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2016年09月07日

【橋川健 時事コラム特別編】チームユーラシア-IRCタイヤ 2016年サイクリングアカデミー レポート“後編”

ベルギーで日本人若手チーム「チームユーラシア-IRCタイヤ」の監督を務める橋川健氏による、サイクリングアカデミーのレポート後編をお届けします。


前半戦のジュニアを中心にしたメンバーを入れ替え、後半はジュニアのメンバーにU17のメンバーが加わりました。

8月19 ~21日
West Vlaanderen Cycling Tour U17

9
左から細田 悠太、横田 エンツォ、小野寺 慶、福田 圭晃、柳澤 創、古林 一夢

ア メリカのナショナルチームやオランダの有力クラブの参戦があり、U17カテゴリーではヨーロッパでも珍しい3日間4ステージのツアー。昨年は1年以上前から参加の打診を行い猛烈にアピールしていたのだが補欠に回されてしまい、参加は諦めていたのですが、欠場するチームがあらわれ参加が決まりました。日本人 選手たちの期待以上の活躍により、今年はスムーズに参加が決まりました。

8月19日
第1ステージ Wielsbeke 68.2km 6.2kmX11laps 出走153名   Avg Speed.41,6k/h

リザルト
13位 福田 圭晃
31位 横田 エンツォ
44位 小野寺 慶
74位 古林 一夢
DNF  細田 悠太、柳澤 創

前半からアタックがあり6名がレース中盤まで逃げる。後半に入り6名を吸収後、小野寺を含む数名が集団から飛び出すが後に吸収された。最後は全ての逃げは吸収され100名以上での集団スプリントとなった。福田は単独ながら13位でフィニッシュした。

横田と細田と柳澤は途中に降り出した雨により落車。横田はチームカーの隊列を上手く使いながら復帰したが、経験の無い細田と柳澤は集団から遅れフィニッシュする事は出来なかったが、救済措置により一律7分のタイム差を付けられ翌日の出走が認められた。

8月20日
第2-aステージ Bellegem U17 61.2km 9.6kmX8laps
Starters:150   Avg Speed.39.77k/h

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序盤から激しく打ち合いとなるがどれも逃げは決まらなかった。レース中盤に小野寺を含めた6名が集団を抜け出し、15秒、30秒と少しずつタイムギャップ差を広げた。このエスケープグループは後に追走の3名を加え、9名となる。
ラ スト3周、メイン集団とのギャップを1分に広げ逃げを決定的なものとしたが、小野寺が痛恨の単独落車。狭い道幅の横風区間で前の選手が風に煽られ、それを 避け切れなかった。レース前に「必ずエスケープは決まる。抜け出す事だけを考えるより、どの逃げが最後まで逃げ切れるのか?を考えながら走れ」と指示を出 したのだが、小野寺は期待に応えてくれた。落車してしまったのは残念だが、昨年付いて行くのが精一杯のコースで今年は決定的な逃げに加わる事ができたのは 大きな成長を感じた。細田がメイン集団でフィニッシュ。小野寺と福田は若干遅れてフィニッシュした。横田は後続の集団でフィニッシュ。古林と柳澤はフィ ニッシュできなかったが、救済措置により次ステージへの出走が決まった。

リザルト
49位 細田 悠太 +0:00:45
65位 福田 圭晃 +0:01:37
66位 小野寺 慶 +0:02:11
90位 横田 エンツォ +0:04:45
DNF 古林 一夢、柳澤 創

8月20日
第2-b ステージ Bellegem U17  6.2km チームTT
2-aの周回コースを1周するチームTT。距離は6.2km。コースは緩い起伏があり、下りの後にはタイトなクランクコーナーがあり、スピードに乗せる事が難しいコースでした。
選 手たちには「先頭でコーナーに入る時はスローイン、スローアウト」を告げました。メンバーを選考した時点でDHバーを使用したトレーニングを行う事を伝え ていた事と、ベルギー入りしてからもユーラシアメンバーが中心となってローテーションのトレーニングを行う事ができたのはとても良かった。6名が全員ラス ト400mまで残る事ができました。
参加26チーム中21位は決して良い順位ではありませんが、難しいコースで平均時速で42k/hを超えたのは 良い走りだったと思います。しかし、欲を出してギリギリまで追い込めば20秒は詰められたと思います。優勝はアベレージスピード45.2k/hで、約40 秒速いタイムでした。

