2016年06月20日
3モデル インプレッション Vol.16/CARRERA PHIBRA EVO(エンデュランスモデル)
CARRERA PHIBRA EVO
ユニークな形状のフルカーボンロードバイク。トップチューブとバックステイは横扁平加工が施され、さらに弓なりの円弧を描き、シートチューブが貫通するようなじつに特殊な設計。縦方向に扁平したフォーク形状や、大ボリュームなダウンチューブなど迫力のあるフレームワークだ。
■フレーム:カーボン プリプレグ T-700sC HM50T – Hs40 – Hs60T 1K■フォーク:CM30 カーボン 60HM 1K 1-1/8” – 1,5” 重量:390g■試乗車のコンポーネント:シマノ・アルテグラ■ホイール:カンパニョーロ・ボーラウルトラ■完成車実測重量:7.5kg(ペダルなし)■カラー:A6-45グロッシー、A6-44グロッシー、A7-07マット■サイズ:XS、S、M、L、XL■価格:280,000円(フレームセット、税抜)
一体化したトップチューブとバックステイ。平面上に変形したチューブをシートチューブが貫いたようなデザイン。
ダウンチューブやユニークな上周りのチューブ構成にしては、BB回りはおとなしいデザイン、といったところか。BB規格はプレスフィット30を採用している。
緩やかに湾曲したダウンチューブ。写真で見るよりもボリュームがある。
トップチューブは優しさのあるコンフォートバイクを想像させるラウンド形状。
一方でフォークの縦方向のボリュームは随一といえるだろう。
翼状断面のエアロシートチューブ。フレーム全体のデザインからすれば、丸チューブのピラーは似合わない。
IMPRESSION
カレラを知るに最適な1台★菊地武洋
このシリーズインプレではエアロ、レース、エンデュランスの3種類に乗り、それぞれのブランドの傾向を探っている。フィブラ エボが担うのはエンデュランスであり、カレラはそれをグランフォンドだという。この2つ、実は似て非なるものだ。レースの厳しさはコースよりも相手や展開で左右するのに対し、グランフォンドはコースやペースで決まる。すなわち、キツいコースを速く走るためにフィブラ エボは作られている。初代は巌のような剛性の塊であったが、最新モデルは硬さよりも“しなやかさ”が美点となっている。力強くペダリングするとBBは左右にわずかにウイップし、弧を描くシートステーも路面の凹凸に追随する。後輪の安定は快適性を向上させると同時に、個性的なデザインはヘッドチューブの長さを感じさせず、強靱なフロントフォークを装着してもプロポーションの乱れを感じさせない。ホイールの選択とタイヤのセッティングが決れば、教科書に載せたくなるような正確なハンドリングだ。これならベテランはもちろん、初心者でも峠を攻めて走っても安全に下れる。それを可能にしているのは、しっかりと減速ができるからだ。フォーククラウンやブレード、ステアリングコラムの取り付け部の剛性も程よく、ハードブレーキングしてもブレードが中折れするような挙動にならない。かつてのカレラを知る人にとってフィブラ エボはマイルド仕様に思うかもしれないが、他のエンデュランスモデルと比べるなら、十分にレーシーだ。ロングライド用というにはスパルタンだが、スポーティーな走りを求めるならいい落としどころと言えるだろう。
孤高の存在、唯我独尊★芦田昌太郎
独創的なフレームとフォーク形状はインパクトが大きい。弓の様な形から良くしなるような気がしてしまうが、その実、硬質で完全なるレーシングバイクだ。コーナーリングからの立ち上がり、下りの安定感、ハンドリング性能、どれも一級品で、上りも良く進む。ただ、フレームの性能には少々クセがあり、加速を促してくれるバネのような感覚を上手く制御しないと跳ね返されてしまう。軽量貧脚ライダーの私は「出直して来い!」と言われているような感じさえしたが、しばらく乗っていると勘所もわかり、このじゃじゃ馬の素晴らしさが次第に感じられるようになってきた。
フィブラはやっぱりフィブラ◆山本
初めて見たときに感じた、そして乗って打ち砕かれた懐疑心は今も忘れもしない。先入観に囚われてはいけないというのがこのバイクに教えられたことだ。そして時を経た現在はずっとリーズナブルになり、機構もブラッシュアップされたフィブラ エボとなった。このグラマラスなフレームはスチール時代からロードバイクに乗る世代がいかに想像力を働かせても具現化できないシロモノだろう。だからといって蛇の道ではなく、ピュアロードレーサーと呼べる優れた運動性能がフィブラ エボの持ち味といえる。近年の超がつくような剛性感のフレームと比べれば、乗りやすいフレーム、といった印象だ。剛性は高いが、硬質な素材同士をぶつけるような弾けるような雰囲気ではない。路面を滑らかに突き進む重厚さは、安心感と言い換えることもできる。その安心感があってこそか、上りも下りも実にスムース。重厚という言葉が上りで足かせに繋がりそうだが、トルクをかけても、ケイデンス重視でもよく反応してくれる。下りは言わずもがな、実に心地よい。最速のラインを思い通りに繋ぐことができるが、ホイールの性能も求められるので、中途半端なグレードではフレームの持ち味を活かせないだろう。そもそもこの形状にロープロファイルのエントリーホイールが似合うワケもなく、日常の「練習日」だったとしてもなんとなくためらいがある。そんなエッジの利いた性格なのだが、よく見ると尖った部分はほとんどなく、丸みを帯びた優しいチューブのカタチをしている。そんなギャップ感が愛らしい雰囲気のフレーム。所詮、走るための道具。でもチョット違った感情をもって接することができるフィブラ エボは変わらず特別なバイクなのである。
(写真/和田やずか)
問:ポディウム http://www.podium.co.jp/
著者プロフィール
山本 健一やまもと けんいち
FUNRiDEスタッフ兼サイクルジャーナリスト。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。2022年 全日本マスターズ自転車競技選手権トラック 個人追い抜き 全日本タイトル獲得