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2018年01月05日

第14回Mt.富士ヒルクライムチャンピオン 兼松大和さんのヘルオブマリアナ参戦記

12月2日(土)、サイパンで開催されたヘルオブマリアナに第14回Mt.富士ヒルクライムのチャンピオンとして招待を受けた兼松大和さん。
初めての海外レースだという兼松さんのレースレポートをお届けします。


 

6時15分、ヘルオブマリアナ スタート!

3時に起床するも、胃の状態が……。腹は空いていないが、かなり消耗しそうなレースなので、無理やりパンを食べる。5時30分にホテルを出て、スタート地点に移動する。あたりは真っ暗! スタート位置は、宿泊しているマリアナリゾートホテルの目の前なので、すぐに到着。路面が少し濡れているが、雨は降らなさそうとのこと。
空気圧は悩んだが、前日の試走より、0.2barずつ上げ、フロント 7bar、リア 7.2barにした。ここで森本さんとも合流した。6時にスタートだと思っていたら、6時15分スタートだったので、軽く流して走ったり、雑談をして過ごす。そして、10分前ぐらいから整列開始。先頭を無事にキープできて、一安心。
森本さんと、昨日知り合った中尾さんとともに並ぶ。セブンイレブンの金子さんは行方不明。まぁ、どっかにいるはず(笑)。

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森本さんらと最前列でスタートを待つ

撮影のためドローンが上空へと飛び上がり、まわりもスタートに向けて空気が変わり始める。100㎏は越えるであろうレースディレクターが、英語でガンガンしゃべりだして、いよいよカウントダウンが始まった。
10・9・8……3・2・1、「プワァ~!」っとラッパのような音でレースがスタート。直後いきなり白いジャージの選手(韓国か香港の選手)がファーストアタック!
私はこのレースを経験している森本さんの動きに合わせて走ることを序盤の戦略としていた(戦略でも何でもないが、森本さんが遅れることは考えにくいので、UCIレースで勝つようなフィリピン選手やイタリアのプロ選手など外国人に気を取られず、森本さんだけを意識していた)。

ちなみに、ヘルオブマリアナは、UCIレースではなく、サイパンを盛り上げよう! という感じのローカルレース。私や森本さんのように、大会を盛り上げるためにフィリピンの強豪チームも招待されている。このレースの優勝賞金は20万ドル。この額はフィリピンのプロ選手の年収ぐらいの額らしい。そんなわけで招待チームのフィリピンセブンイレブン(金子さんも所属)は、アジアUCIレースで勝つような選手を連れてきているとのこと。どうやらフィリピンロードレース界の英雄と言われている選手も来ているらしい。

私は優勝なんて微塵も考えていないし、入賞だってできるはずがない! と最初から思っている。8月の乗鞍以降は適当に乗っていただけだからだ。さすがに富士ヒルのチャンピオンとして招待されているのに、まったくレースに絡む走りが出来ないと恥さらしのような気がして、11月に焦って走りこんではいるが……。
一応先頭で走りたいし、海外プロ選手と戦える貴重な機会なので、行けるところまで頑張ろうと決めていた。そんな私の気持ちとは違って、森本さんは確実に優勝を狙っているし、中尾さんも狙っている感じ。そんな二人と走るので、つべこべ言わずに頑張ることにした!

勘違いしてはならないのは、このヘルオブマリアナは、ガチなレース志向で上位を狙って挑んでいる選手ばかりでなく、完走を目的に参加されている人もたくさんいる。仲間との自転車旅行って感じの参加者の方がむしろ多数派だ。景色を楽しみながらファンライドするのであれば、最高のレースだと思う。

 

レース序盤からアタックの応酬!