11

リザルト
21位 TEAM EURASIA – IRC TIRE
0:09:34

8月21日
第3ステージ Rekkem  U17 68km 6.8kmX10Laps
Starters:146   Avg Speed.41,09k/h
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選手たちには「逃げに加わる事と、スプリントになった場合は福田を前に引き上げる事」を指示しました。つねにアタック&吸収が繰り返される展開で、中々決定的なアタックは出来ませんでしたが、細田がレース中盤に数名で先行する事ができました。先頭交代に加わらない選手が数名いたため、後に吸収されてしまいましたが、このような厳しい展開で集団から抜け出したことは、高い実力をもつ証明です。
最終的にはすべての逃げは吸収され、約90名による集団スプリントとなり、福田は最終コーナーを6番手前後で入りましたが14位でした。位置取りのうまさが際立っています。途中遅れた古林と柳澤はDNFとなりました。
個人総合成績はチームTTで大きく差を付けられてしまうので、個人の実力が見えにくいのですが、細田は初日の単独落車が無ければ連日メイン集団でフィニッシュしており、また最終日は逃げに加わるなど健闘を見せました。
小野寺は昨年ベストヤングライダー賞を獲得しているものの、昨年付いて行くのが精一杯だったBellegemでのステージで今年は勝ち逃げに乗るなど成長を確認する事ができました。福田はスプリントでの集団の位置取りなどテクニックを見せ、成績も残せましたが、今後は逃げに加わることにも積極的にチャレンジして欲しいと思います。小集団での逃げを決めて、そこからのスプリントであれば勝率はぐっと上がると思います。横田は初日の落車後のチームカーを利用しながらの集団復帰は素晴らしかった。これはイタリアで経験を積んでいるアドバンテージ。古林と柳澤はリタイヤとなってしまったが、日本でも可能な限り多くレースで経験を積んで欲しいと思います。

リザルト/個人総合成績
14位 福田 圭晃
19位 横田 エンツォ
46位 細田 悠太
70位 小野寺 慶
DNF 古林 一夢、柳澤 創

8月23日
Langemark Madonna ジュニア 82.5km 出走40名

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1周目から単独で飛び出し約2周を逃げ続けた花田

1周目にベルギーの選手が単独で集団を抜け出し、それに追随する形で花田が単独で飛び出したが、ベルギー選手は千切れ直ぐに単独となりました。花田は約2周を独走。次にオランダの選手が単独で飛び出し同じく1周半を独走。集団では泳がせつつ、横風区間ではペースが上がり、40名の集団は半分に分断された。8周目に花田、大町等を含む数名が集団でペースを上げ集団の人数を絞っていく。10周目、3名が飛び出したのを、花田、大町が追走。これに数名が反応し8名の先頭集団が決まった。
花田は大町と話をし「自分はゴールスプリントでは絡めない。(大町にスプリントを託すべく)周りの選手に脚を使わせたい」と言う判断でアタックを繰り返すが数秒先行するのみで他の選手たちにダメージを与える事はできなかった。大町はこれまでスプリントを得意としていなかったが、パイオニアのペダリングモニターのデータを見る限り、スプリンターとしても十分通用する「パワー」を持っている。「スプリントでの勝負も課題」としていたため、スプリントにチャレンジしたが結果は伴わなかった。
前回のLessinのレースでは双方が連携を取ることなくレースを終えてしまったが、今回は戦略的には未熟ではあったが、レース中に話し合いチャレンジし、レース後にまた筆者も含めて「どうしたら良かったのか?」タラレバの話し合いを行った。U23やエリートのカテゴリーになるとレベルが一気に上がり、U23の1年目では「勝ち負けに拘った勝負」の話し合いを行うことができない。ジュニアカテゴリーで海外も含めた同世代のトップクラスの選手達と勝負に絡むことは今後の彼らのステップにとても大きな影響を与えると思う。鈴木、山岸はレース中盤、中切れした集団を牽引し、降り出しに戻す動きがあった。それだけの脚があるのであれば、自信を持って前で展開し、「追う事」よりも「逃げる事」を意識しなくてはならないと伝えた。

