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2019年04月25日

ファンライドアーカイブス 読むトレーニング「住田道場」③

住田道場タイトル

2007年12月号から約1年にわたって月刊ファンライドに連載された「住田道場」の第3回です。シマノレーシングに所属し、アトランタオリンピックロード日本代表にも選ばれた住田修氏によるこの連載は「モノクロ1ページ」という地味な企画ながら、トレーニングに励むサイクリストの心をがっちりつかんだ大人気連載になりました。10年以上の月日を経た今も、「強くなるために今何をすべきか」は不変のテーマだと気づかされます。
※掲載※月刊ファンライド2008年2月号 構成/浅野真則 写真/高田賢治 題字/住田修

今月の教訓
一、練習をさぼるための言い訳を探すな。寒くても、親が死んでも練習はできる
一、これから3カ月で1万km走るべし。今からならまだシーズンに間に合う。
一、目標レースまでの日数を手帳に書き込め。一日一日が勝負だ

其の三、
雪が降っても、寒いだけ、雨が降っても濡れるだけ

練習をサボる言い訳を探してないか?

ついにオリンピックイヤーの2008年や。だれが日本代表に選ばれるか、個人的にはかなり興味があるね。オリンピックは関係ない、という選手も、あと3カ月もすればレースシーズンに突入や。いずれにせよ、選手たちに残されている時間はホンマに限られている。ワカモノよ、目標に向かって日々精進してる?まさか正月の間休んでへんよね?

冬や練習は、走り出すまでは大変や。寒かったり、雪が降ってたり、探そうと思えばいくらでも練習を休む言い訳が見つかるもんや。でもぼくは、レースに負けたときの言い訳を作りたくなかった。練習を休む言い訳を探すんもイヤやった。

「雪がふっても寒いだけ。雨が降っても濡れるだけ。親が死んでも悲しいだけ。彼女にフラれてもへこむだけ」

そう自分に言い聞かせながら、とにかく毎日走りに行くことだけは馬鹿正直に続けたもんや。自分の経験から言うと、同じ週に600km走るのでも、週3回、200km走るより、週6回100km走るほうがはるかにシンドイ。それは自分の弱さと毎回戦わなアカンからや。でも、同じ距離を走る選手がいたら、毎日コツコツ練習できるヤツは、週に2回しか走らんヤツより絶対に強くなれるで。よほど意思が強く、根性がなければ、毎日練習はできへんから、そのあたりのタフさは確実にレース中でも生きてくるんや。

オーバーワーク?そこまで乗ってるのか?

ぼくが1996年のアトランタオリンピックには出場したときには、1月からオリンピック選考会があった春先までに2週間で2000km以上走り込むような合宿を何回も繰り返したもんや。もちろんそれ以外にも、合宿の合間に毎日走りまくった。今のワカモノは、これを聞いてどう思うんやろうか?

「そんなに練習して、ひざとか故障するんじゃないの?」って言うヤツもおるかもしれんな。でも、当時のぼくは、これでも「まだまだ練習し足りへんのと違うか?」と本気で心配しとった。そもそもオーバーワークかどうかは自分で判断できるし、そこまで走ったことはないと思う。ましてや今のワカモノに関しては、ぼくの見る限り「練習し足りへん」ことはあっても。「練習しすぎ」ということはまずあらへんのとちゃうかな。

5月までたっぷり乗り込めば、まだ08シーズンには間に合う。ホンマに強くなりたいと思うのなら、これからの3カ月で1万kmは乗るべきや。この目標を実現するためには、毎日100km乗らなアカン。大変やぞ~。まあ、仕方ないから雨や雪の日はローラー台100kmでもええわ。だけど、これはレース前しかローラー台は使わんかったし、たとえ雨が降っても外に走りに行くけどな。

まあ、それはともかく、本気で強くなりたいヤツは石にかじりついてでもこの目標を達成してみてくれ。確実に来シーズン成績が残せるはずやから。

大会までの日数を手帳に書き込め

でもな、ただ漫然と練習してるだけで絶対強くなれへんよ。前にも話したけど、目標と現時点での自分の実力との差、残された時間を超客観的に把握し、どうやったそれを埋められるかを現実的に考えながらトレーニングせんとな。そのために自分がやっていた方法は、「手帳に残された日数を書き込む」ことや。

絶対に負けられない大会までの日数をカウントダウンし、手帳に書き込み。「あと2カ月くらい」なんて漠然とした書き方やなく、「あと61日」というように、はっきり日数を書いて、大会までの一日一日を大切に過ごすんや。そやけど、ぼくはどんなことがあっても練習を休まんかったから、手帳なんかつけたことないけどね。そういえば、元チームメートの栗村修(現スキル・シマノ スタッフ※注)は、練習量は少なかったけど、距離は必ず毎日つけっとったな!

どや、残された時間の短さにいよいよ気がついたんちゃうか?さあ、ワカモノよ。新しいパーツを買いに行く時間があるなら、自転車に乗れ!とにかく自転車に乗れ今からならまだシーズンに間に合うから。

(※)編集部注/栗村修氏の肩書きは連載当時のもの

sumida
住田修/すみた・おさむ(写真・プロフィールは連載時のもの)
ロードレース2×10段と称される名人。立命館大学を卒業後シマノに入社。アトランタ五輪日本代表。現役時代、その圧倒的な存在感はロードレース界随一と言われ、実力だけでなく、ハートでも魅了する熱い男。現在は仕事中心ながら、走ることはやめない生涯サイクリスト。すね毛を剃らない選手としても有名だった。

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