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2017年07月03日

第14回Mt.富士ヒルクライム男子総合チャンピオン 兼松大和さんに5つの質問

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6月11日(日)に開催した、第14回Mt.富士ヒルクライム。過去最大規模のレースをコースレコードで制した兼松大和さんに、大会後日、5つの質問を投げかけた。

今回のレースへの取り組み、そしてこれからのことについて、語ってくれた。

 

ーー  昨年の2位を経て、どういう気持ちを持って今年のレースに挑んだのですか?

記憶が曖昧で、少々不確かですが、おそらく今回で8回目の参加となるMt.富士ヒルクライム。毎年とても楽しみにしている大きなイベントの1つです。日本一高い山で、日本一参加者が多いヒルクライムレースであり、日本一賑わうレースだと思っています。近年での私の成績は、第11回大会でアスリートクラス3位、第12回大会で5位、第13回大会で2位と、入賞はするものの優勝には手が届かない感じでした。
正直、参加していても「勝てる」という自信を持ってレースに挑んだことが一度もありませんでした。しかし、今年の第14回大会は例年とは違いました。勝てる自信があったというか、勝つための努力をしてきており、勝てる算段がありました。

昨年の第13回大会では、大きなかけに出て、序盤から逃げを敢行しました。見事に逃げが成功し、ブリッジしてきた森本さんと最後まで集団から逃げ切りました。しかし、力の差は歴然としており、スプリント勝負で大敗し、2位という結果でした。もし、本気で優勝を狙うのであれば「スプリント力の強化」は必須であると思っていました。少し話が逸れますが、全日本マウンテンサイクリング乗鞍でも森本さんとはスプリント勝負では明らかな力の差を感じる結果となり、今年度は私のウィークポイントであるスプリント力の強化に力を入れてきました。また、勝負所で動くことができるベースとなる基礎体力の強化にも力を入れていましたので、取り組んできた練習が本番でどのように成果として力を発揮できるのかワクワクしていました。レース前の緊張などは一切なく、ワクワクが止まらない不思議な感覚でした。

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昨年大会2位でフィニッシュする兼松さん

 

ーー 今回のレースではどのような作戦を立てていたのですか?

①「自分が逃げるエスケープ戦」

②「ジワジワ集団が小さくなる消耗戦」

③「逃げを捕まえてのスプリント戦」

3パターンの展開を考えつつ、具体的な作戦も考えていました。

・出来るだけ無駄足を使わずに走り、森本さんの逃げには対処できる位置取りを心がける。

・森本さんは1回だけではなく2回はアタックを行ってくるだろうから、逃がして良い逃げか?追うべき逃げか?の判断が大切。森本さんが逃げた時に周りのメンバーの強さを判断して、その逃げの対処方法を考える。

・森本さんが単独で逃げた時に、周りに力のある選手がいるなら、森本さんを逃がして消耗させる。

・森本さんの逃げにグランペールの田中君が乗っかるなら、絶対について行く。

・森本さんと本気で追走すれば必ず追いつけると思えるので、森本さん以外の逃げは全て容認する。

・太鼓の音が鳴り始めて勾配がきつくなるあたりでアタックを仕掛けてみて、集団の様子を判断する。逃げることが出来るならそのまま逃げ切ってみる。

・集団スプリントになるなら、ロングスプリントを仕掛ける。

こんなことを事前に考えており、イメージトレーニングはしっかり出来ていました。

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最大のライバル、森本 誠さん(2016年チャンピオン)とともに選抜クラス最後尾から会場をスタート

 

ーー 実際どのようなレース展開だったのか教えてください。

レースは、序盤から良いペースで進みました。序盤はローテーションにしっかり加わり、先頭付近で強豪達の能力を判断していました。スタートから15分~20分ぐらい経過したときには、先頭集団は8名ぐらいまで減っており、序盤の段階で勝負に絡む選手が選別されていました。
レース30分過ぎまでは、森本さん・田中君・嘉瀬君・私の4名が中心になって集団を牽引していました。大久保さんと田中君がアタックを繰り返しますが、決定的な逃げが出来ることはなく、消耗戦の様相を呈していました。

