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2018年08月28日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 7-4)移動はどうするか?飛行機輪行対策

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第7章:目指せ!海外ツーリング

7-4)移動はどうするか?飛行機輪行対策

 

海外ツーリングの悩みのひとつが飛行機輪行である。電車などと同様の普通の輪行をして預けてしまうと、エンドが曲がっただとかフォークにヒビが入ったとかパーツが壊れたなどというようなことになってしまうリスクが高まる。飛行機用の専用輪行ケースも安くはない。頻繁にフライトするならともかく、1回限りのために高価なケースを購入するには抵抗もあるだろう。快適に海外ツーリングをスタートするため、自転車の輸送をより安全に、リーゾナブルに行うノウハウを考えてみよう。

 

<航空会社でも、空港でも、自転車の扱いはバラバラ>

飛行機輪行で自転車を輸送する場合、自分の手を離れてから受け取るまでの間、どのように扱われているかは、ダメージにも影響するのでとても気になる。しかし見に行くことも、自分でコントロールすることもできない他人任せとなる。ダメージのリスクを少しでも抑えるため、まずは扱いを任せる航空会社を慎重に選びたい。目的地に就航している航空会社のHPなどで預かり手荷物の条件などを調べてみる。自転車の扱いは航空会社ごとに異なっており、ケースの大きさや重量の制限もバラバラで、同じ航空会社でも路線やチケットのクラス、マイレージ会員のステータスによっても異なるケースもある。もちろん追加料金が必要な場合もあり、金額も各社でマチマチである。事前予約が必要な航空会社もある。また預かり手荷物の条件が変更になっていることもあるので、こまめにチェックをしておきたい。

一般的にANAやJALなど日本の航空会社は荷物の扱いは丁寧であり、国内であればトラブルは少ない。チェックイン以降は空港の作業員が扱うこととなるが、国際便の場合は海外の到着空港によっては、自転車を倒したり引きずったりといった荒い扱いをされる場合もある。海外の空港の作業員をコントロールすることはできないが、概して先進国の空港や航空会社のほうがトラブルは少ない傾向にあるようだ。実際、自転車がダメージ被害を受けても、その補償や対応は、先進国の航空会社のほうが良いようだ。

 

<飛行機用輪行バッグはどうするか>

航空会社のサイトなどで、預けられる荷物のサイズや重量の制限、料金などを確認したら、飛行機輪行用のケースをどうするかを決める必要がある。専用のハードケースとソフトケース、ダンボールの活用などの手段があるので考えてみたい。

 

● 飛行機輪行専用ハードケース

スーツケースのような硬い素材のケースで、前後輪、ハンドル、ペダル、サドルなどを外して収納する。きちっとパッキングすれば自転車がダメージを受けるリスクは最も低い。ただしツーリング走行時に持っていくことはできず、かなり嵩張るため、保管場所の確保に苦労することがある。またケースそのものの価格も高い。

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かなり嵩張るがハードケースはバイクがダメージを受けるリスクが低い(写真/黒木 尊行)

 

● 飛行機輪行対応のソフトケース

布製の輪行袋にウレタンなどのクッション材などを挟んだ構造になっており、外からの衝撃を吸収し、自転車のダメージを軽減する。ハードケースに比べるとプロテクション効果は劣るが、きっちりパッキングすればかなりリスク低減できる。折り畳んでコンパクトになるタイプが一般的で、使わないときにスペースをとらずに収納できたり、ケース自体の重量が軽いなどのメリットもある。ただし、持って走るには大きく重いので預ける場所を確保する必要はある。

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ソフトケースは折りたたんで持ち運びできるのがメリットだ

 

● 自転車用のダンボール箱

最もコストがかからないのは、自転車メーカーから小売店に納品用に使われたダンボール箱をショップでもらって使う方法である。ショップの人と仲良くしていれば、たいてい無料で入手できる。ただし、外からも中からも衝撃には弱いので、自転車をきっちり保護して箱の中には緩衝材などをしっかり詰めるなどの対策が必要になる。また、気をつけないといけないのがサイズである。各航空会社で預かり荷物の縦横高さのサイズが決まっており、それを超えると超過料金が発生する。無料受託の範囲内となるような大きさへダンボール箱を加工できれば良いが、安全強度を確保しつつ行うのは結構手がかかる。航空会社の規定を良くチェックして対応したい。
この方法でもダンボールや梱包材を、開梱後に現地で保管しておく必要がある。帰国時の現地空港の近くで同様のダンボールや梱包財を入手できるなら、使い捨て対応も可能だ。

