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2018年09月11日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 7-5)宿泊は、食事は、水は、スマホはどうする

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第7章:目指せ!海外ツーリング

7-5)宿泊は、食事は、水は、スマホはどうする

 

海外ツーリングはパッケージツアーでない限り、自分で宿泊や食事の手配をしなければならない。自分の体力が全ての源となるので、しっかりエネルギーを補給し、ゆっくり眠って体力をメインテインする必要がある。帰国後は仕事が待っている身であれば、体調を崩さないよう細心の注意を払う必要があるだろう。無理せず安全に食料や水、宿泊場所を確保することが大切だ。そのためのスマホの活用も考えてみたい。

 

<到着日の宿は事前に予約しておく>

現地へ到着した最初の1泊目は、長時間フライトや自転車の運搬などで疲れた身体を休め、きっちりと自転車の組み立てなどを行うために、少し良いホテルなどを事前に日本から予約しておくことをお勧めする。到着直後の慣れない土地で、自転車を抱えて限られた時間でそれなりの宿泊場所を探すのは、それだけでかなり疲れてしまう。特に夕方〜夜に着く場合などは、よほどの経験者でなければ上手く見つけられず、不当に高い宿代が必要になってしまうリスクもある。

日本からの予約はネットで簡単にできる。Booking.comとかExpediaなど、ホテル選びと予約のできるサイトを活用すればいい。ホテルの一般的な情報だけでなく、利用者の口コミも参照にできる。多くの口コミのあるホテルほど情報の信頼度は高い傾向にある。いろいろな予約サイトを比較すると、同じホテル、同じ条件でも価格が異なる場合もある。一つの予約サイトだけ見るのではなく、複数のサイトを比較しながら検討して選べば良いだろう。もちろん、1泊目だけでなく数泊程度なら全ての旅程の宿泊先を予約してしまっても構わない。現地に着いてから探すよりも安くない場合もあるが、手間と安心を考えればそれもアリだろう。

 

<宿泊先の選び方>

宿のタイプは、予算やニーズに合わせてシティホテル、リゾートホテル、ビジネスホテル、B&B、ユースホステル、ゲストハウスなどさまざまな選択肢がある。予約サイトでは、部屋のシャワーやトイレは個別か、バスタブはあるのか、Wi-Fiが利用可能か、ドライヤーやアメニティーはあるのか、湯沸かし器や冷蔵庫はあるか、などなどそれぞれどのような設備が整っているのかをチェックすることができる。立地状況も確認しホテルの周辺情報も入手できるので、近くにコンビニがあるかなどもチェックしておきたい。朝食がルームチャージにセットとして含まれているかどうかも確認しておこう。

自転車が保管できるかの情報はほとんど無いが、チェックインの際に問い合わせれば、大抵はガレージや倉庫、建物内のスペースなど安全な場所に保管できる。しかし自分の部屋に持ち込めるのが一番なので、ダメもとでも必ず確認する。交渉すればOKになることもあるので怖気ないでトライしてみたい。

海外の場合、ホテルの予約は部屋単位の国も多い。日本は人数単位がほとんどなので何人かでシェアする場合は、日本よりも安い価格で泊まれる可能性がある。予約サイトでは現地ホテルなどの割引セールやキャンペーンなども掲載されているので、上手くいけばかなり安く泊まれることもある。いろんなサイトをまめに良くチェックしていると、ラッキーがあるかもしれない。

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国内でホテルを予約する場合は、いろいろなサイトをチェックすると、より良い条件で宿泊できる可能性がある

 

<現地での宿さがし>

日本出発前に2泊目以降を予約していなければ、現地での宿さがしが必要となる。旅慣れていなければハードルを感じるかもしれないが、何回か経験すれば宿さがしも旅の楽しみとなる。移動しながらのツーリングの場合、天候や体調の変化、トラブルの可能性などもあり事前に予約した宿をキャンセルせざるを得ないこともある。直前や当日ならキャンセル料金がかかることもあるだろう。気ままに自由に楽しむツーリングならば、その日の宿はその日に決めることで旅の自由度が広がる。

その日のツーリングのゴールを迎えたら、宿さがしの始まりだ。大概の街には旅行者に情報を提供するためのツーリスト・オフィス(観光案内所、ビジターセンターなど)があり、宿の紹介だけでなく予約もしてくれるところが多い。ここでは街の地図は大抵無料でもらえるし、一般的な観光情報はもちろん、様々な現地情報も入手できる。当日の午後であれば空いている部屋を格安で提供してくれるケースもある。

