2017年03月17日
【ライダーズレポート】ライフワークになった Hell of the MARIANAS(イシムさん)
ライダーズレポートでは全国のサイクリストから寄せられたイベントレポートを紹介していきます。
今回は12月3日に開催された第10回Hell of the MARIANAS(ヘルオブマリアナ、以下 HOM)に8回目の出場を果たした石松克基さん(イシムさん)のレポートをお届けします。なお、昨年に引き続き、第14回Mt.富士ヒルクライム(http://www.fujihc.jp/)の男子選抜優勝者には第11回HOMの出場招待権が贈られる予定です。それではさっそくイシムさんのレポートスタート!
太平洋にぽつりと浮かぶ灼熱の孤島サイパン! 日本人旅行者も多く訪れるこの島で自転車ロードレース、第10回HOMが12月3日に行われました。僕はこの大会へのチャレンジは8回目を数え、海外の大会でありながら参加を続けています。今回は毎年参加したくなるHOMの様子と魅力についてご紹介します。2017年も同時期に開催が決定しているので、今のうちからカレンダーに予定を書き込んでおいてはいかがですか?
HOM・1日目
サイパンへ行くには成田空港AM10:25発のデルタ航空。昔はJAL便もあったのですが現在はこの1便のみ。選択肢がない分、旅程は組みやすいメリットもあります。
今年はレース前日の金曜日に出発しました。ところが早速空港でチェックインしようとしたらクレジットカードがない! いきなりのトラブルにあわててカード停止の手続きをして銀行窓口に駆け込みます。リスキーな現金勝負の旅になることが決定……。
それはそうと今回旅をご一緒するのは3年連続となる中村龍太郎選手(去年のHOMディフェンディングチャンピオン)と今回初めてお会いする福本千佳選手。デルタの機内は日本人CAが半分くらいでサービスには不都合はありません。機内食は和食で味は可もなく不可もなくって感じです。
沖縄へ行くのとほとんど変わらない3時間少々のフライトでサイパン国際空港に到着!
扉を出るとモワっ……とする熱気が! 12月の日本の気候に慣れている体が異世界の入り口を感じる瞬間です。海外レースへ参加する際に気になるバイクも無事に到着。今回輪行に利用したのはバイクサンド(http://bike-sand.com/)。ダンボールがクッションの役目をしてくれるその構造は過去3回使用していますがトラブルゼロでおすすめです。
現地の入国審査官には『HOMに参加だよ』と言うのが定番。この大会の知名度はとても高くおおむね愛想よく通してくれる……はずだったのですが今年はなぜか別室に連れて行かれて細かくボディチェックにバイクのX線検査。どうやら補給食を入れすぎたのが原因だったようです。『レースが終わったらこのバイクは君にプレゼントするよ』なんて話をしながらクリア。
宿泊ホテルはレースを協賛しているマリアナリゾート&スパ。今回メゾネットタイプの部屋をチョイスしたのでゆったりひろびろ50㎡超。これだけあるとバイクのセッティングも楽にできます。ホテルのエントランスのすぐ目の前が翌朝のレーススタート地点なので試走するもよし、ホテル内でプールを楽しんでもよし、到着日の過ごし方はご自由に。
僕はいつもバイクの調子を確かめるため試走をしに行きます。
ホテル内のエントリー受付会場ではやんちゃな同級生ボブや人懐っこいリッキーなど現地のお友達たちとの一年ぶりの再会を喜びます。島の方々はとても親日的でフレンドリー。英語がしゃべれなくてもなんとかなっちゃいます。
受付会場でMt.富士ヒルクライムの優勝枠で招待された山の神、森本 誠 選手と初対面。日本を代表する選手たちと密度の濃い3日間を過ごすことが出来るのも、この大会の魅力です。
一方でブリーフィングが17:00からのはずが突然16:00過ぎに始まっちゃったり、参加賞のTシャツも予約してたMサイズが全く準備されていないなど日本のイベントにはないゆるさ。これもまたサイパンらしい一面かもしれません。
レースエントリーは去年並みの200人弱だったようです。
夕食は近くの別のホテルで行われたマリアナ政府観光局主催の日本チーム歓迎会(シーフードナイツ)にご一緒させてもらいました。日本からの参加者が増えて欲しいという観光局長の気持ちのあらわれとのこと。パスタ中心に明日のレースに向けてのカーボローディング! 美味い食事に舌鼓を打ちながらビールは明日まで我慢、我慢……。
HOM・2日目
そしていよいよレース当日。うわっ雨だ! 朝5:00頃からスタート場所に設置された仮設テントで前日受け取れなかった選手にチップの配布が始まります。街灯もないのであたりは真っ暗闇。そして続々と集まる陽気な選手たち。
「ハイ!KATSUKI!」声をかけてくれる選手も。うーん、誰だっけな〜? Facebookで繋がってるだけの人のようでわからない、ごめんなさい! でもそんなことは関係なく、適当にホイールの話題で盛り上がっちゃいます。スタート時には幸い雨は収まったものの強い風が止みません。本来この時期は乾季なので天候が安定しているはずなのですが……。
僕の前に並ぶロシアのアレックスさんは腰に補給食のバナナ2本!以上! あたりが薄っすらと明るくなってきた6:15。最前列に並ぶ龍太郎さんや千佳さんとレースの無事を祈り、ドローンが飛びまわるなか、DJのコールで第10回HOMスタート!!
