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2017年01月12日

常夏のロードレース 【10年目のヘル・オブ・マリアナ】

ヘル・オブ・マリアナをご存知だろうか。
常夏のサイパンで毎年12月に行われるロードレースであり、ローカル感と手作り感溢れる雰囲気は、日本のサイクルイベントではなかなか味わえないものだ。運営スタッフも参加者もとにかく陽気で、お祭りムードが漂い何とも言えない魅力を放っている。

ロードレースであるため、先頭集団では毎年激しい優勝争いが繰り広げられるが、地元のサイクリストの多くは、レースの順位よりも自己ベストタイムを更新できたかどうかが重要のよう。ロードバイクはもちろんだが、MTBで参加するライダーも多い。

これまで、日本からは毎年優勝争いに絡むライダーが参加して、レースを盛り上げてきた。日本人による優勝は過去に2回。山本和弘さん(2013年)と中村龍太郎さん(2015年)がこのレースを制している。

10回目の開催となる今回は、6月に開催されたMt.富士ヒルクライムを制した森本 誠さんとディフェンディングチャンピオンの中村龍太郎さんが招待され、優勝を目指した。
記念大会らしく、ロシアや韓国、そしてフィリピンからもプロレーサーやトップアマチュアレーサーが集まり、優勝争いのレベルはおそらく過去最高。さらに、毎年優勝者に贈られる賞金は1000$から2000$に倍増。そんなところからも、激しいレース展開が予想された。

ちなみにヘル・オブ・マリアナは島一周を走る約100kmのロードレースである。サイパン島は小さな島で、周回するだけでは100kmのコースをとれないため、丘や海岸線沿いなど、折り返しも多く、結果として起伏に富むコースレイアウトになっている。獲得標高は1700mを超える。島内の名所を巡るように走れることも、このレースの魅力の1つといえる。

 

日本人選手の結果はいかに、レースの火蓋が切って落とされる

 

12月3日(土)、午前6時。まだ朝陽は上りきらず、薄明りのなかスタート地点に選手たちが集まる。今年の参加者は約170名。有力選手は列の前方に集まり、スタートのときを待つ。今回で3回目の出場となる中村龍太郎さんは過去に優勝を争った他国の選手たちと、お互いの健闘を誓い合い、そして再会を喜ぶ言葉を交わす姿も見られた。午前6時15分、レースの名物となっているMCの絶叫とともにレーススタート。それぞれの目標を胸に、選手たちはコースへと飛び出していった。

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最前列でスタートの時を待つ中村龍太郎さん、福本千佳さん、森本誠さん(左から)

ヘル・オブ・マリアナは毎年コースレイアウトに若干の変更が加えられるケースが多い。今回一番の変更点は、例年終盤の勝負どころであったレーダータワーへの上り(2km・平均勾配10%)が序盤に移された点だ。コース最初の上りが、この激坂区間になったことから、先頭集団は一気にメンバーが絞り込まれることに。森本さん、中村さんの日本人2名に加え、ロシアの2人とフィリピンの2人が集団を形成し、島の南側のアップダウンへ向かった。バンザイクリフへの長い上りでも集団はばらけることはなく、ハイスピードで進んでいく。日本人の2人がつねに先頭付近をキープして、積極的にレースを引っ張っている印象だ。

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積極的に集団をコントロールする日本人の2人

 

中盤までは集団のままレースが進行するかに見えた矢先、バンザイクリフからの下りで、フィリピンのJOHN PAUL MORALESさんが落車、滑ってきたバイクに足元をすくわれる形で中村さんも落車してしまう。

素早くリスタートを切った中村さんは、海岸沿いの平坦区間の前に先頭集団に復帰。その少し前にロシア人選手が1人遅れ、先頭は4人となった。前輪が壊れ、リスタートに時間を要したフィリピンのJOHN PAUL MORALESさんの集団復帰は厳しそうで、優勝争いは4名に絞られたかのように見えたが、平坦区間が終わるころには先頭に復帰していた。レースは後半戦。先頭集団は5名。

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落車した中村さんが先頭集団に復帰。森本さんにそのことを伝えるDSC_0656
給水ポイントでドリンクを受け取る2人。このあたりで先頭集団は5名にDSC_0277
先頭集団はばらけることなく、レースは後半戦へ

 

 

レースは終盤に決定的な動きが生まれる

 

レース後半は島の北側を行く。ラオラオベイとキングフィッシャーという2つのゴルフコースへ向かう、スケールの大きなアップダウンが勝負所。

「フィリピンの2人が積極的に動き、順番にアタックをしてきたので、森本さんと担当を決めてしっかりマークするようにしていました」とレース後の中村さん。

決定的な動きがないまま、ラオラオベイを折り返し、キングフィッシャーへと向かう途中、残り約20km地点で、フィリピンのJOHN PAUL MORALESさんが、するすると抜け出し、これを森本さんがチェック。2人と残りの3人との間が徐々に広がる。