ツーリスト・オフィスで宿が見つからないことは通常はあまりないようだが、イベントやお祭りなどがあって、多くの観光客やビジネス客が押し寄せるタイミングでは見つからないこともある。その辺りの情報は事前に入手しておかねばならない。また、スマホでネットにつなげることができれば、検索して当日空いている良い部屋がリーゾナブルに見つけられるかもしれない。当日でなくても、天気予報や体調などが問題なさそうなら、前日やそれ以前に予約しておいてもいいだろう。

尚、ツーリングの基本として夕方暗くなりはじめる前には必ずゴールする。宿さがしを明るいうちに始められるように到着するのがセオリーだ。暗くなると道が分かりづらくなり宿にたどりつくのも一苦労だし、遅くなればツーリスト・オフィスがクローズしてしまうこともある。トラブルなどで大幅に遅れたりした場合、目的のゴールをもっと近くの明るい時間に到着できる街に変更するなどフレキシブルに対応したい。

地元の人はいろいろ教えてくれる
目的地への到着は明るいうちに。道に迷ってしまったら、現地の人にも臆せず声をかけてみよう(写真/長澤 法隆)

 

 

<食糧補給はどうする>

自転車でのツーリングは自分の体がエンジンであり、食料が燃料である。ガス欠にならないよう、しっかりとこまめにエネルギー補給を行う必要があるのは言うまでも無い。日本では僻地に行かない限り、1日中走ってもコンビニやショップが1軒もないという状況は少ない。しかし、その常識は海外では通用しないと認識しておきたい。日本ほどあちこちにコンビニがある国はほとんど無いのだ。

都会や郊外では、レストランや食料を売っている店はあるだろう。しかし、街と街の間の距離が何十キロや場所によっては百キロ単位で離れているところもある。ちなみに筆者が北米大陸のロッキー山脈の山中を走行しているとき、地図上にあった街にたどり着いたが、家が1軒あっただけでその家の名前が街の名前として地図に表示されていたこともあった。

海外をツーリングする場合は、食料と水は入手できるときに必ず入手しておくと安心だ。走行ルート上に街があっても非常に小さくて食料も水も入手できないこともある。地域によってはクルマさえ滅多に通らない場所もあるので、事前にツーリスト・オフィスや宿などで情報をしっかり入手しておきたい。欧米などの場合は、コンビニがなくてもガソリンスタンドで食料や水を調達できるところが多い。トイレも借りられるし、雨や日差しを避けるオアシスにもなる。見つけたらできるだけ立ち寄って、補給を行い休憩もとるようにしたい。

 

<水の確保は重要>

海外では生水は飲んではいけない。日本以外でも水道水をそのまま飲んでも問題ない国もあるが、体調を崩すリスクになりかねないので、ボトルに入って売っているミネラルウォーターなどを飲むべきである。特にインフラが整っていない地域ほど衛生状態が悪くて水道水も汚く、歯を磨くとか顔を洗うのにもミネラルウォーターは必要になる。飲料水は食料を売っているショップや、ガソリンスタンドなどで入手することができる。しかし日本のように自動販売機があちこちにある国は極めて例外的である。

まずは、宿泊先かその周辺で入手してからツーリングをスタートしよう。途中で休憩する際もショップやガソリンスタンドなど飲料水が入手できるところが良く、また昼食などで利用するレストランではボトルを満タンにしてから出発したい。但し、注意するのは氷である。氷だけは現地の水で作られていることがある。氷が原因で体調を崩したというのは、海外では良く聞く失敗事例だ。

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基本的に海外では生水はNG。ペットボトル入りのミネラルウォーターを飲もう(写真/瀬戸 順悟)

 

<熱帯や亜熱帯ではフルーツで水分補給>

水分はミネラルウォーターに限らなくても摂取することができる。東南アジアなどの熱帯や亜熱帯地域では、様々なフルーツが市場や道路沿いの露天商などで売っており、日本に比べると非常に安い。マンゴーやオレンジなど水分をたっぷり含んだフルーツは生水と違って安全であり、喉を潤すだけでなくエネルギー補給にもなる。日本ではあまりお目にかかれない様々なフルーツがあり、それぞれを試してみるのも楽しみである。