話をレースに戻したい。スタートして2分後にレーダータワーに向かって最初のヒルクライムが開始! 先頭から5番目ぐらいで上り始める。先頭は、日本が誇るヒルクライマーの森本さん! なかなかのペースで上っている。入りの2分ぐらいは400Wを越えるペースなので、森本さんの前に出た選手も結局下がってしまう。前へ出ようとするフィリピン選手を出させないための作戦のようだ。少し落ち着いても350Wぐらいで、引き続ける森本さん。
6分ぐらい経ったあたりで、勾配が緩み、出力も300Wぐらいに落ち着いて、そこからは300W前後で走っていた。意外と私は余裕だったが、周りの選手を見るとゼエゼエ言っている人が多くて、少し安心。結局レーダータワーの上りでは、ずっと森本さんが引き続けていた。
上りのピークに近づくと、ロシアのアレックスがアタックしたので、反応しなくて良いのに反応してしまい、少し先頭で走ってしまった。序盤は前に出ないつもりだったのに……。そんなこんなで12分ぐらいのヒルクライムは無事に終了。

下りでは、全員がかなり慎重に下る。私も4番手ぐらいで下る。途中でフィリピンの選手が下りで抜き去って行ったが、全く気にしない。前方で走っていると色々とマージンが得れるので安心だ。峠を下りきると、前日に試走した島の北側のスーサイドクリフ方面へ走る。ここで、まわりを確認したら20名ぐらいの集団。昨年はこの時点で10名を下回っていたという話だったのに……。
北側に向かう平坦区間に入ると、集団はフィリピンの選手がアタックしては反応して吸収して、イタリアの選手がアタックしては反応して吸収して……を何度も何度も繰り返す。前から5番手以内をつねに走っていたので、この時に無駄にアタック毎に反応してしまい、脚を削ってしまう。やはり500Wを越える負荷で対応しないといけないスピードの上げ下げには、かなり弱い……完全にウィークポイントだ……。早く上りに入れ! と思いながら走っていた。
アタックが決まらないので、途中でイタリアの選手がアタックした振りをして急ブレーキ掛けたりして、すぐにチェックに入るフィリピン選手への嫌がらせを行っていた。イタリア選手、フィリピン選手、私の順だったので、ハスりそうになり焦る。「何すんねん!」って感じでフィリピンの選手がイタリア選手に話しかけていたが、イタリア選手は笑ってフィリピンの選手の肩を叩いていた。これが世界のレースなのか? 良く分からないが、かなり殺伐とした感じだ。

森本さんもつねに前方に位置しており、スーサイドクリフの上りに備えている。ここで、中尾さんも前に上がってきて、ローテーションに加わり始める。事前情報では、スーサイドクリフの上りでアタックが頻発して、トップ争いが5人前後に絞られるらしいので、後方での対応はリスキーだ。アタックして加速したと思えば緩んだり……というのを繰り返しつつ、前半の重要な勝負どころとなるスーサイドクリフの上りへ。待ってましたと言わんばかりに、森本さんが前を引き始める。ここは森本さんにお任せして、私は淡々と走ることに。
森本さんは「スーサイドクリフの上りで人数を削っておかないと後半の戦いがきつくなる!」と言っていたのだが、その言葉通りの良いペース。まさしくセレクションが始まったといった感じ。森本さんが引いているなかでもフィリピンの選手がアタックを仕掛けたりするので、上りでもペースの上げ下げがある。ただ、まわりの選手より私は余裕を残せている雰囲気だ。上りでは、そこまで外国のプロ選手にも引けをとらないで走れるのだと思った(アタックには弱いけど……)。

と、ここであることに気づく。フィリピンの選手はみんな同じに見えていたけど、アタックする選手が交互だった! 平坦でもおそらく交互にアタックしていたよう。フィリピン勢は、チームとして戦っている! しかも、セブンイレブンとネイビーという2つのチームが連携しているよう!
フィリピン勢が数にものを言わせて、アタックをしてくるのに対し、毎回おもに日本勢が反応している……。後手後手に回ってしまっている日本チーム……。ここで少しネガティブな気持ちに。下りをクリアしたら、平坦区間が10㎞ぐらい続くので、これでレースの半分は先頭集団で走れる。とにかく、フィリピンの選手の動きに注意しながら、平坦区間でチームジャパンで相談しなければ! と考えながら集中して走った。

