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2018年07月27日

布袋田沙織のRide on the Earth[第5回]Single Track 6 挑戦記 その3

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前回よりカナダ西部を中心に6日間にわたって行われるステージレース「Single Track 6」のレースレポートをお届けしています。「大自然を満喫しながらのMTB」や「カナダの極上トレイル」をご紹介しながらのレースレポートですが、今回はレース中最大のアクシデントを中心に書こうと思います。

自転車レースは落車と隣り合わせ。分かっていながらもいつ落車するか、しないのか……落車しないギリギリを攻めるのか、安全圏で走るのか……を判断できる冷静な頭と熱いハートがレースには欠かせないですね。私の今回のレース中最大のアクシデントは落車です。落車後に改めてMTB大国であることを実感しました!  落車はイタイことだけではなく主催者や参加者のMTB愛が大きい故の器の深さにすっぽり包んでもらったDay2、Day3をお届けします。

 

DAY2

 

Day2はRed Mountain Resortのスキー場がスタート地点です。一斉スタートだったので初日の反省を踏まえて「前半からしっかり踏んで行こう」と気合十分です。いえ、十二分です。
スタートでスキー場を直登するとゲレンデ脇のシングルを登っていきます。昨日の疲れもありましたが脚はよく回っていたので、少しでも前の人が段差などに詰まったりすれば、パスしていきます。しっかり登り切ると今度はゲレンデ上にパークのように作られたシングルトラックの下りです。全選手でトレインを組むように下っていきます。後ろになればなる程、渋滞しやすく、思うように走れませんが、結構なライダーをパスしながら登っていたので、スムーズに下れる位置で走れていてとても気持ち良く、自分が上手くなったような気分になりました(もうこの時点で落車のカウントダウンは始まっていましたね)。

すると前日に知り合った同じJulianaのJoplinに乗っているEmilyの姿が前に。二人で「今日も最高な下りだね〜」「Joplin最高だよね〜」とか何度かMTB女子トークをしながらトレインはどんどんスピードが上がっていきます。と、目の前に2mくらいのドロップオフ出現! 左には迂回がチラッと見える。Emilyはドロップオフを飛んでいきます。この高さなら少し怖いけど行けるかなぁ〜、えいやっ!ゔぇ!!! 飛び出しのタイミングがずれたぁー!!!  瞬間的に感じた“落車する”(景色は超スローモーション)。 次の瞬間、前輪が刺さり体が前に投げ出されました。ヤバい、ダメかもしれない。コース脇に寄せてもらったけれど、胸を強く打ち呼吸が出来ない!呼吸が戻らない!! 意識が朦朧とする中で“ヤバい、ヤバい、ヤバい”それしか考えられませんでした。30分位するとなんとか立ち上がり、心配するマーシャルに「大丈夫」と言い、遅れを取り返すために一心不乱に走り出しました。今思えば走り出してからの記憶があまりない(笑)。この時が一番ヤバかったのかも……。

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落車後に走っている写真です。目が虚ろですね。転ぶというのは身体にも心にも大きなダメージを残すので落車後は思い通りに走れません。まだまだレースは始まったばかりだというのに……振り返ってもこの日が一番長く辛い日でした。©John Gibson Pictures

落車後にリスタートを切って我に帰ると後ろにはぴったりサポートライダーがいました。それから30分くらいはぴったり後ろについて、無線で私が変わりなく走れていることを本部に報告していました。どうやら落車を聞いた後、すぐに無線で連絡が行き、一番近くにいたサポートライダーが後ろをついて走ってくれていたようです。この安全への配慮を身を以て体験して、改めて「ここはMTB大国でありアウトドアスポーツ大国なんだ!!」と実感しました。

勝手なイメージで、何となく日本人は色々しっかりしていると思っていましたが、自然と共存しながら走るという認識やリスクへの対応はカナダの方がしっかりしているように感じました。冷静な頭と熱いハートだなんて言ったけど、熱いハートと無謀な過信でご迷惑をおかけしました。

