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2016年11月04日

【ハッチンソン】チューブレスのメリットをより手軽に「ハッチンソン・フュージョン5チューブレスレディ」

自転車用チューブレスタイヤのパイオニアであるフランスのハッチンソンから、チューブレスの進化形であるチューブレスレディタイヤが2017年モデルとして発表された。そのメリットを、先日来日した同社のエリアマネージャー、アレクサンドル・コットブルン氏に伺った。

ロードタイヤの未来「フュージョン5チューブレスレディ」

チューブレスタイヤはインナーチューブを使用しないため、転がり抵抗が軽く、リム打ちパンクをしにくいなどのメリットがある。空気圧を低く設定できるため、乗り心地のよさにもつながる。しかし、価格の高さやリムへの装着の難しさから、今ひとつ多くのサイクリストに普及しているとはいえないのが現状だ。そこで、よりチューブレスのメリットを手軽に感じられるようにと新たに誕生したテクノロジーがチューブレスレディ(TUBELESS READY)だ。タイヤ内に入れるシーラント剤と併用することで気密性を保つ技術だ。チューブレスレディタイヤは、すでに他のタイヤブランドでも商品化されている。
しかし、2006年に世界で初めてロードバイク用チューブレスタイヤを発表したハッチンソンは、これまでの10年間の経験をもとに、より高性能のチューブレスレディタイヤ「フュージョン5チューブレスレディ」を2017年モデルとして発表した。特徴は、ビードをカーボン繊維からケブラー繊維に変更したことで、重量が軽くなり、リムへの装着もしやすくなっったこと。価格も従来のチューブレスより求めやすくなった。ホイールはチューブレス用がそのまま使え、装着にはハッチンソンの専用シーラント「プロテクトエアマックス」を使用する。コットブルン氏は「チューブレスレディはチューブレスの正常進化です。チューブレスのよさをより多くの人に味わってほしいと思って、開発しました。これがロードタイヤの未来だと断言できます」と、今後のロードタイヤ市場でも大きな位置を占めるようになると予想する。

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チューブレスの進化版として登場した「フュージョン5チューブレスレディ」。写真はオールシーズンと呼ばれる全天候型トレッドを使用したモデル。
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ハッチンソンのエリアマネージャー、アレクサンドル・コットブルン氏。ロングライドが趣味で、フランス〜ルーマニア間の4100㎞を2カ月半かけて旅した経験もある。

レース用、万能タイプ、耐天候の3パターンを用意

なお、このモデルのベースとなった「フュージョン5シリーズ」は、2016年モデルとして発表されたハッチンソンの最高峰ロードタイヤ。すでにクリンチャー、チューブラー、チューブレスの各モデルが発売中だ。トレッドは決戦レース用の「ギャラクティク」、バランスのとれた「パフォーマンス」、冬場や悪天候にも対応する「オールシーズン」の3種類をラインナップする。ハッチンソンはフュージョン5の開発に2年をかけ、前モデルのフュージョン3からは転がり抵抗を18%削減し、グリップは10%、耐久性は22%向上しているという(クリンチャーの場合)。また、チューブレスレディの2017年モデルとしては、パリ〜ルーベなどの石畳や悪路用に開発された「セクター28/32チューブレスレディ」も新たにラインナップに加わる。

【ハッチンソン 2017年モデル チューブレスレディタイヤ】
「フュージョン5チューブレスレディ」(2017年初頭発売予定)
・ギャラクティック サイズ700×25 重量240g 10,500円
・パフォーマンス サイズ700×25 重量255g 8,800円
・オールシーズン サイズ700×25 重量260g 8400円
「セクター32チューブレスレディ」(2017年初頭発売予定)サイズ700×32 重量315g 9700円※700×28サイズもあり

 

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「フュージョン5ギャラクティック(クリンチャー)」。トレッドの厚みはわずか0.8㎜、重量180g(700×23サイズ)。転がり抵抗、重量を極限まで抑え、グリップを高めている決戦用タイヤ。
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「フュージョン5パフォーマンス(クリンチャー)」。トレッドの厚さは1.2㎜、重量190g(700×23サイズ)。軽量、高グリップ、快適性、耐久性などのバランスがとれたタイヤ。

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「フュージョン5オールシーズン(クリンチャー)」。トレッドの厚さは1.6㎜、重量210g(700×23サイズ)。あらゆる天候下で高いパワー伝達効率とグリップを誇り、季節を問わずに安定した走りができる。

雨の多い日本向け開発モデル「インテンシブ2デビルズグリップ」

「インテンシブ2」は、ハッチンソンの中でもロングライド・トレーニング用に位置するタイヤ。そのニューモデルとして、雨の多い日本の環境に適した「インテンシブ2デビルズグリップ」が追加された。本来はドライコンディション用のインテンシブ2だが、デビルズグリップはMTB用のコンパウンドを応用し、濡れた路面でも最高のグリップを発揮。まさに悪魔のように路面をつかみ、レースでもジテツウする人にとっても強い味方となるだろう。

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「インテンシブ2デビルズグリップ」(クリンチャーのみ) サイズ700×23 重量230g 価格4200円
雨に塗れた路面でも高いグリップ力を発揮する「インテンシブ2デビルズグリップ」。タイヤサイドにもデビルのイラストが描かれる。

過去2年間のツール・ド・フランスでパンクは一度きり

耐パンク性能には自信を持つハッチンソンのタイヤだが、それを物語るデータがある。2015年は新城幸也も所属していたユーロップカーにタイヤを供給していたが、ツール・ド・フランスでは全21ステージを通じてチーム全員一度もパンクがなかったという。2016年も後継チームのダイレクト・エナジーに引き続き供給したが、ツールでついにパンクしてしまった。しかも、最終ステージのパリ・シャンゼリゼで、スプリンターのブライアン・コカールが見舞われてしまったのだ。「ちょうど路面にあった大きな穴にはまってしまったんだ」とコットブルン氏も悔しそうに語る。とはいえ、2年間のツールでパンクはこの一度きり。チームに供給されていたのは、チューブラーのハイエンドモデル「プロツアー」だったが、その耐パンク性能はハッチンソンの全モデルに引き継がれている。自転車用タイヤを120年以上作り続けてきた実績と自負の恩恵を、多くのサイクリストが享受できるのだ。

HUTCHINSON ハッチンソン
アメリカ人ヒラム・ハッチンソンが、友人チャールズ・グッドイヤー(グッドイヤーの社名の由来となった発明家)が発見したゴムの加硫法の特許を取得し、1853年にフランス・モンタルジーに移住してゴム工場を操業したのがはじまり。1890年から自転車用タイヤを製造する。
1999年に世界初のMTBチューブレスタイヤ、2006年に世界初のロードチューブレスタイヤを開発するなど、自転車用チューブレスタイヤのパイオニア。
現在は世界5位の石油大手トタル・グループ(仏)の100%子会社。タイヤだけでなくヘリコプターや航空機の部品から哺乳瓶の乳首まで様々な化学製品を製造している。

 

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