コースはサイパン島をぐるりと左回りに一周する約100kmの起伏に富んだ道のり。獲得標高は約1700m。しかしうち35kmは平坦なのでアップダウンが一部分に集中しているんです。森本さんいわくツール・ド・おきなわを凝縮した感じとか。
序盤は島の北西部の山岳区間。ここで最初のポイントはコース全体での最頂部(約300m)のレーダータワーへのヒルクライム。この坂の途中の家にいる放し飼いの犬から追っかけられるのが毎回恐怖なんですが今年はいい子にしてたようでほっと安心。朝からの雨で路面はウェットコンディション。トップ集団は一気に登坂してはるか彼方へ。
サイパンの道路は海砂や貝殻が混じっているため踏み込むとズリズリとすべります。濡れているとなおさらです。僕は3年前に別の場所の下りで落車して痛い目にあっているので慎重に、慎重に。
レーダータワーを下ったところで全体の20番手くらい? 次のポイントはスーサイドクリフ。ここは僕がサイパンで一番大好きな場所。マニャガハ島が見晴らせる絶景スポットです。
もちろんレース中は見る余裕なんてありませんが、きつい中にちらりちらりと視界に入るその風景が気持ちを癒してくれます。
そしてグロット、バードアイランド、バンザイクリフとサイパンの誇る各名所を折り返しながらレースは進みます。
折り返しごとに前後の選手との距離を測ることができるのも、このコースの特徴。そして各所に散らばる現地のボランティアの声援が本当に暖かいんです。
ラストコマンドポストの前を通過する選手たち。コースはサイパン島の各名所を巡ります
全体の20番ぐらいのグループでスーサイドクリフへと向かいます
大好きなスーサイドクリフからの眺め
気になる補給ですが、給水ポイントに点在するボランティアスタッフがボトルに入ったドリンクかミネラルウォーターを渡してくれます。今年は手厚かったのですが開催年によっては全然水が補給されないこともあるので2ボトルの方が良いかもしれません。ただし食料は無いので補給食の携行は必須です。
ちなみにボトルに入ったドリンクは強烈な色、多分現地で売ってる「チャモロパンチ」っていうジュースかと。これはウエアにかけると染色されて落ちません! ここまでで序盤の約35km。
中盤は西海岸を一気に南下する25kmの平坦区間。ここで単独走になるとつらいで自分と近い脚力の選手を探りながらこの区間に突入できるとベストです。今年は5人のトレインが組めたものの、うち2人がまったく引かず先頭交代は実牽質3人。顔を見ると、あ、去年も金魚のフン状態だった選手だ! この時期は貿易風の影響もあって北からの風が。この区間はこれがフォローとなり40~50km/hオーバーのペースになります。視界の右手には朝日を浴びるコバルトブルーの海と白い砂浜。
まだ早朝の繁華街ガラパンでは疾走する僕らを見てあっけにとられる観光客たち。路面に斜めに配置されたグレーチングや突如現れるカラーコーンには要注意です。そしてHOM誕生の地パシフィックアイランドホテルの前で平坦区間は終わりを告げます。(HOMはこのホテルの主催で始まった大会なんです)。ここまで約60km。
終盤に突入するとそこは島南東部の山岳区間。太陽が昇るにつれ日陰が消え去り気温はあっというまに30度オーバー。この区間はサイパン国際空港までのだらだら登坂や、ラオラオベイゴルフコース、キングフィッシャーゴルフコースをそれぞれ折り返す激坂区間、数年続いてて一向に終わらない幹線道路の工事区間(未舗装)などとバラエティに富んだ箇所がこれでもかとばかりに襲い掛かってくるんです。リヤのスプロケは11-28をチョイスしたんですが。11-32が本気で欲しくなる一瞬!
しかし、それよりもなによりも暑い、暑い〜! キンキンのビールが欲しい〜! そんなときボランティアスタッフでもない地元の方が4駆車の荷室に積んだクーラーボックスいっぱいのミネラルウォーターを走って手渡ししてくれたりもするんです。
時折見える海に晴れ渡る青空が恨めしい。そして島を東から西に縦断して再び西海岸に出ると最後の10kmは島を北上するストレート。もちろん序盤と逆行なので思いっきりアゲインストの風! これを耐えると向こうの方から『Mrイシマ~ツ~!ナンバー52~!』のDJの声が聞こえ、ゴール!!