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各開催地のローカルライダー達がサポートライダーや、メディカルライダーを務めてくれます。無線を使い、重いリュックを担ぎ走る体力や、駆けつけてくれる時のスピードは並大抵ではありません。私の無事を確認して追い越すときはウィップを決めながら一瞬で見えなくなりました(笑)。©John Gibson Pictures

その後は落車の恐怖が頭にこびりついて体がこわばり、気づいたら脱水状態になっていました。他の日よりは距離が短いぶん勾配がきついので、山頂付近では脱水も含めて歩くこともままならなくて10歩歩いては座る、10歩歩いては座るを繰り返していました。ようやくたどり着いた山頂。あとは下りだけだと喜んだのも束の間、富士見パノラマのDHコースを超えるハードな下りと乾いたパフパフの路面(カナダでは砂埃で前が見えなくなるほどの路面を「パウダー」と言うらしい)にやられて転んで担いてちょっと滑落して、やっとゴールが見えた時には号泣です! 「帰ってきたー!」と叫びながら泣きながらゴールしたのは今でも忘れられないです。

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乾燥した路面「パウダー」はライダーが走れば砂ぼこりが舞います。ただでさえ難しい下りもさらにバイクコントロールがしにくく難易度は上がります。この写真、右側は崖です。急な斜面でのスイッチバックの連続、少しでもバランスを崩せば滑落しそうな崖でのパウダー……泣きました(笑)。©John Gibson Pictures

 

DAY3

 

Day3は前日に落車している私はメディカルチェックからスタート。すぐに路肩に避けてくれたDavidともすっかり仲良しです! レース会場に着くと、会うスタッフ全員に「昨日はよく走りきったね!今日も頑張ってね!」と声をかけられます。中には「YOU最高だよ!」と言ってくれる人や「くノ一最高!」と言ってくれる人もいます。もちろん私はくノ一でも忍者でもないですけど(笑)。
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メディカルテントは日を追うごとに賑わいを見せます。私は脳震盪などのチェックの他、親指の爪が剥がれてしまったのでテーピングを巻いてもらっていました。出来ればお世話になりたくないけどメディカルサポートが充実しているのは心強いです。©John Gibson Pictures

この日は前日の順位でスタート順が決まり、5人づつのブロックでスタートしていきます。前日が汗、鼻水、涙を垂らしながらのゴールなのでスロースタートですが、疲労と恐怖がこびりついた身体には良いペースでした。徐々にペースをあげながら向かった先はSeven Summitsのトレイル。この3日間舞台になったRosslandの中でも特に絶景で、森林限界を超えているので遮るものもなく遥か遠くの山々まで眺めることができます。空の中の一本橋を走っているかのような尾根沿いをずっと繋げて走れる「これぞカナダ!」というトレイルです。登りも下りもハードではあるけどご褒美Dayという感覚でした。この絶景と爽快感もまた忘れられないです!!

走りながらも多くのライダーに前日の落車を乗り越えて今日も走っていることを称える言葉をたくさんかけてもらいました。落車は無いに越したことはないけど、この落車を経て一気に友達が増えました! 世界からライダーが集まっているだけあって、MTB愛が強くて、サドルの上で挑戦したりガッツを出す人は最高! 友達になろうぜ!!気づいたらみんな友達!!Yeah〜!! そんな心地よい雰囲気とハードで爽快なトレイルを肌で楽しんだ前半戦もあっという間に終了です。

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カナダを代表するベストトレイル「Rossland’s Seven Summits Trail」です。webマガジンなどでもBC州のベストトレイル第2位、世界のベストトレイルにも選ばれる程です。ここを走りたくてレースに参加した選手もいました。MTBだからこそ味わえる絶景です!©John Gibson Pictures
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ここも「Rossland’s Seven Summits Trail」です。奥に見える山の山頂まで尾根沿いにトレイルが続いているのが見えますか?ここを走っていきます。楽な道ではないけどそれ以上の感動と感激がありました!©John Gibson Pictures

Day4からはNelsonが次の舞台となります!!

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