2016年07月06日
ROTORの新型パワーメーター 【2INPOWER】詳報
すでにweb界隈では話題となっているローターの新型パワーメーター、2INPOWER(ツインパワー)の国内プレスローンチが開かれたので詳報をお伝えしよう。アクスルシャフト内にセンサーを内蔵した「INPOWER」をベースに 左右独立したパワー計測が可能になった。楕円チェーンリングはペダリング効率を改善するために生み出されたが、パワーメーターの積極的な開発過程はその延長線上にありそうだ。
ツインパワーの主な特徴は、左右クランクのひずみを測定することにある。ひずみゲージの配置方法も既存のパワーメーターとは一線を画すもので、左側クランク測定用にアスクルに4つ配置し、右クランクアームの両側面に2つずつ、計8個のゲージが配置される。そして大きな特徴はQリングスに代表される楕円チェーンリングでも正確なパワー計測を可能としている点だ。加速度センサーを使用することで、楕円リングのギア比の変動により発生するクランクの速度差を解析する。ひずみゲージの配置、加速度センサーの搭載が、次世代型パワーメーターといわれる所以だろう。
通信方式は従来のANT+とBluetooth2つのワイヤレス規格に対応する。ガーミンをはじめとした各種ヘッドコンピュータと通信が可能。さらに2016年秋にはスマートフォン・タブレット端末用アプリケーションも登場する予定だ。
無料ダウンロード可能な専用ソフトを用いたクランク1回転のパワーとトルクを可視化することが可能なTORQUE360を利用しない手はない。解析はパワーメーターと連動させることで、リアルタイムでデータが採取できる。それもクランク1回転ごとに円グラフが表示される。Qリングスを使っているのなら最適なピークパワーのOCA(最大歯数になるクランク取付位置を段階的に微調整することができるローターのパテント機構)を表示してくれる。
赤いラインが現在のぺダリング・ブルーが1回転前のぺダリングパワー値。グリーンがピークパワー角度を表すOCA。
多くのパワーメーターは温度変化により数値が変動してしまい、その都度キャリブレーションを行なう必要がある。このパワーメーターはアスクル内にひずみケージを内蔵することで、温度変化に強く、一度キャリブレーションを行なえば、ほとんど再設定する必要がないという。またノイズの影響も受けにくい構造だ。
アスクル内にリチャージブル Li-ion USB充電バッテリーを搭載し、クランクの中心部分に充電ポートを設けており、充電ケーブルは磁力で結合できる。バッテリーはフル充電で約250時間、300回の充電が可能で約7万5000時間可動できることになる。この数字は本体が寿命をむかえるほぼ同等の時間だ、という。製品は7月11日からリリース。価格は18,8000円(税抜)となる。またクランク中央にLEDランプを内蔵し、いつでもバッテリーの残量や、ファームウェアの状況を確認できる。
ただ出力を計測するだけ時代は終わった。いかにエネルギーロスを抑えたペダリングができるか。パワーメーターの普及でデータの集積も進んでおり、パワーメーターに求められるニーズは確実に変化している。ツインパワーはパワーだけでなくロスになるネガティブパワーの計測もできる唯一の機器だ。ワールドツアーのトップサイクリストでもエネルギーロスは5〜10%ほどあるという。『パワーを上げる』はもちろん、『ロスを減らす』にも目を向けてもいいのではないだろうか。
■SPEC
表示可能データ : パワー, ケーデンス, 左右バランス, トルクエフェクティブネス, ペダルスムースネス
Optimum Chainring Angle (OCA) , TORQUE 360
WIRELESS テクノロジー : ANT+, Bluetooth SMART
STRAIN GAUGES : 右クランクアーム内4 / アクスルシャフト内4
バッテリー : リチャージブル Li-ion USB充電バッテリー
ソフトウェア : ROTOR 2INpower ユーザーソフトウェア(無料ダウンロード)
CRANK ARM LENGTH : 165mm, 170mm, 172.5mm,175mm
COLOR : BLACK MATT
PCD : 110PCD
対応BB : BSA/ITA/BB86/BB30/BB30A/PF30/BBright/BB386EVO
CRANK ARMマテリアル: Aluminum 7055
Q-FACTOR : 148mm
CHAIN LINE : 43.5mm
WEIGHT : 645g(172.5mm)
価格 : 188,000円(税別)
発売日 : 7月11日より随時出荷予定
問:ダイアテック株式会社 http://www.diatechproducts.com/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得