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ダンボールは衝撃に弱いので、しっかりと緩衝材などで自転車を保護する必要がある


● DHLなどの国際版宅配便を利用

国際版宅配便の自転車輸送サービスもある。自転車輸送のための宅配便用ダンボールを使って、事前に目的地の空港止めか宿泊先まで別送する。梱包は上記の自転車用のダンボール箱と同様にしっかり行う必要がある。自宅から空港までの移動/運搬の面倒もなく、少ない荷物で移動できて快適である。ただし、通関などに時間がかかる恐れがあるため、充分な時間的余裕が必要であり、料金もかなり高いようだ。

ちなみに、JALは国内線ツアー客を対象にしたロードバイク輸送ボックス「SBCON」(エスビーコン)を開発し、導入に向けて準備中だという。前輪を外して専用のプラスチック製ダンボール箱に入れるだけで、より安全に目的地まで送ることができるようだ。早く普及して欲しい。

 

<超過料金は交渉してみる!?>

海外ツーリングを企画して行き先を決めたら、なる早で航空券の手配をすれば少しでも安いチケットを入手しやすい。しかし飛行機輪行での自転車の料金を良くチェックしておかねば、結局は高くなってしまうこともある。

昨今LCCと呼ばれる格安航空会社が増えて、リーゾナブルな運賃設定も多い。しかし運賃が安いぶん、手荷物の大きさや重さの規定が厳しく、超過料金を厳格に徴収されるケースが増えつつある。飛行機も燃料代を抑えるために燃費のいい中型の機材が増えており、カーゴスペースの関係もあってか自転車は有料とする航空会社も増えているようだ。
手荷物の大きさ規定は事前によくチェックして、できる限りの対応をすべきだ。重さについては様々な条件はあるが15~20kg程度が上限であることが多く、できるだけコンパクトに軽くなるようにしておきたい。

チェックインの際に重さの超過で追加料金を求められても、その場で輪行ケースから重たいものを中心に出せるものは出し、機内持ち込み用の荷物に詰め替えて、交渉するなどすれば何とかなる事もある。安易に妥協せず、できるだけ粘ってみよう。
ただし、自転車の工具類は機内に持ち込めない場合が多く、手荷物検査の際に没収されることがあるので、注意が必要だ。帰りは現地の空港からとなるが、日本語が通じなくても片言の英語と身振り手振りのボデーランゲージでアピールしながら、機内持ち込み用の荷物に詰め替えつつ交渉してみよう。粘れば別の担当者や上司が出てきて何とかなるケースもあるのだ。
しかし、航空会社によっては、手荷物を厳格に規定している場合もあり、頑固な担当者に当たったら融通が利かないこともある。

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航空会社によって手荷物の大きさ規定が異なるため、不要な超過料金がとられないように、あらかじめ確認しておこう

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CO2ボンベの飛行機への持込みは航空会社によっては制限されている。携帯ポンプならほとんど大丈夫だ。

 

<飛行機輪行の方法>

飛行機輪行は、鉄道輪行など普段行っている輪行の仕方とは異なり、乱暴に扱われることを前提としてダメージを受けないようにしっかり対処する必要がある。飛行機輪行専用ハードケースに入れる場合でも、ケースの中で自転車や荷物が暴れないようにきっちりパッキングしなければならない。ベースとなる基本的な輪行については下記をご参照いただきたい。

6-5)どこでもドア!?輪行を極める!

https://funride.jp/serialization/jitensyalife48/

ベースの輪行に加えて、飛行機輪行の追加対策の基本を考えて見よう。

 