14
花田のアシストを受けながらも8名のスプリントで4位に終った大町。アシストを行なう選手、アシストを受ける選手共に機能的な動きは出来なかったが、チャレンジできた事は大きな経験であった

リザルト
4位 大町 健斗
5位 花田 聖誠
16位 山岸 大地
18位 鈴木 史竜

Kortemark Edwalle 
ジュニア 出走43名 83km

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先頭集団に加わった山岸。初めて加わった逃げグループが勝ち逃げとなり、いよいよ逃げが決まった最終周回に落車。平静な精神状態を保つ事は難しかったと思う。今後はレース中の落車においても、注意喚起を積極的に行う必要性を感じました。

2日前のレースで「追う」ことよりも「逃げる」ことを意識するように伝えたのだが、山岸がその期待に応えてくれました。
レース序盤に決まった5名の逃げが決まった。レース中盤に集団から5名が追撃しそこに山岸が加わった。追撃の5名は前を行く5名と合流し、10名の先頭集団が決まった。しかし最終周回に入り下り区間で山岸が落車。後続の選手を巻き込んでしまう。山岸が9位でフィニッシュした事は自信にして欲しいし、彼の正しい評価にもなりますが、この落車は防ぐ事のできる落車でしたし、リスクを負う場面でもありませんでした。レース中の落車については今後の課題とします。

リザルト
9位 山岸 大地
11位 花田 聖誠
30位 鈴木 史竜
DNF 大町 健斗

8月28日
WOUBRECHTEGEM for U17 67km 出走63名

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ラスト20km。決まったかに見えた福田を含めた10名のエスケープグループだったが最終周回に分断。福田は集団に吸収された

序盤から集団は活性化し、アタックが繰り返された。アカデミーの選手達もそれに追随する動きを見せるが、決定的な逃げグループは決まらない。ラスト3周に5名が集団を抜け出し、それを追走する5名に福田が加わった。ラスト2周に入り福田を含めた10名が先頭集団を形成した。後続の集団では小野寺を含む数名がメイン集団を積極的に引いていたので、「待ち」の指示を出した。最終周回に入ると先頭集団はから3名がアタック。数秒を先行。福田を含めた残りのメンバーは集団に吸収された。集団スプリントも予測されたが、メイン集団からNAUDTS Thomasが強力なアタック。集団スプリントに備えてポジションを上げていた細田が反応した。2名は3名と合流し残り4kmを逃げ切った。細田はスプリントでは先行するNAUDTS Thomasを捕らえる事は出来なかったが2位に入賞した。また、後続のメイン集団から飛び出した5名に古林が加わり9位に入賞した。これまで細田はアカデミーの期間中内容の良いレースはあったが結果を残す事ができなかった。今回の成績は内容も素晴らしいものであり、今後の成長と活躍を期待したい。
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最終周回にアタックに反応し先頭集団に残り2位でフィニッシュした細田。左から2番目

リザルト
2位 細田 悠太
9位 古林 一夢
14位 福田 圭晃
35位 小野寺 慶
40位 柳澤 創


主な上位入賞者は下記の通り

8月5日
Manzele Opwijk ジュニア 出走53名 81km
6位 花田 聖誠

8月13日
Heestert  U17 出走96名 70km
2位 小野寺 慶

8月16日
BRASSCHAAT U17 出走29名 55km
4位 小野寺 慶
7位 柳澤 創
8位 福田 圭晃

8月17日
Lessines ジュニア 出走52名 82km
10位 大町 健斗

8月23日
Langemark-Madonna ジュニア 出走40名 82.5km
4位 大町 健斗
5位 花田 聖誠

8月25日
Kortemark Edewalle ジュニア 出走43名 83km
9位 山岸 大地

8月29日WOUBRECHTEGEM U17 出走63名 67km
2位 細田 悠太
9位 古林 一夢

(写真と文:橋川健)

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