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2016年07月13日

~TOJから全日本へ~ 若きシマノレーシングのネバーギブアップ【後編】

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家族と完走したTOJ

今年からシマノレーシングに加入した21歳の小橋勇利。U23日本代表にも選ばれる注目の若手で、TOJではシマノレーシングのエーススプリンターに起用された。スプリント力はもちろん、上りもこなせるのが持ち味で「集団の人数が絞り込まれた状態で、勝利を狙える」と野寺監督も期待を寄せている。

TOJ前哨戦として第1ステージ直前に行われた堺国際クリテリウムでは、ラスト1周でシマノレーシングのトレインが位置取りをサポートし、小橋が日本人トップの6位に入った。それでも本人は外国人スプリンターに敗れたことを悔しがっており、闘争心をみなぎらせていた。

翌日の第2ステージ京都も小橋にとって狙えるステージだったが、終盤に落車。左肩、左ひじ、左脚に大きな擦過傷を負った。じつはこのときの落車が周りの選手にとって危険だったと他チームの選手から注意される一幕もあり、若さゆえの粗削りな部分も見せてしまった。

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第2ステージ京都で落車し、負傷した小橋勇利。しかし、闘争心は衰えていなかった

 

続く第3ステージ美濃では治療の跡が痛々しい状態ながらも、スプリントに挑んだ。昨年は、日本ナショナルチームの一員としてTOJに出場していた小橋。そのときはゴール前で埋もれてしまった反省から、この日は早めにスプリントを仕掛け、一時は3番手あたりまで上がった。最終的には他の選手にかぶされて集団の中に沈むも、ケガをしてもあきらめないガッツを見せた。

実はこのTOJ期間中、小橋の家族が全ステージ応援に訪れていた。「家族もツアー・オブ・ジャパンです」と小橋も笑顔を見せていた。

両親は北海道で経営しているカフェを休み、高校3年生の妹さんも学校を1週間休んでいたとのこと。お母さんも「お客さんも(応援に行くのは)わかってもらってるんで」と笑っていた。

昨年のTOJは伊豆でリタイアに終わった小橋だったが、今年はケガを抱えながらも家族と一緒に東京まで完走。その東京ではスプリント勝利に意欲を見せていたが、チームメイトを含む逃げが決まってしまい、チャンスはめぐってこなかった。小橋にとって次なる大きな目標は、6月末のU23全日本選手権ロード・レースU23。そこでは、家族に勝利を届けられるか。

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最終日の東京、集団スプリントになればシマノレーシングは小橋(中央手前)で優勝を狙う作戦だった
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お店と学校を休んで応援にかけつけた家族と一緒に、TOJを完走した小橋

東京ステージでつかんだ「ひとつの勲章」

最終日の第8ステージ東京。結果から先に言うと、レース序盤にできた逃げ集団に入部、秋丸が入り、この集団が逃げ切って入部が4位に入った。

入部は2日目の京都で、大きくタイムロスしていた。「自分の体じゃないみたい」「頭が痛い」「気管支が痛くて、呼吸がしにくい」など体の不調を訴えていたものの、具体的な病名はなく、これといった治療も行えなかった。

総合では最下位に沈み、「完走するので精一杯。チームメイトにアドバイスしたりする状況じゃない」と語っていた。そうは言いつつも、レース前に後輩たちに声をかける姿は、キャプテンとして最低限できることはやろうという気持ちが垣間見えた。そして、「徐々によくなっている」「いつかチャンスが来る」と復調を信じ、我慢の走りを続けていた。

第6ステージ富士山のスタート前には自ら六角レンチを手に、ポジションを調整。ハンドルを上げ、サドルを下げた。ゴール後には「ポジションをいじったら感触がいい。今日は息ができる。監督、明日からは行けますよ!」と手ごたえをつかんだようで、力強く宣言した。

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ファンの方が作ってくれた入部の応援フラッグ。キャプテン入部がキャプテンアメリカとなり、野寺監督はアイアンマンに
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自分が成績を狙えない状況でも、後輩たちにアドバイスを送るキャプテンらしさを見せていた
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第6ステージ富士山のスタート前にサドル高を調整する入部。これが功を奏し、復調へとつながっていった

もうひとり、不完全燃焼のレースにフラストレーションを募らせていたのが秋丸湧哉だ。レース前は好調をアピールし、UCIポイント獲得に自信を見せていた。それだけに、京都ステージのパンクで遅れたときは「オレのTOJが終わった」と落胆していた。