● フレームからパーツ類を外して個別梱包

通常の輪行では前後輪を外すくらいだが、飛行機輪行では、まずはハンドル/ステム、シートポスト、ペダル、ボトルケージなどを外す。とくにトラブルが多いのが、リアディレイラーとエンドの部分である。現地の空港での乱暴な扱いなどでリアディレイラーが壊れたり、フレ-ムのエンドが曲がる場合もあるのだ。リアディレイラーをエンドから取り外して、エンドを保護するスペーサーを必ず使うようにしたい。
外した小物や工具などはバラバラにせず、適当な大きさの箱などに収めて動かないようにパッキングしておく。ホイールは例えば使い古しのTシャツなどを着せてあげれば、スポークやリムが保護される。飛行中は機体のカーゴ室の気圧が低くなるので、空気を抜いておくことを忘れないようにしたい。

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リアディレイラーとエンドはとくにダメージを受けやすい部分。壊れてしまうと、修理もしづらい部分なので、必ず外しておこう

 

● フレームを保護する

フレームは乱雑な扱いを受けて傷がついたり、酷い場合にはヒビが入ったりすることもある。フレームカバーは必須であり、フレームカバーがなければタオルなどで保護してやる必要がある。BB周りやチェーンステイはチェーンリングやクランクで直接衝撃を受けにくいが、ダウンチューブとトップチューブのヘッドチューブ寄り、シートチューブのシートポスト寄り、フォークとシートステイのブレーキ周辺をしっかり保護しよう。
ブレーキ本体やデュアルコントロールレバーなどの保護も忘れないようにしたい。チェーンリングやチェーンは他を傷つける恐れがあるので、きっちり覆うように固定しておこう。

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チェーンやチェーンリングは他の箇所を傷つけてしまうおそれがあるので、しっかりと保護しよう

 

● 梱包材でしっかりパッキング

ケースの中で外したパーツやチェーンなどが暴れたり、中身がズレたり動いたりしないように、また多少動いてもダメージにならないようにしっかりパッキングする必要がある。チェーンとクランクは動かないように固定しておこう。
隙間には新聞紙などを丸めて詰め込んで中身が動かないようにし、DIYショップなどで売っている気泡入り緩衝材 (一般的にプチプチ呼ばれている) などで、各部と全体を包み込むように布製ガムテープなどで巻きつけておくと良いだろう。
収納はフレームを入れた後、小物を入れた箱など重たいものから下にして、シューズやシートポストなどを入れてホイールでしっかり挟み込むようにすれば動きにくい。上部には衣類などの軽いものを入れておけば、バランスが良くなるし緩衝材にもなる。

 

<空港との移動も考慮する>

空港までと空港からの移動も悩むポイントである。コストセーブで自転車ショップからもらったダンボール箱に完璧にパッキングしたとしても、それを空港まで持っていくのにワゴンタクシーを使ったり宅配便で送付せざるを得ないならば、結局は高くついてしまう。
自家用車で空港まで運べば、旅の期間の駐車場代はかかるがコストと移動運搬の苦労を考えれば最もリーゾナブルに収まるかもしれない。仲間と一緒なら相乗りで割り勘にすれば、ずっと安上がりになる。自家用車がなければレンタカーで移動運搬して空港に乗り捨てるのもアリだ。

飛行機輪行用のケースならば、運搬しやすいようにキャスターやベルトが装着されているだろうから、交通機関を利用して移動しても良いだろう。しかし通常の輪行よりも嵩張り重いため移動が大変なだけでなく、周りの乗客にも迷惑をかけないよう通常以上の気配りが必要だ。自宅から駅までの運搬や乗り換え時には、従来以上の苦労を強いられるだろう。ちなみにバスの利用がある場合は、大きな飛行機輪行用のケースの持ち込みは拒否されることもあるので、事前にチェックが必要だ。
自家用車に積んで奥様に空港まで送迎してもらえば、移動費用は一番安いだろうが、その対価はずっと高くつくリスクを覚悟せねばならない!?

