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2020年04月06日

コロナウィルス感染拡大と自転車の将来


「チームジャージで走っていると、周囲の視線が気になりますね」と話すのは都内にある老舗ショップのスタッフ。
小池東京都知事による「不要不急の外出自粛要請(3月25日)」以降、週末のクラブ走行会は中止したままだ。再開のメドも立っていないという。
一方、都心の一等地にある大型販売店のスタッフは「明らかに人の数が減ったことを実感しています」と話す。平日、休日を問わず「街の人口」が減り、そのことがショップにも少なからず影響を与えているようだ。
新型コロナウィルスの感染拡大はイベントの中止だけでなく、サイクリストの「日常」にも少しずつ変化をもたらしている。


しまなみ海道のレンタサイクルは20%増


前向きな情報もある。しまなみ海道の愛媛県側拠点である今治市のレンタルサイクル施設では「2月、3月のレンタルサイクル貸出し数が前年比2割増」という報道(3月30日愛媛新聞)があった。報道では「サイクリングという風通しのよいレジャーは感染リスクが低いとみなされているのではないか」という施設側の見解と、実際に利用したサイクリストの「不特定多数の人と接触がなく気にせず楽しめた」というコメントを紹介している。しかし記事では、レンタル自転車のサドルやグリップ、ヘルメットは利用のたびに消毒しなければならないことも指摘している。
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しまなみ海道では海上タクシーなどの新しいサービスも登場している


ZWIFTの利用が拡大している


「最近はZWIFT人気もあってローラー台が好調ですね」と話すのは前出の老舗ショップスタッフ。
ZWIFTとは世界中のサイクリストがオンラインでつながり、仮想空間でのレースやトレーニングを共有することができるサービスだ。パワーメーターや、スマートローラーなどの投資が必要だが、市場規模は確実に成長している。このショップではZWIFTを介したクラブ走行会を検討しているという。
編集部でも「富士ヒル×ZWIFT」と称し、毎週木曜日に富士ヒルクライム対策のトレーニングセッションを実施しているが、数百人規模のサイクリストが仮想空間に集う姿は壮観だ。また、国内外のトップ選手もSNSを通じてZWIFTでのトレーニング風景を頻繁に公開している。
ZWIFTはコロナ禍が生んだ「ヒット作」であると同時に、走る場所を失ったサイクリストの「救済」でもある。
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走りに出かけ、家に戻るだけの幸福


それでは今後、サイクリング市場はどうなっていくのだろうか。
チーム走行会はZWIFTに置き換わっていくかもしれない。しかし、すべてのサイクリストがZWIFTを利用できるわけでもない。
とくに、若葉の美しいこれからの季節は外を気持ちよく走りたいというのがサイクリストの本心だろう。そのためには感染拡大の収束が最優先だが、それまでまったく外を走ることはできないのだろうか。
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完全ロックアウトのような事態に陥らないことが前提だが「自転車通勤」「生活必需品の買い物の自転車利用」のふたつは、編集部がサイクリストのみならず広く国民に提案したいアクションだ。少なくとも職場に行かなければならないのだとしたら、電車やバスよりも自転車のほうが感染リスクが少ないのは明らかだ。
また、買い物に自転車を利用することで運動にもなるし、クルマ利用が減ることで交通渋滞の緩和や費用の削減にもなる。
何より自転車は「外」で楽しむもの。トレーニングでは自宅を出て走り、走り終えて自宅に戻る。途中で立ち寄りたい店はしばらくガマン。こんな単純なことでも、今の状況下ではとても幸福なことに感じるのではないだろうか。


「日常」が戻ったとき自転車利用が進んでいるように


東京オリパラも延期になったが、自転車ロードレースコース沿道の自治体の多くは「自転車推進」を掲げたままだ。相模原市のように来年のツアー・オブ・ジャパン誘致を表明した自治体もある。
再び「日常」が戻ることをサイクリストは望んでいる。そして、その「日常」は新たな可能性を秘めているかもしれない。
ある自治体のスポーツ推進担当者はこう話す「このような状況だからこそ自転車の利用が見直される可能性がある。それが何なのか、どういう打ち出しをすべきなのか、その議論は始まったばかりだ」。
「非日常」下で我々国民は、緊急時の方針に従うことが最優先される。一方で来るべき「日常」をよりよいものにするために、サイクリストとして考え、実践することも重要だ。ZWIFT、自転車通勤、家族でのサイクリング、直行直帰のトレーニングライド……。今回のコロナ禍が新しい自転車利用促進のきっかけになるかもしれない。
自転車は心と体を健康にする。編集部では今後もサイクリストができる一つひとつを積み重ね、やがて大きな実となるように、微力ではあるが貢献していきたい。

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