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2015年11月09日

パリ・ブレスト・パリ ランドヌール2015 VOL.4 三船雅彦×矢野大介&ファンライド 鼎談

集団はつねに国別での争いだ。

これは古代のロードレースを現代に残すもの。

ヨーロッパ勢に囲まれたアジアの挑戦者たちはどう感じたか。

ナショナリズムへの挑戦

三船:今回驚きだったのは、先頭の人たちはベルギージャージとか、クラブジャージを着ていました。そこですれ違うなか、同じ国や同じクラブの人だとわかるとわざわざ停まるんですよ。遅い人ほど停まっている時間はないはずなのに、自転車を停めて応援したり握りこぶしを突き上げたりしていて、その国の誇りというか、まるで世界選を見ているような気分になりました。

編:ヨーロッパだけにナショナリズムを強く感じられそうですね。

三船:強く感じました。後から確認して、やっぱりなと思ったのが、前回トップでゴールしたフランス人が2人いて、最後に遅れたベルギー人が1人いたんです。フランス人がローテーションを要求するとベルギー人はヤダ!牽かない! ってかたくなだった理由がわかりました(笑)。ここって個人じゃないって気がしますよね。

矢野:世界選手権よりもずっとナショナリズムが強いと思っていて、プロ選手のレースですからお金をもらってレースに出ていますよね。世界選手権は国別なのでお金はもらっていない。優勝したらアルカンシェルを着られます。でも自分のチームにアルカンシェルがいたほうが、今後のためになりますよね。そこが世界選の難しいところで、過去に色々他の国の、自分のチームメートのアシストをしてしまうこともあった。そういうジレンマがありますが、PBPのほうがよっぽどピュアに国対抗ができる。昔のツール・ド・フランスのようですよね。

三船:集団をフォローするようなサポートとか、レースですといっていた昔のPBPとは違うけど、ロードレース創世記を感じさせる場面をたくさん感じた。黎明期のレースは距離も長かったしチェックポイントとかでも停まっていただろうし、交通規制もしてなかった。純粋な競争ってそれだったんですよね。信号の停まり方1つでもテクニックが必要だったり。走っていて何回もタイムスリップしたような気になりました。夜は特にヤバかった。18世紀にいるんじゃないかって。

矢野:入ってくるチェックポイントの集落も古代の雰囲気が(笑)。モダンなのは最後だけですもんね

三船:おっさんの風貌とかもちょっとね(笑)。

矢野:チェックポイントも選手が入ってくるタイミングを見計らうようにどこからともなう人が現れ、がやがやし始める。選手を送り出すファンや子どものまなざしはまさに英雄を見るもので、タイムスリップしたような気になりましたね。現在のモダンレーシングではない雰囲気ですね。

(つづく)


(写真/三船雅彦 取材/編集部)

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