 

<空港チェックインでの受付>

空港に着いたら航空会社のチェックインカウンターを探す。できれば事前に調べておいて大荷物を持ってウロウロしないようにしたい。カウンターが長蛇の列の場合も多く、自転車の場合は通常よりも時間がかかることもあるので、早めに行くようにしたい。預ける際には自転車であることを伝え、必ず割れ物注意のタグ(フラッジャイルタグ)を付けてもらう。サイズを測られて規定に収まっているかをチェックされるが、混雑している時などは重さの計量だけの場合もある。

海外の空港などではケースを開かされ、中身チェックをして自転車であることを確認されることもある。また同意書の確認と署名を求められることもある。破損した際、補償は求めないことに同意し署名させられるのである。ここまで来て署名拒否する人はいないだろうが、破損しないように万全のパッキングを行っていれば自信を持って署名できるはずだ。
また、航空会社や空港によっては、特殊手荷物の窓口に持っていくように案内されることもある。サーフボードやスキー板、大きな楽器などと同様に大型で特殊な形をした手荷物として預かってくれる。一般の手荷物とは別のバルクカーゴ室に積み込まれるので、ダメージのリスクは低減するかもしれない。

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空港によっては、特殊手荷物の窓口で預ける場合もある(写真/菱田 恵美子)

 

<現地空港到着時の受け取り>

現地空港に到着したら入国審査を済ませ、手荷物受取所へ向かう。無事自転車が出てくれば良いが、いつまでたっても出てこず、ベルトコンベアが止まって次の到着便の案内になってしまうことがある。出発地で預けた際にコンベアで運ばれて行ったからといって、現地でもコンベアで運ばれてくるとは限らないのだ。手荷物受取所の出口付近に置かれていたり、人通りの邪魔にならない場所に置かれていることもある。発見出来なければ係の人に尋ねると大概の場合はちゃんと教えてくれる。

自転車を受け取ったら、損傷がなさそうか外観をチェックする。大きなダメージがあれば、その場で開封して中身を確認する。中身に損傷が見つかったら取り敢えず航空会社のカウンターに行って破損の証明をもらっておく。後の保険請求に必要だ。また、同意書には署名したものの、場合によっては航空会社が何らかの補償をしてくれることもあるのだ。
税関検査では自転車は大きく目に付きやすいので、中身がなんであるか問われやすい。開封を求められ中身をチェックされることもあるが、販売目的ではないこと、ツーリングをして日本に持って帰ることを説明すれば普通は問題なく通してくれる。

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自転車はベルトコンベアではなく、別窓口から出てくることも。全く見当違いな入り口に放置されることもある(写真/菱田 恵美子)

 

<現地空港からの移動>

現地に無事到着したらまずは、ホテルなどの宿泊先への移動である。空港で自転車を組み立てる場合もあるが、鉄道の輪行とは違ってかなりの時間と工数が必要であり、国によっては治安リスクもあるので、まずはホテルに移動し、部屋で落ち着いてきっちりと組み立てることをお勧めする。
移動は自転車ケースが積み込めるワゴンタクシーなどが望ましい。空港からホテルまで直接行ける他の交通機関の選択肢が無い場合が多いのだ。
宿泊ホテルによっては送迎バスがあるので、事前に自転車があることを伝えて予約しておきたい。

もしくは空港からレンタカーという手もある。自転車を積み込めるステーションワゴンやハッチバック、ワンボックスタイプなどを事前に予約しておこう。その後レンタカーを活用して観光したり、サイクリングを楽しむフィールドまでのアクセスなどにも使えるのでとても便利だ。言うまでもないが、その国の道交法は事前に確認しておきたい。

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市街地リムジンバスは大型荷物スペースがあって移動に便利。写真はカナダカルガリーからバンフのリムジン(写真/菱田 恵美子)

 

初日の宿は、自転車は部屋へ持ち込むことのできる、比較的グレードの高いホテルがお勧めである。自転車を良くチェックしてきっちりと組み立て、長旅の疲れを癒して、これからのサイクリングに備えたい。いよいよ夢の海外ツーリングのスタートである!

 

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は9月11日(火)に公開予定です。お楽しみに!)

 


第7章:目指せ!海外ツーリング

1)海外ツーリングは、お気軽な時代

2)情報収集が成功の秘訣

3)プランニングの基本と目的地別計画の立て方

4)移動はどうするか?飛行機輪行対策

5)宿泊は、食事は、水は、スマホはどうする

6)自分で自分の身を守る、危機管理が重要

7)ツーリング先進国、欧州を楽しむ

8)快適な自転車ライフを謳歌しよう

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