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2016年06月26日

第13回Mt.富士ヒルクライム覇者 森本 誠さん レースレポート 

 今年のJBCFのJPTシリーズ戦から富士山ヒルクライム(ふじあざみライン)と栂池高原ヒルクラムが消えたとき、残念な気持ちもあったが、反面、気になる存在になっていた本大会に出られるぞ、と嬉しく思った面もあった。少人数の選抜クラス制というのも魅力的だし、勾配の緩さゆえピュアクライマーには不利なコースというのも、逆にやってやろうじゃないか、という気にさせられた。もっと言えば、クライマー代表(?)として、スプリンターかつ全日本TTチャンピオンである龍太郎に山で好きなようにさせてはおけまい、という気概も少々……。

 大会が近づくにつれて、去年の有力選手のレースレポートを読み、作戦を考え始める。自分の経験では、平均勾配5%の大会と言えば、去年参加したニセコヒルクライムくらいであり、その時は招待選手だったこともあって先頭を全力で引いたが、なかなか集団がばらけなかった印象が残っていた。本大会の参加選手層を考えれば、何も考えずに先頭で速いペースで走っても無駄脚となるだけ。いかに、スプリント力において自分と同等もしくは弱いと思われる選手と、集団から抜け出すかがカギである。とは言え、考えることは皆同じ。裏をかこうとすれば序盤からのアタックだが、比較的エンジンのかかりの遅い自分には難しい。結局、色々考えてもこれと言った作戦に絞ることは出来ず、集団を活性化させ、皆がそれなりに厳しくなったところで、単独か少人数で抜け出すしかない、という大雑把な方針に落ち着いた。

 大会当日を迎えた。選抜クラスは約50名であり、並び位置に気を配る必要もなく、久々に会う選手と談笑しながらスタートを待つ。号砲に遅れて花火があがり、ゆっくりとスタート。交差点まではパレード走行だが、速めに進むため、アップにもなる。リアルスタートが切られるとすぐに集団が縦に伸びる。料金所で先頭まで上がったところ、56さん(筧 五郎さん)が単独で飛び出している。しかし、誰も反応しない。恐らく皆が優勝候補筆頭として警戒しているのは、前年覇者の龍太郎とJPT伊吹山ヒルクライムでプロと互角に戦った才田選手と予想していたが、やはり皆が彼らをチェックし、そして誰かが均衡を破るのを虎視眈々と待っている。これまで数々のヒルクライムレースに出場してきたが、こんなに牽制がかかるレースは初めてだった。

 このまま進んでしまってはマズイな……と思い始めたころに、昨年乗鞍2位の兼松選手の単独アタックがかかる。様子見のアタックという雰囲気ではなく、逃げを決めに行ったのが感じられた。ただ、まだ序盤を終えたところであり、単独でブリッジというよりは皆で回して捕まえようと思っていた。数回速いペースでローテーションを回しても、あまり距離が縮まらない。そして、自分が先頭で少し勾配のきつい坂に入り、ダンシングを開始した時に、本能的にとしか説明できないのだが、アタックしていた。どんどん兼松選手が近づいてくる。実は最初は置き去りにするつもりで追い抜いたが、ピタッと後ろに入られる。龍太郎がすぐ後ろにいることは分かったが、集団が離れていたので、そのままのペースを保つ。しばらくすると、兼松選手と二人になっていた。こんなタイミングで、こんな大きな逃げ切りのチャンスが訪れるとは! 捕まることも想定したが、先頭を引く時は維持できる最大限の力で走った。

 4合目の急こう配区間をこなしたところで、逃げ切りを確信する。あとはゴール勝負にむけた牽制をさけるため、また二人逃げを決めた兼松選手と真正面から勝負したくて、並走からのスプリントを持ちかけた。応じていただき、3つ目のシェードを超えて、ラスト100mというあたりで自分が先手を打ってスプリント開始し、先着。序盤のスローペースからは思いもよらなかったコースレコードでの優勝だった。

 持論になるが、ヒルクライム大会は持てる力を上から順に並べるようなものだと思っていて、その分かりやすさ・再現性の高さも魅力だと感じている。しかし、この大会に参加してみて、ピュアクライマーと上れるスプリンターのちょうど交錯するゾーンで戦うことで、ただ脚のある人が勝つだけではない、ロードレースのような面白さも感じることができた。まさにヒルクライムロードレースとでも名付けるべきこの大会に、来年は連覇をかけて参加したいと思う。
(森本 誠)

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