2018年10月25日
【CERVELO】S5DISC 徹底チェック&インプレッション
IMPRESSION
まるでSFの空想未来的なシーンにでてくるようなバイク。とくにハンドル周りの形状は予想をはるかに上回るデザインだった。伸びたケーブルのアールの美しさすらも競ったスチールバイクと比べると、無機質なイメージになっていくが、レーシングバイクとして考えると正しい進化を遂げているといえる。
ケーブル類をほとんど内蔵化できたのは、ディスクブレーキの恩恵が大きい。Vブレーキタイプでなんとか形作っていたメーカーもあったが、性能面やメンテナンス面で問題があったとしばしば聞いたことがある。そういう意味では信頼できる制動力のディスクブレーキを搭載しデザイン設計を再構築した2019年モデルこそが、真の意味でのエアロロード元年かもしれない。
別の記事でも触れているが、ウエット状態でこそディスクブレーキの真価が発揮される。正直言って制動性能だけならドライでは大きな差はない。メリットは他にもありそうだ。カーボンリムxクリンチャーxラテックスチューブの組み合わせなど、リムブレーキではリスクの高い組みわせも実現できるだろう。
ライディングフィールは、まさにうたい文句どおり、全体的に剛性が高い。前作はヒラヒラとした軽快さを感じたが、こちらは重厚な剛性感。挑戦的なバイクだが、踏んだぶんだけ応えてくれてハイスピードな場面では、タイムトライアルバイクに乗っているような、日常のスピードを超える気持ちよい疾走感がある。また、エアロ一辺倒な形状ながらも剛性に対して乗り心地がマイルド感じられた。特に荒れた路面での走行感が高いが、ワイドタイヤの影響も大きいのだろう。個人的な好みでは剛性が高いホイールよりもややマイルドなほうが加減速に対応しやすいように感じる。パワーロスが少なく軽量ホイールを履かせれば、上りも苦にしない。
ステアリングコラムが露出している斬新なフォーク。ステアリングコラムがヘッドチューブの前に出ているので、ハンドリングに影響があるかと懸念したが操作性も剛性面でも全く問題がなく、慣れ親しんだバイクのように自然にコーナーワークも決まる。
重量という意味では8キロに迫り、これまで必死に6キロ台へ乗せようとしていた頃のバイクと比べると、非常に安定感が高い。ワイドタイヤの恩恵もあり地に足がついたというのはこういうことだろう。
賢明な読者は決して真似しないと思うが、ステムとハンドルの突起が省かれてフルーミーな例のダウンヒルフォームを取りやすいというのも発見だ。ハンドルポジションにもゆとりが生まれて、ロングライドにはうってつけとも言える。
また、ジオメトリー表を見ての感想では、フレームサイズごとにジオメオリーを変えていることを賞賛したい。おそらくヨーロッパや欧米では需要が小さかったスモールサイズにもスポットライトが当てられていて、トゥータッチしないような工夫や、ホイールベースを稼ぐための姿勢が見られる。アジアンマーケットに力を入れている証しとも取れるが、いずれにしても歓迎できよう。
ほかにも以下のコラムで触れるが、Sシリーズがずっと引き継いできたエアロ形状が大きく変わることなくこの新型にも用いられていること。これまでのフレームも優れたエアロ効果を生み出していたということを示しており、既存モデルのユーザーも誇らしく感じるはずだ。ニューモデルが大胆にモデルチェンジしてしまった時は期待に胸踊る反面、これまでのモデルの存在意義は……。という懐疑的な気持ちが芽生えることがないともいえない。そういう意味では出し惜しみなし、ノーガードで挑むサーヴェロは潔いメーカーといえる。
2018年S5とNEW S5DISCをくらべてみよう
既存のS5とS5DISCをくらべてみよう。テストライド当日は、新旧のバイクを持ち込んで実走もふくめて検証をしてみた。その変化をとくとご覧あれ。
ハンドル周りに関しては、既存モデルと比べると、全く別の物体に見える。並んでしまうと既存モデルが古めかしく見えてしまう!
ハンドル・ステムのサイズはフレームサイズによって可変するが、現状では選択はできないようだ
ハンドルはもちろん、フォークとヘッド部分は大きく変更されている。新型のフォークは、ステアリングコラムが露出した形となる。従来のステアリングコラムが挿入される部分は空洞となり、内蔵ケーブルを収めるスペースとなっている。フォークオフセットは既存モデルとは異なり、サイズごとに変更している。最小の48サイズではオフセット58mmと大きいが、ホイールのトゥータッチを防止できるなどメリットも多い
ハンガー部分はS5DISCのほうがボリュームアップしているが、基本的な形状は同じ。3つのボトルケージ台座もBBライトも健在である。
BBドロップは72.5mm(48、51サイズ)70mm(54、56サイズ)と既存モデルよりも2〜4mm下げている。
リア三角のデザインも視覚的には大きな変化がないように見える。リアエンドのディスクローターの分だけ賑やかにはなったか。ジオメトリーでは既存モデル同様にシートチューブアングルは73度で統一。リアセンターも405mmと変更なし
商品ラインナップ&価格(税抜)
S5 Disc Dura Ace Di2 R9170 完成車 ¥1,580,000
S5 Disc RED eTap 完成車 ¥1,420,000
S5 Disc Ultegra Di2 R8070 完成車 ¥1,150,000
S5 Disc Ultegra R8020 完成車 ¥790,000
フレームセット ¥590,000(フレームセット、AB08ハンドル、S5 V-Aeroステム、シートポスト、スルーアクスル付属)
取材協力:東商会
関連URL:http://www.eastwood.co.jp/lineup/cervelo/s5_disc.html
写真:小野口健太
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得