろん、「金魚ねぷた」などの製作実演コーナーなどの体験もできる観光施設。津軽三味線の生演奏も。
https://www.neputamura.com/


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今回使用したバイクは・・・
KONA WOZO

トレイルバイクのHONZOをベースにファットタイヤを履かせたウォーゾー。ファットバイクにありがちなもたつき感がなく、雪道、ダートロードでも機敏に走る走行性能が魅力。
完成車価格:239,000円+税
http://www.konaworld.jp/


 

弘前城とその周辺 おさんぽツアー(冬期対応) by 101デザインズ http://ca101d.com/

 2時間・お一人さま6,000円(税込・おやつ付き)
※1名さまの場合8,000円(税込)。マイバイク4名さま以上の場合は料金ご相談くださいレンタルバイクの場合、最大3名さま。マイバイクの場合、最大6名さま 。
※マイバイクの方はツアー代から1,000円OFF。
※4名さま以上の場合は料金ご相談ください。

 

(文/今 雄飛、撮影/播本明彦)

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