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北側へ向かう平坦区間では、フィリピン選手とイタリア選手のアタックの応酬が
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スーサイドクリフまでの上り。落ち着いて集団内で走る

 

レースを決定づける動き、後手に回ってしまうチームジャパン

スーサイドクリフを上りきり、Uターンで来た道を下る。かなりスリッピーなので、どの選手も慎重だ。Uターンの時に人数を確認すると、10名前後になっていた。この上りで10名ぐらいが脱落したようだ。
無事に下りもクリアして、平坦基調でアップダウンのあるバンザイクリフ方面へ。私が先頭を引いていると、小さい上りの丘が現れた。負荷を上げる必要もないし、この後の平坦に備えてスポーツ羊羹をモグモグしながら走っていると、左からフィリピン勢の一人がかっ飛んでいった! すぐに、もう1名フィリピン選手が対応して追いかける!
毎回反応していたので、誰かが反応するだろうと思っていたが誰も追いかけない。えっ!?と思って、慌てて踏んでも、明らかに対応が遅すぎた……。完全にやらかした! 他の選手も同じ気持ちではなかったのではないだろうか? あっさりとフィリピンの2名を逃がしてしまった。

まぁ集団は10名ほどいるし、平坦で吸収できるだろうと、このときは思っていたが、大間違い。結局この2人が最後まで逃げ切ることに(レース後の反省会で「あのアタックは兼松さんか中尾さんに行ってもらえれれば、展開が大きく変わっただろうな~」と森本さんが話していた。確かにその通り。それまで上りで一本引きし続けてきた森本さんではなく、私か中尾さんがきっちり対応すべきであった……)。

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バンザイクリフへ向かう途中。逃がしてしまったフィリピンの2選手とすれ違う

バンザイクリフをUターンして、スピードを上げて追走しようとする。ここで初めてセブンイレブンの金子さんを発見。日本人選手4名が先頭で集団を牽引すると、ローテを終えた後に金子選手がフィリピンの選手と何か口論している。その後すぐにやって来た金子さんのローテの時に、先頭なのに露骨に減速する。えっ!?と思ったが、チームメイトが逃げているのに、何で前を引くんだ!ってフィリピンの選手と言い合っていたよう。そりゃたしかにそうだ。

ここからローテーションが全然回らない。香港の選手と森本さん・中尾さん・私しか先頭を走らない厳しい状況……。フィリピンの選手は前に出た瞬間に減速したり、すぐに掃けていく。平地をしばらく走ってたら、森本さんが話しかけてきた。
「兼松さん、これは良くない!イタリア人とアレックス(ロシア)がローテに入ってない! そして、例年よりレベルが高い!!」と。
必死に走っていたので、もうしゃ~ないわ!という感じでひたすら前を引いていたのだが、言われてみればたしかに単騎参戦の2人が全然ローテに入ってない。 振り返ってみると、フィリピンの選手の後ろでヒラヒラしていた。
先頭から離脱して、減速して後方へ下がり、前に行け!と日本語できつめに言ったら、イタリアの選手は前にスーッっと上がって行って、ローテに加わるようになった。
しかしロシアのアレックスは、全くの無視! 横に並んで、GO!GO!と発破をかけても無視! 昨年の龍太郎のレースレポでも、アレックスが全く前に出ないことが記されていたけど、その通りだった。

そんなこんなでローテを回すのは、日本人3名、香港の選手、韓国の選手、イタリアの選手の6名ぐらい。そのなかでもおもに日本人3名でローテを回す感じになる。なかなかの強度であり、先頭に出たら300W以上で踏み続けるような状況だ。残り6名ぐらいは、後方待機。これからアップダウンが連続する山岳に突入することを考えると、あまり踏み続けるメリットを感じなくなってきた。集団の後ろではフィリピンの選手が前に出ることなく温存しているし、組織的なアタックをかけ続けられると、確実にやられる……。
集団の意志も「前の2人に追いつこう!」という感じではなくなっており、けん制なども入ったりして、ペースも上がらない……少し気持ちが萎え始めた矢先に、さらに気持ちが萎える出来事が起こった。
「パンクだっ!終わった!先に行って下さい!」
私の前を走る森本さんがそう言って、左に外れて行った。ますます不利になる、日本!