やり遂げた感満載で感無量のひととき。タイムは3時間52分ちょい。ノントラブルで燃え尽きましたが自己ベストならず。
部屋にもどってシャワーを浴びたあとは楽しみにしていた13:00からのアワードパーティーへ。ホテルのプールサイドを使って行われ、ビールは飲み放題、食事は食べ放題、プールも泳ぎ放題!
我慢に我慢を続けたこの時のビールの味は『至福』の一言です。この一瞬のために8回も参加してくることができたといっても過言ではありません。
延々と続く表彰式にバンド演奏。チームジャパンのリザルトですが森本さんが2位! 龍太郎さんが5位! 千佳さんが女子2位! 表彰台を占めてくれました。ついでの僕は年代別ですが2位をいただいちゃいました。
参加者をリスペクトするという意味もあり、とにかく色んな賞が準備されており表彰が長いんです。これもこの大会の楽しいところ。身体のおっきな人のマナティカテゴリーなんてのや、MTBのリレーカテゴリーではなんと臨月なのに参加してた人や……(つい先日無事に産まれたそうです)。
優勝はフィリピンのナショナルチャンピオン。賞金1500ドルをさらって行きました。
次回は再びチームジャパンが優勝を! というところ大盛り上がりのアワードパーティは終了です。
そして夜はピックアップトラックの荷台に乗ってディナーへGO! 日本じゃ速攻捕まっちゃいますね。満天の星空を見上げながら到着したのは観光局オススメのチャモロ料理レストラン。
大皿で出てくるシーフードの数々、お恥ずかしながら8回目にして初めて現地料理を食べました。辛さはなく、日本人の舌に合いますよ〜!
そして初のサイパンビール。これは島の中腹の小屋で親子で仕込んでいるというローカルなクラフトビール。泡立ちが少ないためジョッキになみなみと注がれて出てきます。クセがなくこれもまたグイグイいけます! オススメ!
HOM・3日目
せっかくサイパンに来たのだからレースだけじゃもったいないというわけで朝から龍太郎さんと千佳さんと3人でグロットに行くことにしました。
森本さんはお腹壊しちゃってDNS。昨日はレースでヒーヒー言ってた場所で、今日はシュノーケリング。こんな楽しみ方ができるのもサイパンならではですね。
しかし、送迎のでっかいバンに乗った瞬間にどっしゃぶりのスコール! しかもこの車、窓がないのでジャンジャン降り込んできます。着替えも何もかも水没したところでグロットに到着。
子鹿状態でブルブル震えているとカラッ! 嘘みたいに快晴!
グロットは世界有数のダイビングのメッカで、外海から遮断された見事なまでの青い海中洞窟なんです。僕と龍太郎さんは2回目、千佳さんは初体験で飛び込みで躊躇するも見事にIN!レースで疲れた身体を海にまかせ、しばし贅沢なシュノーケリングを楽しみました。
その後はバードアイランドで記念撮影をしてホテルへ。 午前中はこのようにギリギリまでたっぷり遊んで午後の便で帰国の途へ、という2泊3日の旅がいつもの定番。
ちょっと慌ただしいなという方はもう一泊ゆっくりするのもいいかもしれません。 僕の自転車ライフの中でいつのまにかライフワークのようになってしまったこの大会、魅力が少しでも伝われば幸いです!
気になる旅費ですが、旅費+宿泊費+レースエントリーフィー60ドル+バイクのオーバーチャージ300ドル(往復)+お小遣い。
予約サイトによって上下はありますがだいたい15〜20万円弱かなと。僕は今回エクスペディアで予約しましたが次回は日本からのパックツアーが組まれるかもしれません。 最後にこのイベントで大変お世話になったマリアナ政府観光局のみなさん、レースをご一緒したチームジャパンの森本さんご夫婦、龍太郎さん、千佳さん、そして現地のスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。もちろん来年も戻ってきます!
世界でも有数のダイビングスポットである、グロット。海が青く輝きます
Hell of the MARIANAS(ヘルオブマリアナ)
https://www.facebook.com/HOMRace/ (大会フェイスブックページ)
常夏のロードレース 【10年目のヘル・オブ・マリアナ】→ https://funride.jp/report/10thhom/
「2015 ヘル オブ マリアナ」レースリポートby中村龍太郎 【前編】 → https://funride.jp/events/hom2015/
(文/石松克基さん、写真/編集部)
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(件名に「ライダーズレポート投稿」と明記ください。内容に関して編集部よりご連絡をさせていただく場合がございます。)
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。