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序盤冷静に集団内でレースを進める

私は一度だけ飛び出してみましたが、誰も反応せずに容認されたので、自分自身が逃げることは序盤に諦めました。勾配がきつい箇所で仕掛けてみてふるいに掛けてみようと考えていた程度です。中盤に差し掛かり向かい風や横風が強くなり、先頭で走ることでの消耗が大きくなってきました。レースは、消耗戦となり、最後の集団スプリントになる可能性が高かったので、この逆風区間は先頭に出ることはせずに、出来るだけ脚を温存して走りました。この頃には6名の先頭集団となり、大久保さんがローテーションに加わり、集団を牽引します。そして、富士ヒル名物の太鼓の音が聞こえ出し、勾配がきつくなり始めます。この辺りが勝負所となるのは明らかだったので、細心の注意を払って強豪達の動きに対応できるようにしていました。私が仕掛けようと考えていた箇所では、田中君が力強くペースアップしたので仕掛けることが出来ず、集団6名のまま平坦区間に差し掛かろうとしていました。

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終盤、優勝争いは6名に絞られた

すると、最後の急勾配を狙って、満を持して山神森本さんの切れ味抜群の強烈なアタックが炸裂しました!!すぐに反応しましたが、加速が違い過ぎます。しかし、勝負所に体力を残しておいたので、一人で追いつける自信がありました。しかし、田中君と嘉瀬君が諦めずに踏んでいたので、この2名と一緒に森本さんを捕まえることに一人追走から思考を切り替えました。上り終えて、私が平坦区間を先頭で引きます。そして、疲れている2人に大きな声で発破をかけます。「絶対追いつける!諦めんなぁ~!!!」と(笑)。
二人はとても苦しそうでしたが、懸命にペダルに力を込めてくれました。3人でローテーションを行ったので、森本さんの背中がみるみる近づいてきました。疲れていた2人は途中でペースの維持が出来なくなったので、私一人で森本さんを追走しました。
森本さんを捕まえることが確実になったので、踏む力を緩め、考えます。そのままのスピードで抜き去るべきか? 一度呼吸を整えてスプリント勝負をすべきか? この平地区間を一人で走った森本さんより、田中君と嘉瀬君と一緒に追走している私に分があると信じ、減速して森本さんの後ろにつきました。そして、ゴールまでの距離感を確かめ、ロングスプリントになるように先に仕掛けました。そして、ギリギリでしたが、何とか先着することができ、念願の優勝を手にすることができました。
能力では私より秀でている選手ばかりでしたが、緻密に作戦を立て、勝つために貪欲な走りをした結果、得ることが出来たタイトルだと思います。
結果的にコースレコードとなりましたが、これは私が凄いのではなく、先頭で一緒に走った選手達で作り上げたタイムです。先頭でゴールした選手全てが賞賛されるべきだと思っています。私は最初にゴールさせてもらえただけです。

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ロングスプリントで念願の初優勝を決めた

 

ーー 今後の活動と来年のMt.富士ヒルクライムに向けて目標はありますか?

今後の目標は二つあります。Japan Pro Tourでポイントを得る走りをすることと、全日本マウンテンサイクリング乗鞍の優勝です。そのために、さらに努力を積み重ねて行きたいと思います。来年のMt.富士ヒルクライムですが……チャンピオンになったので、肩の荷が重いですね。レース内容や考えていることを詳細にブログに記載していますので、作戦がバレバレですからね!(笑)
もっともっと練習して力をつけて、圧倒的勝利を得ることが出来るようになれていれば、最高だと思っています。

 

ーー レース後2週間近く経ちましたが今改めて思うことはありますか?

本当に勝てて良かったと思います。今までずっと応援し続けてくれた人達に、やっと優勝の報告が出来たのは、何よりの喜びです。本当にたくさんの人に背中を押してもらい、力を頂いていたのだと改めて思えることが出来たのは、Mt.富士ヒルクライムのチャンピオンになれたからです。我がことのように、私よりも嬉しそうに喜んでくれた人達の顔が今でも忘れられません。そして、優勝することの凄さをヒシヒシと感じています。富士ヒルクライムについて記載したブログのアクセス数が5万近くまで跳ね上がりました。また、FacebookやTwitterの友達申請やフォロワーが、急激に増えました! それだけ注目されている大会なのだと、勝つことが出来たから知ることが出来ました。普段練習している峠で、すれ違うサイクリストに「兼松さん!おめでとうございます!」ってゼエゼエ言いながら祝福されます(笑)。
面識のない人達に、たくさん祝福されて、驚きです。まだまだ伸びしろがあると思っていますので、引き続きレースで結果を出せるよう、そして皆さんに応援してもらえるように頑張りたいと思います。

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チャンピオンジャージを纏いシャンパンファイト
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24kmを戦ったライバルたちと

兼松大和さんのブログ「Changingman」はこちら ⇒ http://changingman.xyz/

(写真/小野口健太、西 沙織)

 

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