「もともと自分も勝負所と捉えていたところで、フィリピンの選手が抜け出したため、ここだと思い一緒に先行しました」と森本さん。ラオラオベイの上りを2人でこなした、森本さんとJOHN PAUL MORALESさんの2人逃げは決定的なものに。勝負は最後の直線区間で決することとなった。

 

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ダイナミックなアップダウンが続く後半戦DSC_0407DSC_0379
優勝争いは2人のライダーに絞られることに

 

レーススタートから3時間4分後、フィニッシュ地点に先に姿をあらわしたのは、フィリピンのJOHN PAUL MORALESさん。前半大きな落車をしながらも劇的な勝利を飾った。遅れること40秒。森本さんが2位でフィニッシュ。

「終盤に脚がなくなり、先行を許してしまった。地力で負けてしまった」と悔しさをのぞかせた。

追走集団で走っていた中村さんは5位でフィニッシュ。
各選手暑さに加えて、今回は強風に苦しめられたようで、優勝者のフィニッシュタイムは例年よりも約15分ほど遅かった。

 

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優勝はフィリピンのJOHN PAUL MORALESさんDSC_0432
遅れること40秒。森本さんが会場に姿を現した。表情に悔しさを滲ませるDSC_0467
ディフェンディングチャンピオンの中村さんは5位でフィニッシュ

 

レースのあとはお祭り騒ぎ

 

今年は残念ながら、日本人選手による優勝は成し遂げられなかったが、先頭集団に日本人が2名いて、チーム戦を繰り広げられたのは今回が初めて。後日、森本誠さんと中村龍太郎さんのレース直後の対談をお届けする予定なので、お楽しみに。

さて、サイパンを舞台に繰り広げられたガチンコ勝負のあとは、毎年恒例のアフターパーティが13時より開始。飲み放題、食べ放題のブッフェスタイルは例年と変わらないが、表彰式のほかに今年は地元のミュージシャンや子どもたちの催しも。アフターパーティは誰もが認める過去最長3時間を記録。ほとんどの参加者が酔っ払いになっていたことは想像に難くない。森本さんや中村さんは地元の人たちから健闘を祝福され、各国のメディアからも取材を受けていた。

リゾート地であるサイパンでは、レース後はもちろん観光も楽しめる。毎年ロードレースシーズンの最終盤に開催されるので、1年の締めくくりとして参加してみるのも良いだろう。

毎年日本人参加者は同じ日本チームとして、試走したり、アフターパーティを楽しんだりすることが多い。来年はぜひ参加してみてはいかがだろうか。

 

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アフターパーティ会場では、地元子どもたちによるダンスが披露されたDSC_0611
日本人参加者たちで乾杯!DSC_0594
レース後はマッサージのサービスを受けることもできるDSC_0763
男子総合の表彰式DSC_0798
女子総合では、福本千佳さんが3位に

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ヘル・オブ・マリアナ 大会HP ⇒ http://www.hellofthemarianascnmi.com/jp/

大会公式映像

 


ヘル・オブ・マリアナ 参加者向けおすすめスポット


 

■ ジョーテン・ハファ・ダイ ショッピングセンター

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サイパンの中心地であるガラパン地域には、おみやげ屋さんや飲食店が立ち並ぶ。その中で最大規模のスーパーマーケットが「ジョーテン・ハファ・ダイ ショッピングセンター」だ。地元の人も利用するこのスーパーマーケットでは、補給食になりそうなフード類やドリンクを手に入れることができる。
日本では見かけない商品も多く、ぶらぶら店内を歩いているだけでも楽しい。33年間この店に務める日本人スタッフの伊藤さんもいるので、英語に不安のある方も安心だ。

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アメリカンサイズな食品がずらっと並ぶ店内
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日本人スタッフの伊藤さん。普段はギフトコーナーにいることが多いそう

住所:P.O Box 137, Saipan

営業時間:8~23時(年中無休)


 

サイパン バイクプロ

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サイパンに数店舗あるバイクショップの1つ。海外イベント参加の際に不安なバイクのトラブルも、現地のバイクショップの場所を覚えておけば安心だ。
日本では手に入れることのできない、ウエアや小物類を見つけられるかもしれないのも海外ショップを訪ねる楽しみのひとつ。サイパンバイクプロでは、マウンテンバイクのレンタルも行っている(25$~/日)

住所:96950 Saipan  Oleai Beach Road 

営業日:月~土(日曜は定休日)


サイパンへは直行便で三時間半!

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サイパンへはデルタ航空が成田空港から毎日直行便を運航しているので、アクセス良好! 約3時間半のフライトで、時差も1時間なので、初めての海外イベント参加におすすめだ。

(取材協力/マリアナ政府観光局)

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