特に多くの水分補給ができるのがココナッツ、つまりヤシの実である。熱帯や亜熱帯地域の海辺沿いにはヤシの木が多く、現地の人々の飲み物になっている。ココナッツジュースはカリウムと電解質を多く含み、ツーリングの水分とエネルギー補給には最適かもしれない。ココナッツの果肉はとても栄養価が高いので、ジュースを飲み終わったらお店の人に殻を割ってもらい、内側にある白い果肉をスプーンですくいとって食べると元気が出てくる。

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露天では⽇本ではなかなか⾒かけないフルーツが並ぶ。給⽔とエネルギー補給をかねて試してみよう(写真/本人)

 

<アルコールは水分補給にはならない>

熱帯や亜熱帯地域に限らず、暑い日のツーリングでは、思わずビールをぐびぐびいきたくなる。国や地域によってはミネラルウォーターよりもビールやワインなどのほうが安いところも多々あるのだ。ゴール後に宿で飲むのは構わないが、ライド中はアルコールは控えたい。

アルコールは水分を体外に排出しようとする利尿作用があり、その際にミネラルも一緒に失われてしまう。また、体内のアルコール濃度を下げようとして更に体に水分が必要になり、別途水分補給をせねばならない。そのような状況で暑い中でライドを続ければ、熱中症にもなりやすくアルコールでふらふらして危険である。もちろん言うまでも無く飲酒運転はNGである。飲酒は水分補給にはならず、危険が増すばかりなのでライド中は絶対禁止である。

 

<飲料水が枯渇したらどうする>

飲料水の確保に失敗し、喉がカラカラに渇いて熱中症になりそうになったら・・・。
筆者も海外ツーリングでそのような経験がある。そんな事にならないように対処すべきだが、想定外の事態でどうしても飲料水が必要な場合、川の水や雨水などを飲用可能な状態に浄化する方法を紹介しよう。

 

● 携帯型簡易浄水器の利用

持ち運び可能なポータブル浄水器で、主にポリ塩化ビニル系の袋に川の水などを入れ、ろ過装置を通すことで浄化される。アフリカなどをツーリングする人は必需品でポンプと呼ばれている。「スーパーデリオス」などの商品は300mlを約18秒で浄水できるとされ、数千円で購入できるため、衛生状態の悪い地域へは非常用に持参すると安心である。

 

● 携帯用浄水パック

これは大き目のティーバックのような形で、川の水や生水に入れて浄化するタイプ。銀イオンの殺菌機能により、飲用水に変えることができる。歯磨きの水などにも使え、食中毒の回避にもなる。災害時の飲料水確保用の商品などとしても売られている。

 

● 非常用浄水タブレット

海外の軍隊などが非常用の飲料水確保のために使っている錠剤タイプの塩素系殺菌浄水剤。浄水には数十分~数時間置いておく必要がある。泥や不純物の除去は出来ないので、携帯型簡易浄水器などのフィルターを使うとより綺麗な飲料水になる。筆者も山岳砂漠であるカラコルム山脈やヒンズークシュ山脈をツーリングした際にはこれに助けられた。

 

衛生状態の悪い地域をツーリングする際には、これらを持っていくと安心であり、パックやタブレットと簡易浄水器を併用したり、煮沸したりすれば安全な飲料水が確保できる。

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アウトドアショップに行くと、さまざまな浄水器がある。衛生状態の悪い地域をツーリングする際には必携したい(写真/本人)

 

<スマホを活用する>

国内でのツーリングであれば、多くの方がスマホを利用して現在地やルート確認、観光スポットやコンビニ探しなど、様々に活用しているだろう。海外ツーリングでも現地で同様に使えれば心強い。言葉も文化も民族も異なる土地で、より多くの新鮮な情報があれば、安全も確保しやすくなり、楽しみは更に広がる。ツーリング中にネット環境があれば安心して旅ができるのだ。

食事の場所や宿探し、観光スポットについても検索して日本語に翻訳したりと活用できるし、日本にいるときと同様にお気に入りの写真をSNSにアップしたり、友達や家族にLINEなどで連絡を取ることができる。ツーリングの状況などをレポートしたり、仲間にアドバイスやコメントをもらうこともできるのだ。

ホテルなどではWi-Fi環境があるのが海外でも一般的になりつつあり、Wi-Fiが使えるカフェやフリースポットも増えつつある。しかし、いつでもどこでもスマホでネット環境につなぐには、Wi-FiルーターやプリペイドSIMカードを活用したい。尚、スマホの電池切れ防止対策は念入りに行いたい。海外では充電環境が異なるし、郊外や田舎で充電するのは言葉や慣習の違いから困難な場合もある。余裕をもった予備バッテリーとこまめな節電などで、電池切れをしっかり予防したい。

