2017年08月26日
【2018 NEWプロダクツVOL.4】CHAPTER2 / TERE
CHAPTER 2(チャプター・ツー)は、ニールプライドの創業者であるマイク・プライド氏が新たに立ち上げたまさに「第2章」という名のバイクブランドだ。2008年にニールプライドを創業。7種類のバイクのデザインからすべてマイク氏自身が手がけた。2014年、ニールプライドカンパニーで築き上げたものすべてを棄て、自らが理想するバイクを制作するためにこのチャプター・ツー立ち上げの準備を始める。
人生の第1章(チャプター・ワン)がニールプライド、第2章がこのチャプター2だ。
チャプター2の記念すべき、ファーストモデル。TERE。リムブレーキタイプとディスクブレーキタイプの2種類を用意する。フレームセットで25万円ほどになる予定。
ヘッドチューブにカムテールデザインを採用。フォーククラウン部とフレームがスムーズでいかにも空気抵抗が少なそうだ
そして最初のモデルとなる「TERE・テレ」はマオリの言葉で、「速くて鋭い動きをする」という意味がある。ニュージランドのデザイン、色合わせをフレームに取り入れている。見た目はトラディショナルなフレームのようだが、細部を見ると空気抵抗を軽減する形状が用いられているのが特徴だ。このフレームデザインはオークランド大学の風洞実験室を用いている。ここでは伝統ある国際ヨットレース、アメリカズカップで優勝したニュージーランドチームのヨットの開発に使われるという優れた実績をもつ。
フレームジオメトリーはアジア人の体型を意識してデザインしているという。テレのXSサイズは、他のブランドのXXSサイズと同じポジショニングがとれる。フレームセットについてくるのは20mmセットバックのシートピラーが付属するが、おオプションで0mmセットバックも用意されている。フォークはサイズによってオフセットを2種類用意していて、サイズによって適切な長さのフォークをセットしている。
カムテールデザインはフレームを軽くでき、さらに空気抵抗を軽減できる。テレにはヘッドチューブ、シートチューブ、シートポストの後ろに取り入れられている。ケーブルは内蔵となり、Di2のバッテリーはシートポストに内蔵できる。
製造技術としてはカーボンの厚みを細かく調整している。カーボンは100%東レ製。62%のT800、38%のT700、一番剛性を高めたいヘッドチューブとBBには3Kカーボンを用いた。カーボンの特徴を生かして最適なライディングフィールを提供する。そしてエアロダイナミクスだけでなく振動吸収性にも配慮している。また時間をかけて設計したというチェーンステーと、フロントフォークのカーボンレイヤーはパワー伝達性能がもっとも高くなるようにしている。
マイク・プライド氏(左)と、日本での窓口となるマイケル・ライス氏(右)
またチャプター2はイヤーモデルの概念がない。これはスモールブランドであることを逆手に取り、マーケットのニーズに合わせてレスポンスよく対応するためである。そして大量生産は行わない。
カラーバリエーションはスタンダードのマッド&グロス。そしてリミテッドエディションカラーは限定生産で6〜8ヶ月のスパンで新しいカラーが登場するという。そしてもっともスペシャルエディションはツールドフランスモデル。グローバルでも17台限定だ。すべてのグラフィックデザインはユニークで特徴的だ。ひと目でチャプター2とわかる個性。
ツールドフランス記念モデル。限定17台のうち、1台が日本にある。
日本語のチャプター2 ウェブサイトがオープン!
日本語サイトがオープンしているので、訪問してみよう!
IMPRESSION
早速インプレッションを遂行。マイケル・ライス氏とは20年来の旧友で、1hくらい乗っておいでよ!とのお言葉に甘えさせていただくことに。テスト場所は、東京は稲城市矢野口から多摩丘陵へ向かうアップダウンコースだ。
こういった、マスプロダクツは対極にあたるメーカーの、しかもファーストモデルということで胸踊る気分でテストライドに臨むことができた(いつもテストライドではワクワクしていますが、2割増しくらいというイメージ)。
踏み出した時に感じたのはソフトさ。カーンと反射的に加速するような感じではないが、踏み込めば応えてくれる加速感が心地いい。もっとも爽快に感じたのは、ある程度スピードに乗った状態からさらにスピードをあげようとペダルに力を入れた時の加速性だ。あきらかに踏み出しの最初の加速よりもずっと反応が良く感じられる。実際の走行中に起こりうるのはこちらの加速局面だろう。そして下りでの安定性もまたこのバイクの魅力だろう。フォーク剛性が実に優れている点、さらにバック側の振動のいなしや、適度なフレームの重量感がバイクを安定させる。実にコントローラブルだが、ハンドリング自体は軽め…..という、噛めば噛むほど味がでる性格といえる。正直、乗っていて面白いバイクだった。
インプレッション後に価格を聞いたのだが、まさに驚きのコストパフォーマンスといえる。
テストバイクにはディスクブレーキモデルを拝借したが、マイク・プライド氏によれば、リムブレーキが65%、ディスクブレーキは35%ほどの割合だ。そのなかでも欧州やアメリカのいわゆるホビーサイクリストはディスクを選び、アジア圏のサイクリストはまずリムブレーキだという。その理由を聞くと、ディスクは実用主義で、やはり使い勝手はいいだろう。ではリムブレーキを支持するアジア圏では、ワールドツアーレースの影響が大きいだろうという。いわゆるプロレースへの憧れから生じている心理ではないか、と。そういう意味ではファッションだよね、と締めくくられてしまうのだが、ロードバイクをスポーツとしてみればディスクブレーキを導入することはごく自然なことだ。日本でもディスクロードが流行るようになれば、途上国は卒業か。路面状況や環境がよい日本ではディスクブレーキをそもそも使用しなくても十分に走れるともいえるが、2章目を迎えた新生ブランドに触れたことで、日本の自転車カルチャーの次章はどうなるのか、想像するのである。
写真と文:山本健一
取材地:Cross Coffee
関連URL:https://jp.chapter2bikes.com/
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著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得