しかし、過去にヴィーニファンティーニNIPPOに所属するなど海外経験豊富な秋丸は、チームの中でもプロ意識が高い選手。京都で遅れた後は自らステージを狙えるチャンスを顧みず、総合上位を目指すチームメイトのアシストを積極的にこなした。横山や木村らも、秋丸に対する感謝を何度となく口にしていた。

本人は「アシストなんて誰にでもできる。自分の成績を出せなければ意味がない」と謙遜気味に語るが、結果として最後の東京ステージでもチームの作戦を着実に実行するプロの走りを見せた。

つまり、東京ステージではこの2人が逃げたのだ。

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TOJ開幕前は総合25位以内、UCIポイント獲得に自信を見せていた秋丸湧哉だったが、パンクでチャンスを失う

平坦の東京ステージでは集団スプリントになるのがお決まりの展開だが、野寺監督はイラン勢、とくに1分08秒差の総合3位につけるミルサマ・ポルセイェディゴラコール(タブリーズシャハルダリ)が総合逆転を狙って逃げ切りを仕掛けてくると見ていた。つまりステージ優勝も逃げ切りで決まる可能性があり、逃げ集団の中に選手を入れる作戦を立てていたのだ。

大井ふ頭の周回コースに入って逃げた8人の中には、ようやく自分の走りを取り戻した入部が入った。ここにはポルセイェディゴラコールこそ入らなかったものの、前日に復活勝利を挙げたばかりの新城幸也(ランプレ・メリダ)、飯田ステージで逃げ切り勝利目前までいった内間康平(ブリヂストンアンカー)ら豪華な顔ぶれがそろった。イラン勢も、TOJ中盤で総合首位に立っていたメヘディ・ソフラビ(タブリーズシャハルダリ)ら2人いる。

集団内でこれを見ていた秋丸は「この逃げは決まる」と察知し、すぐさまホセビセンテ・トリビオ(マトリックス・パワータグ)とともにブリッジをかける。これで逃げは計10人となり、この中にシマノレーシングだけが2人を送り込んだ。秋丸のファインプレーで、理想的な展開を手に入れたのだ。

さらに、この逃げとメイン集団との差は最大2分41秒まで拡大。距離が短い東京ステージでここまで差が開くのは異例のことで、逃げ切りの可能性は高まってくる。

最終的にペースアップに力を尽くした秋丸らはラスト1周で脱落したものの、入部を含む5人がギリギリで逃げ切りを確実にした。このステージの平均速度が49.1㎞/hだったことを考えると、いかに逃げ集団とメイン集団が全速力で追いかけあっていたかがわかる。

注目の5人によるスプリント、入部は惜しくも4位に終わった。「アヴァンティの選手(サム・クローム)にやられた。脚がないと思っていたけど、ためられていた」と、絶好のステージ優勝のチャンスを逃し、さらにUCIポイント圏外に終わったことを悔しがっていた。しかし、数日前の絶不調を思えば、ここまで復活したのは一安心と言える結果だった。

さらに、メイン集団のスプリントで小橋が12位に入り、アシストした湊も18位に。この結果、東京ステージのみのチーム順位(各チーム上位3人の成績をもとに決定)で、シマノレーシングは1位となった。これはUCIポイントもつかず、表彰台に上がれる賞でもない。しかし、強力な海外勢相手に満身創痍になりながらも、成長過程の若者たちが最後まであきらめずに戦ったことを証明するたったひとつの勲章となった。

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第8ステージ東京、逃げの10人の中にシマノレーシングは入部と秋丸の2人を送り込む作戦通りの展開に
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逃げ集団のペースアップに貢献した秋丸はラスト1周で脱落。観客の拍手に手を挙げて応える
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最後は5人が逃げ切ってスプリント。入部(左)は惜しくも4位で、悔しそうな表情を見せる
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今年のTOJで一番のニュースは、伊豆での新城幸也(ランプレ・メリダ)の復活勝利。約3カ月前に左大腿骨骨折の大ケガをしたとは思えない驚異的なラストスパートだった
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新城とともに、リオ五輪ロード日本代表に選ばれている内間康平(ブリヂストンアンカー)。南信州では、終盤50km以上に渡って独走。ステージ優勝目前までいったが、惜しくもラスト500mで集団に捕まった。東京でも逃げ集団に入り、3位に食い込んでいる
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ここ数年TOJを席巻しているイラン勢。伊豆では、昨年までTOJ総合2連覇のミルサマ・ポルセイェディゴラコール(タブリーズシャハルダリ、写真中央)がタイム差逆転を狙ってアタックする王者の走りを見せたが、最後に吸収され3連覇のチャンスを逃した
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今年のTOJ総合優勝を飾ったのは、富士山を制したチーム右京のスペイン人、オスカル・プジョル。片山右京監督にビッグタイトルをプレゼントした。おしゃれなヒゲも話題に

 

急成長の木村、全日本ロードで表彰台をつかむ!