 

<Wi-Fiルーターをレンタルする>

海外でスマホやPCをインターネットに接続するには、Wi-Fiルーターのレンタルサービスか、プリペイドSIMカードを活用するのが一般的だ。まず、Wi-Fiルーターのレンタルサービスである。これは海外のインターネットに接続できるポケットタイプのルーターを借りて、自分のスマホやPCをこのWi-Fiルーターに接続し、海外でも田舎でも電波さえあればどこでもインターネットを使える環境にするためのサービスである。つまりツーリング中でもスマホでネットが使えるのである。

海外Wi-Fiレンタルの手続きは、予約から機材の受け取り返却まで、すべて日本でできるので、安心でラクである。海外に到着してから四苦八苦しながら、Wi-Fiを使う手続きをする必要はなく、貴重な海外での時間を大切にできる。もちろん現地の空港などでもレンタルできるし、価格も安い場合が多い。但し、電波の届く距離が限られているので、常にルーターを持ち運ばなければならない。また、使い放題ではないので、1日で使える通信容量が決まっており、それを超えてしまうと低速通信になってしまう。レンタルする際には、利用に見合った通信容量のプランをしっかり検討したい。

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若干割高だとしても、Wi-Fiルーターのレンタルは国内で済ませておくほうが、手続きがラクだ(写真/本人)

 

<プリペイドSIMカードはお得>

現地で数日以上の間、スマホやPCでインターネットを使える環境を確保するならば、コスト面からはプリペイドSIMカードを活用する方がお得である。これは、現地の携帯電話会社(キャリア)に対応したプリペイド式の現地SIMカードを購入し、SIMフリースマホに差し替えて利用する方法。自分のSIMフリースマホに差し込めば、プリペイド分の通信が利用できる。現地の国内通話の扱いになるので、料金も割安である。

自分のスマホがSIMフリースマホでなければならないが、2015年5月以降に発売されたスマホのほとんどがSIMフリー対応可能である。それ以前のスマホはSIMロックがかかっているケースが多く、その状態で海外のSIMに差し替えても利用することはできないので事前に確認しておきたい。ちなみに、SIMカードには、電話番号や携帯電話回線に接続するための情報などが書き込まれており、このカードがないと携帯電話回線につなぐことはできない。海外でもSIMカードを差し替えるだけで、使い慣れた自分のスマホがそのまま使えるので、何かと安心できる。

現地SIMカードは、到着地の空港やコンビニで大概は入手できるし、これが一番安い。但し、現地SIMカードをスマホに挿入したのち、接続先設定(APN設定)を行う必要がある。自分でできれば問題ないが、SIMカードを購入したショップなどでお願いすればやってくれる場合が多い。

日本国内でも家電量販店、ネットショップ、空港などで海外用プリペイドSIMを販売しており、事前に購入すれば、出国前に手続きや設定のサポートも受けられる。外国語や設定が不安な人も安心して使うことができるが、現地での購入に比べ通信料金なども含め割高になる。但し、Wi-FiルーターでもプリペイドSIMカードでも電波が届かない圏外では使えない。海外では街から離れると未だに3Gや圏外になることも多い。スマホやガーミンに、事前にGPS機能を活用したOSM(OpenStreetMap)などを入れておけば圏外でも安心である。

 

 

自分でプランニングして実行する海外ツーリングは、パッケージツアーに比べればはるかにハードルは高い。様々な想定外の事態にも直面するだろうし、トラブルや失敗もあるかもしれない。しかしそのハードルをクリアして行くのも楽しみであり、旅を成し遂げた充実感や達成感ははるかに大きい。どこまでできるか自分に挑戦することで、自信を得ることもできるだろう。きっと人生のレガシーになるはずだ。

 

※(トップ写真/長澤 法隆)

 

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は9月25日(火)に公開予定です。お楽しみに!)


第7章:目指せ!海外ツーリング

1)海外ツーリングは、お気軽な時代

2)情報収集が成功の秘訣

3)プランニングの基本と目的地別計画の立て方

4)移動はどうするか?飛行機輪行対策

5)宿泊は、食事は、水は、スマホはどうする

6)自分で自分の身を守る、危機管理が重要

7)ツーリング先進国、欧州を楽しむ

8)快適な自転車ライフを謳歌しよう

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