2019年09月24日
ホビーレーサー必読!「ロードレースのAtoZ」その2 集団走行でのマナー編
自転車で走るときに、主な走行抵抗として風圧が挙げられます。
時速30kmほどで走っている場合は8割以上が空気抵抗になり、速く走れば走るほど、その抵抗は増えていきます。
そこで楽に速く走る知恵として、走者同士で空気抵抗を負担しあいながら走るというのが集団走行です。
自転車レースや競輪では空気抵抗をどう処理するかという点から、戦略が生まれます。
単独で走行していると、集団走行のようなスピードを長時間維持するのはかなり難しく、レースの終盤まではライバルチームと協力しながら走るという、奇妙な関係性も自転車競技の面白いところですね。
一般公道では一列で走れても、レースの集団走行のような2列、3列での走行は法規上NGですので、そういった練習を行うことはできません。レースでしっかりと走りたい人は、実際にレースに出るか、集団走行ができるコースを見つけて練習を積むのが近道といえます。
その前に集団走行のマナーをいくつか挙げてみましょう。マナーとは、ルールではありません。ルールといえば競技規則ですが、マナーは作法のことです。また自転車は乗り物ですので、モラルも兼ね備えていて欲しいところです。
集団走行はスポーツ自転車の醍醐味です
基本的なスキルを身につける
集団走行の基本的スキルは、まっすぐに走ること!?
ここでいうまっすぐに走るというのは、集団の動きに合わせて走るという意味です。規則正しく進んでいる中で、一人だけ違う方向ですすむことはできません。
日本の小学校では、運動会の準備などで行進の授業があります。整列し、同じスピードで校庭を規則正しく歩く。前後左右に気を払い等間隔で歩きましたよね。自転車の集団走行も同じです。しかし、戦略的にわざとペースを乱すこともあります。
斜行をしない
まっすぐに走るという意味では斜行(集団が進む方向に対して斜めに走る)をしないこと。これは集団落車の危険性が非常に高い危険な走り方です。斜めに進路変更をした場合、前に割り込まれた人の前輪と接触する可能性が非常に高く、とても危険です。ゴール前では降格処分になるほどのペナルティが課せられます。コーナーでも割り込みをすると接触リスクが高まります。
走行スピードを同調させる
多くの選手にとって自らの意思ではないスピードで集団は進みます。
つまりは集団に合わせるように走りますが、その集団が果たして自分のスピードに最適なのか、という見定めをしないといけません。見定めとはゴール(あるいは目標)までこの集団にいて辿りつけるのか? ということです。
目安としては集団の中で「少なくとも平地では休めている」こと。ゴールまでの距離にもよりますが息が整わないペースだと少し速いかもしれません。早すぎる集団に限界まで付いて行って遅れてしまうよりも、レベルを落としてこれくらいなら保てるだろう、という集団で走った方が結果的には速く走れることもあります。
むやみにスピードを上げないこと
先頭交代に加わって、先頭を引く場面もあります。集団の先頭に立つことで「自分が集団をコントロールしているんだ」と気分が高揚し、張り切ってしまうこともあります。しかし、ここではスピードを維持することを考えましょう。維持するといっても普段よりもずっと速いスピードで走っているはずですから、先頭を引く時間も数十秒、もっと短いかもしれません。集団内で余力のあるうちは、速く引いてしまうこともあります。むやみなペースアップは体力を消耗してしまうだけですので、自制をしましょう。
スピードが上がったり下がったりと集団のペースが落ち着かない時もあります。また、集団の密集度が上がったときなど横や前の選手に接触することがあります。接触し、ハンドルが取られてステアリングミスをした場合には転倒してしまいます。様々な要因の中で、タイヤのグリップを失うことが最も多い転倒の原因です。リアから滑る場合は、後ろからの衝突、コーナーでのオーバースピード、路面に浮いた油などでグリップを失ったときでしょうか。
話を戻すと、相手と接触してしまった場合、相手を受け止めるというよりは押し返すことで、自律するバランスを整えることができます。極端に強く押さなければ相手も復帰しやすくなります。
まさしく自転車版の対人スキルといったところでしょうか。体を当てられても、そうそう動じませんので、焦らずに….ということです。
また接触してしまったら相手にお詫びを入れるなど、礼を尽くすことも大切です。