TOJを終えると、国内のロードレースシーズンは前半戦最大の山場、全日本選手権ロード・レースへと向けて再びボルテージを上げていく。

全日本の前週には、ツール・ド・熊野が開催された。UCI公認の4日間(6月16~19日)のステージレースで、紀伊山地のアップダウンのある地形が舞台の厳しいレースだ。シマノレーシングは、TOJでつかんだ上向きの流れを、この熊野でさらに飛躍させた。

最終的にキャプテン入部正太郎が総合9位に入り、今季新加入の若手、秋田拓磨がU23選手賞を獲得、そして最終第3ステージでは木村圭佑が3位に入った。とくに第3ステージの木村は、豪雨の中、自ら積極的にアタックを繰り返す力強い走りを見せた。この結果により、入部が3ポイント、木村が1ポイントと念願のUCIポイントを手に入れた。

そして迎えた全日本選手権ロード・レース(6月24~26日)。舞台は伊豆大島。今年1月にアジア選手権が開催されたが、全日本は初開催。しかし、シマノレーシングは5月の合宿で伊豆大島に渡ってコースを試走しており、万全の準備で大一番を迎えた。

まず6月25日のU23男子で、若手中心のシマノレーシングは6人の選手が出走。悪天候のなか、小橋勇利が優勝した小林海(Team KUOTA C.PAULINO)に最後までくらいつくも、惜しくも4位に。さらに3度に渡る腰の手術から今シーズン復帰した西村大輝が、7位に入る健闘を見せた。

翌6月26日は、いよいよエリート男子。前日から天候は回復したものの、海沿いは強い向かい風が吹いており、厳しいレースが予想された。レースはアタック合戦の末に13周中3周目の終わりに鈴木譲(宇都宮ブリッツッェン)、中根英登(愛三工業レーシング)の逃げが決まる。メイン集団は、ブリヂストンアンカーがコントロール。シマノレーシングは入部正太郎、木村圭佑、秋丸湧哉、湊諒の4人全員が集団内にとどまり、後半勝負に備えた。

逃げが吸収された残り3周から、各チームの動きが活性化。シマノレーシングも木村、湊らがアタックに反応したり、自らアタックを仕掛けたりと積極的な動きを見せる。

最終周回の残り半周で、木村が自らアタック。初山翔(ブリヂストンアンカー)が反応し、さらに追走から初山のチームメイト、西薗良太が追いついた。アンカー2人、シマノ1人と人数的に不利な状況だが、木村は逃げ切りを確実にするためローテーションに加わり、集団を引き離す。もし逃げ切れなくても、集団内の入部らに勝負を託せると信じての、捨て身の走りだった。

その甲斐あって3人は集団から逃げ切ったが、木村は最後のスプリントでアンカー勢に対抗する力が残っておらず、初山、西薗が1-2フィニッシュを飾った。

惜しくもビッグタイトルには手が届かなかった木村だったが、自らのアタックをきっかけに逃げ切り、3位表彰台という結果に結びつけた走りは、このレースの中で存在感十分だった。自身も「熊野の3位がまぐれじゃないことが証明できてよかった」と、自信を深めた様子だった。

野寺秀徳監督も「今の若いチームで考えられる最高の結果」と、若手たちの心身両面の成長を感じ取ったようだ。

この結果の余韻に浸る間もなく、世界を目指す若武者たちにはこの先も厳しいレースが待っている。さらなる大きな目標に向かって戦う姿に、今後も注目してほしい。

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伊豆大島北西部の海沿いに伸びるサンセットパームラインを進む集団。ブリヂストンアンカーの井上和郎らが先頭でコントロールする
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木村、入部らシマノレーシングは集団内で後半勝負に備える
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集団から逃げ切ったブリヂストンアンカーの初山、西薗が1-2フィニッシュ。アンカーはロード初山、タイムトライアル西薗と今年の全日本二冠を達成した
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積極的に仕掛けた木村だったが、最後はアンカー勢との勝負に敗れ3位でゴールを越えた
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ゴールした木村を出迎えた野寺監督。2人の目には、熱いものがこみ上げてきた
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木村の3位をたたえるシマノレーシングのチームメイト、スタッフたち。ちなみに、キャプテン入部はドーピングコントロールでここに参加できず

協力:シマノレーシング

http://www.shimano.com/content/Corporate/japanese/index/Shimanoracing/shimanocyclingteam.html

シマノレーシング公式YOU TUBEチャンネル

https://www.youtube.com/channel/UCvPECVp_-UXEM2ELTAfP39w

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