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逃げた2名を追うべく先頭を固める日本選手

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ロシアのアレックスに声をかけるも、無視された……

 

チームジャパンを襲う不運

中尾さんとは、ほぼしゃべったことがないし、連携もうまくとれないだろう。でも、私より強いのは間違いないし、どうせ私はアップダウンが続く山岳のアタックで千切られるのだから、それまで前々で頑張ろうと気持ちを引き締める。
平坦区間が終わりを迎え、後半の上りに突入。アップダウンというより、アップ後に平地、アップ後に平地という感じ。すると、ここぞとばかりにフィリピンの選手2名がアタックしてきた。切れ味が全然違う! 一瞬で離される。前々に位置している私は、そんな切れ味はないが、ペースでなら追える感じだったので、きついが400Wぐらいで上りを走る。フィリピンの選手以外は、みんな上りが苦手そうだった。一息ついたら、またアタックされる! 吸収したら、またアタック!!絶望的に辛い……ペースで走らせてくれない……。

何回かアタックに反応したうちの1回で、突然ピキっと脚が攣りそうな気配に。これはこの後の長い上りで激しく揺さぶられたら終わりだ……と急に不安になる。周りを確認すると、フィリピンの選手4名と中尾さんと私。少し離れてアレックスがいる。アレックスのさらに後ろには、香港の選手2名とイタリアの選手と金子さんが千切れ気味だった。

そして、明らかに上ってるぞ~という区間を先頭で走っていると、左からフィリピンの選手2名がまたしてもアタック! しばらく追いかけて、ブラケットからトップバーに手を持ち替えて姿勢を変えた瞬間に、左脚が攣った! 急に踏めなくなったので「攣った!」と言って、左に避けて姿勢を変えて踏もうとすると、前輪がグニャっとして空気が抜けていることを知った。
中尾さんとアレックスと、もう1名が私の横を通り過ぎて行った……。ここで私のレースは終了しました。

 

誰か助けてください!

自転車を下りて、後ろから来るであろう車を待っていたのだが、なかなか来ず……。すると、警察車両が来て何やら英語で話しかけられ、パンクだということが何とか伝わった。のに、どこかへ行ってしまった……。ここでレース前にアドバイスをもらった龍太郎からのメール内容を思い出す。
「パンクしても助けてくれません!」
笑うしかなかった。車が来る気配がないので、トボトボ来た道を戻ることに。早く車に回収されたかった。でも、車は来ない。え、本当に放置!? と急に不安になる。異国の地で、しかも山の中で、放置!?(笑)  急ぎ足で、来た道を戻る。しかし、想像していたよりメインストリートより山道に入っており、峠を下った後の直線が永遠に感じる。しかも気温が上がっており、陽射しが強く一直線に続く道路の先が蜃気楼になっている。

レースに出走している選手に何人か抜かれた。「オオォォ~!!!」とか言って駆け抜けていく。おおぉ~!!じゃなくて ホイールをくれ(笑)。 ようやく一台の車が来たのだが、明らかに一般車。運転手さんが下りてきてくれて、「大丈夫かい!?」って聞いてくれた。そして、良く分からないことをたくさん話してくれて、心配そうに困った顔をしてくれた。「OK!OK!」と返事をして、「サンキュー!サンキュー!」と言ったら、不安そうに走って行った。とくに何かをしてくれたわけではないが、地元の方の親切心だけで、気持ちが楽になった。

そんなこんなをしているとレース参加者が、私の横を走り去る際に何かを放り投げた! 放り投げたものはコロコロ転がって草むらへ。取りに行くと、小さいボトルに入ったヴィットリアのシーラントだった。めっちゃええやつやん!
先っちょにチューブみたいなのが付いていて、バルブを緩めて、突き刺して、手でグイっと握ったら、漏れながらも中にシーラントが入って行った。……シーラント入れても、空気が入らない! 喜んで損した……。
もう、どうとでもなれって感じで引き続きトボトボ歩く。すると、日本人女性の中原恭恵さんが男性集団のパックに入って走ってくる。
「どうしたの!?」と聞かれたので、「パンク!!」と答えると、「ええぇ~!」って言いながら消えて行った。助けてよ(笑)。