同じカテゴリーでしたら、次のレースでも顔を合わせる可能性が高いですからね。
このように協調して走るということがとても大事で、一列で走る場合も相手のスピードに合わせて走ります。こういった技術は実際に走行することで獲得の近道になりますが後述するクラブチームと密接な関係があります。
走りながらコミュニケーションもとります。例えば落下物や障害物があれば後続に伝えます。ハンドサインはハンドルから手を離しても問題がないときに。声に出して伝える方法でもよいです。
数人〜10数人の小集団なら、前が見えるのでコーナーなどでいちいちハンドサインを出すことはないですが、数十人の大集団のときは先頭付近にいる人が伝えてあげるといいでしょう。そういった配慮で集団落車のリスクが減っていきます。
まさに相手あっての集団走行ですので、同じレースに出ている人をリスペクトする心をもって走りましょう。
走りながらコミュニケーションをとるのは自然なことです
紳士協定を理解する
レースのとき、スタートからフィニッシュするまで集団はいわゆる小さな社会です。そこには紳士協定といった不文律があり、秩序が保たれています。
前述した「むやみにペースを上げない」「好き勝手な場所を走らない」「割り込まない」「罵声を上げない」など、なんとなくオフィスにいるような雰囲気があります。
そこで無鉄砲な動きや、流れに逆らうような動きを繰り替えすと集団を形成している他の人から愛想をつかされてしまいます。
行動に対して手を差し伸べるように諭してくれる人もいるでしょう。「自分の走り方が少し変だったかな?」と走り方見直すチャンスともいえますので、しっかりと聞き入れましょう。
クラブチームに所属するとベター
間接的な提案ですが、クラブチームは集団走行やマナーといった秩序を知る上でとても重要な存在です。
クラブチームはレースに出場したり練習会や走行会を行う、いわゆるサークルです。
同じジャージを着て走っている姿を見かけることがありますが、ショップに帰属しているチームや、SNSなどで同じような特性の人たちが集まった有志のチームなど形式は多様化しています。
いずれも加わると、個人では到底得ることができない膨大な情報を得ることができるでしょう。
初心者の場合は機材の知識から走行スキルまであらゆる点でメリットがあるといえます。前述したレースの走り方やルールやマナーなどはクラブチームで学ぶこともできます。
同じ趣味を持っている様々な環境の人たちが集まっているので、話題にも事欠きませんし、なによりも仲間の存在はこころ強いです。日々仲間とライドを繰り返し行うことで、大切なスキルが養われていきます。
クラブチームに所属すると世界は広がるでしょう
落車のリスク
耳触りがいいことばかりではありません。集団で密集して走るということは、落車のリスクが少なからずとも高いということ。転んだら痛いし、機材も壊れてしまうかもしれません。どんなに対策を講じても、予期せぬことが発生します。
しかし、海や雪山など他のスポーツでも同様で、そのリスクが発生してしまうかもしれないということを受け入れた上でレースに臨みたいものです。そういったことが本能的にスリルに感じることもあり、スポーツとしての魅力なのかもしれませんが、翌日からの生活や、帰るべき場所のことを考えると、自分の行動で排除できるリスクもあります。
・無理なスプリントは避ける
優勝に絡まないような場合は無理にスプリントをしないこと
・コーナーでは強引に割り込まない
コーナーで無理やり割り込まない(特にインコーナーから)
・路肩ギリギリを走らない(特に公道では)
パンクリスクが高まります
・不可抗力
レース外の突風、雨、野生生物など自然(じねん)の影響もあります。観戦者や、オートバイ、車との接触なども可能性としてはゼロではありません。
自転車レースにおいて雨などの自然現象はつきものです
そういったネガティブな部分も受け入れることで、自転車をスポーツとして認識したといえます。テーマとはややずれてしまいましたが、爽快なスピードで走れる集団走行には、リスクがあるということを理解してください。
そしてリスクを最小限に留めるために、マナーとルール、モラルを尊重して走りましょう。
写真:小野口健太
著者プロフィール
ファンライド編集部ふぁんらいど へんしゅうぶ
FUNRiDEでの情報発信、WEEKLY FUNRiDE(メールマガジン)の配信、Mt.富士ヒルクライムをはじめとしたファンライドイベントへの企画協力など幅広く活動中。もちろん編集部員は全員根っからのサイクリスト。