引き続き歩く。もう30分ぐらい歩いたんじゃないだろうか? すると青いランプをクルクルさせた車がやって来て、私を見つけて路肩に車を停めた。何やらしゃべっているが、さっぱり分からない。パンク!エアーポンプ、エアーポンプ!って言うと、車からポンプを出してくれて、フロントタイヤに空気を入れてくれた。シーラント液がタイヤから小さく出てきたので、指で押さえて、穴を下に向けて、ちょっと待ちぼうけ。シーラントが出なくなり恐る恐る走り出してみると、走れそうだったので、再出発!

 

フィニッシュに向けレース再開! 

これで、完走できる!(ちなみに、パンクで停車していた時間は約16分でした。30分以上経っていると思ったいたが、完全に勘違い。そう感じるぐらい長くつらい時間でした)しばらく走ると、中原さんの集団をパス!
パスすると同時に「あぁ~!ちょっと待ってぇ~!」と中原さんが言うので、どうせ私のレースは終わったのだから、中原さんを引っ張ってあげることに。しばらく、250Wぐらいで走っていると、その集団7名ぐらいがしっかりついて来る。よしよし、ついて来い!という感じで、しばらく走っていると、上りの勾配がきつくなってきた。すると、中原さんが苦しそう。何度か「行ける!?」と確認すると、「ギリギリ」と息を切らしながら答えてくれる。これは無理そうだと思い、ペースを下げて走る。よく見ると、彼女は右脚・肘などからかなり出血していた。落車に巻き込まれたらしい……辛いな……。

ペースを落として走っていても、上り続けているので、かなり苦しそう。15分ぐらい一緒に走ったのだが、私も走りたくてウズウズして来たので、お別れを告げて先に行くことに。前に追いつくこともないだろうし、上りごとにインターバル練習って感じでフィリピンの選手のようなアタック練習をしたりしてみる。しばらくすると脚が再び攣り始めて、やっぱりもう駄目だわ!という感じになり、景色を楽しみながら、まぁまぁの負荷で走る。すると、ラオラオベイに向かう途中で、折り返してきた先頭集団にすれ違った。

先頭2名のフィリピンの選手は、元気モリモリっといった様子で、良いスピードで駆け抜けていく。その後の追走2名のフィリピンの選手も、追走しているぞ! と言わんばかりに元気に走り去って行く。5人目は、なんとアレックス! 次に、香港の選手、フィリピンの選手と中尾さん!
「頑張れ!」と大声で叫んだが、中尾さんの憔悴しきった感じが印象に残った。全て使い切った感じで、上れていない雰囲気だった。その後、数名とクロスしてから、金子さんともすれ違う。中尾さんの比じゃないクタバリっぷりでした(笑)。

しばらく走ると意外とすぐにUターンが来た。あれっ、追いついてる!と驚く(30分ぐらいロスしていると思っていたから、なおさら)。よし、頑張って追いつこう! と気持ちを切り替えて、負荷を上げようとするも、無駄にインターバル練習してしまったので脚が終わっていた……。Uターンしてすぐに、パンク修理を終えた森本さんが後ろからやって来た! すぐに追いつかれ、少し話しをしながら並走したけれど、上りのスピードが違い過ぎて千切られた……。その後、平地に入りガシガシ踏んでいると、前から落ちてきた香港の選手とグアムの選手を捕まえる。残り11km。ローテを促すも、「ノー!」と言って引いてくれない。しょうがない頑張って走るかと練習モードに切り替え、一生懸命ひたすら先頭で走る。

すると、またしても脚がピキピキと……。補給をし、しばらくしたら、また回復してきたので、再び先頭を走る。途中からグアムの選手も引いてくれるようになった。1人で走るより、はるかに楽だ。休めるタイミングがあるのは、大きい。ゴールが近づくと急に不安に。この二人は、ゴール前で自分を千切ったりするのかな? これだけ平地を引いていて、そんなことするのかな? 考えても分からないので、考えないことにした。どうせ上位は狙えないし、順位が入れ替わっても一緒だ。もしスプリントされても、まぁそれはそれで仕方ないかと前で頑張る。

そして、ゴールが見えてきた。すると、香港の選手が握手を求めて来て「You are so strong」と声をかけてくれた。グアムの選手も同じように、そう褒めてくれた! たぶんだが「良く追いついたね!」みたいなことをしゃべっていたと思う。そして、前に行って下さい!といった感じで前に行かされた。そう言ってくれたことが嬉しくて、心が震えた!
「ノーノーノー!」と言って、一番苦しそうだった香港の選手を真ん中に挟んで、私が左手を彼の右肩に回す。すると、グアムの選手もジェスチャーだけで察してくれたのか、仲良く三人でゴールしたのだ。とても気持ちの良いゴールだった。

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グアムの選手、香港の選手と肩を組み3人でフィニッシュ!

 

ロードレースの醍醐味と海外レースの楽しさが詰まった115km

ということで、ヘルオブマリアナを無事に完走しました。例年より参加者のレベルが上がっており、フィリピンの組織的な攻撃を受け、ロードレースの醍醐味を感じることが出来た序盤。ちょっとした気の緩みから、逃げを許してしまい、平地を高速で走り抜け、先頭集団で苦しいながらも走っていたが、無念にも65km地点でパンクしてしまった。奇跡的にシーラントを手に入れ、空気も入れることができ、レース復帰できた中盤。復帰後も、中原選手と走ったり、景色を楽しんだり、攣りながらも最後まで走り切った終盤。
最後には、言葉の壁を越えてスポーツを通して心が通じ合い、最高の笑顔でゴールできました。ヘルオブマリアナ、最高でした! また、やっぱりロードレーサーとして強くなりたいとも思いました。森本さんのように、ヒルクライムも強く、ロードレースも強い選手になりたいなぁと。2016年、2017年の富士ヒルの1位・2位の森本&兼松ペア! 仲良くパンクでした(笑)。

それにしても、疲れたレース。本当にヘルでした! 中尾さんは9位と何とか粘って走り切ってくれました。素晴らしい!何の役にも立てず申し訳ない……。肝心なところで消えてしまったことが悔やまれる。それにしてもレース全体を通して、フィリピン勢の本気度が伺えました。そりゃ、1レースの賞金が年収なら、プロが本気を出すはずだ。ということで、上位は、フィリピンばっかり(笑)。そしてロシアのアレックスは、ちゃっかり5位で入賞してる(笑)。やるなぁ! 来年も出ることができるのであれば、ちゃんと役割も決めて、エースを守る走りして、チームジャパンとして戦いたい! そう思えるレースでした。

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レース後、森本さんとレース展開を反省。今回は悔しい結果となりました
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上位はフィリピン勢が独占(ロシアのアレックスもちゃっかり入賞している……)! 来年こそは日本チームから優勝者を!

レース全体のデータは以下の内容です。

==============
走行時間:3h27m06
走行距離:115.36km
獲得標高:1589.8m
TSS:213.9
消費エネルギー:2898kj
NP:244.9w
==============

本当に楽しかった。景色もコースも最高で、展開もたくさんあり、ロードレースのワクワクがギッシリ詰まっているすばらしいレースです!

(文/兼松大和、写真/編集部)

※兼松さんのブログ、「Changingman」では、ヘルオブマリアナのレース前後のレポートも掲載されています。併せてご確認ください!

2017 HELL OF THE MARIANAS ~旅行編~ → http://changingman.xyz/2017-hell-of-the-marianas-travel

2017 HELL OF THE MARIANAS ~試走編~ → http://changingman.xyz/2017-hell-of-the-marianas-testride

2017 HELL OF THE MARIANAS ~パーティー編~ → http://changingman.xyz/2017-hell-of-the-marianas-party

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