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2017年07月18日

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 4-4) ジテツウ用バイクと必須アイテム

瀬戸圭祐の 「快適自転車ライフ宣言」 第4章:ジテツウで、毎日をヴィヴィッドに、豊かな楽しみを!

4-4) ジテツウ用バイクと必須アイテム

 

自転車選びはジテツウに限らず、自転車をどう楽しみたいかという方向性を自分で持つことからはじまる。ジテツウの楽しみの先には休日のサイクリングやイベント参加、本格的なツーリングや自転車そのものへの拘りなどといった、多くの楽しみが待っている。どんな事をしたいのかを考えるのも楽しみなのである。

ジテツウはスポーツ車ならば行うことはできるが、多くの種類の中から選ぶには、まずはどのように使いたいのかを良く検討してジャンルを絞り、その中で予算と相談して決めればいい。

 

クロスバイク

クロスバイクは21世紀になった頃からの新たなジャンルの自転車で、MTBの乗りやすさや走破性と、ロードバイクのハイスピード性能を兼ね備えたいいとこどりの自転車である。それぞれの機能の専門性は高くはないが、街中のチョイ乗りから日帰りサイクリング、ツーリングにも使用可能であり、ジテツウだけでなく幅広い用途に対応できる。日常と非日常をクロスさせる自転車ということからクロスオーバーバイクとしてこの名前が付いたと言われている。

ロードバイクのハンドルをドロップバーからフラットタイプにして、28~35C などの少し太めのタイヤを履いたロードバイク派生型のモデルは、フラットバーロードとも言う。ベースがロードバイクなので10kgを切る軽いモデルもあり、スピードもかなり出しやすい。ハンドルがフラットだから操作性が高く、ブレーキは制動力の大きなVブレーキなどが使われる場合が多く、街中での乗りやすさが考慮されている。

一方、MTBのフレームをベースに細めのオンロードタイヤを入れたMTB派生型は、フォークにサスペンションを装備しているモデルもあり、悪路や段差などの走破性を保持している。

ジテツウをはじめる場合は、クロスバイクを選ぶ人が多い。そして、ジテツウだけでなくツーリングやロングライドなども目的とするならば、クロスバイクをお勧めする。スポーツバイクの軽快な走りを楽しむことができ、細いタイヤに慣れていけばロードバイクへのステップにもなる。クロスバイクは長く気軽に乗り続けることができ、自転車ライフにも潤いが出てくるだろう。スマートにさりげなく乗りこなせば、環境や健康意識の高さを感じさせて、ちょっと内面のオシャレをアピールできるかもしれない。

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ロードバイク

ロードバイクは舗装されたオンロードを高速走行するためのスポーツバイクである。ツール・ド・フランスなどの自転車レースで100年以上にわたりスピードを追求してきた機能美が凝縮されており、ある意味芸術作品でもある。

初心者にとってロードバイクは大きく前傾する慣れないライディングポジションや、ドロップハンドルの持ち方、ブレーキの握り方に加え、変速の操作にも戸惑うだろう。細いタイヤは低速では安定しづらく、うかつに段差などに乗り上げるとパンクするなど、いろんなライディングテクニックが要求される。安易にカッコよさだけで判断せず、自分の技量と今後の自転車ライフを良く考えて購入したい。

ロードバイクには純粋な競技用と、スピードと快適性の両立を追求したコンフォートタイプがある。競技用は常用速度が40Km程度の高速走行を前提とした作りで、きつい前傾姿勢のポジション設計となっている。価格的にも何十万円以上もするモデルが多く、本格的にレースを目指す人のためのモデルである。

ジテツウで使うには扱いも容易ではなく、価格的にもジテツウ使用だけならもったいないだろう。

コンフォートタイプは競技用に比べ、ハンドル位置が比較的高く、トップチューブも短かめで、少しアップライトにゆったりと乗れるように作られている。さらにタイヤは競技用よりも少し太めのものが多く、ギアもフロントはとくにインナーが小さいコンパクトドライブで、ワイドなギア設定となっている。ドロップバーのブレーキングに慣れないエントリー者用に、アシストブレーキレバーが装着されているモデルもある。

ジテツウには競技用よりもラクなポジションで、周りも見ながら走りやすいコンフォートタイプがお勧めだ。

最近はいきなりロードバイクを購入する初心者が増えているが、コンフォートタイプでも素人やビギナーが乗るには慣れが必要である。その極めて細いタイヤは6-10気圧というハイプレッシャーでキンキンに硬く、初めて乗るには違和感があるだろう。また乗車ポジションはコンフォートタイプでもかなりの前傾姿勢であり、慣れないと、手、肩、首そして足腰にも痛みを感じるだろうし、尻も痛くなりやすい。

ライディングテクニックを身に付け、経験を積んで乗りこなせるようになれば、軽快な走りを満喫しながらのジテツウが楽しめる。値段は十万円以上からで百万円以上するモデルもある。1日100km以上の長距離ツーリングでも走れるモデルなので、購入するならば宝の持ち腐れにならないよう、しっかりと目的を持ってほしい。

自転車好きが走りとスピードを求めて行き着くところはロードバイクである。

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MTB(マウンテンバイク)

全くの初心者でも乗りやすいスポーツサイクルはMTBである。サドルの高さを大きく調整できるので、慣れるまでは低めにしてママチャリのようにサドルに座るポジションも取ることができる。ハンドルがフラットバーであることから違和感が少なく握りやすいし、ロードバイクに比べて格段にラクなポジションが取りやすい。太くゴツゴツしたタイヤは安定感があり、多少の段差などもろともせず、パンクもしにくい。ギアチェンジもハンドルの手元で簡単にできるし、坂道もラクに上れる軽いギア設定がある。丈夫で壊れにくく、ブレーキも強力で制動距離も短くなり、直進安定性も良い。

スポーツサイクルとしては初心者には乗りやすい、やさしいモデルである。

一方、MTBは本来山道を走る自転車であり、ダートやシングルトラック(ハイキング/登山道)、街中を走るには適しているが、中長距離を効率良く走るにはクロスバイクやロードバイクよりも性能的に劣る。昔のMTBは山道を走ることに特化していたため、頑丈で重たく部品の選択肢も少なかったが、今では軽くて耐久性が高くまた荷物も積みやすいモデルも多くある。

耐久性とともにバッグ類を着けやすく積載性能も高いことから山道だけでなく、世界一周などの長距離ツーリングにも使われることもある。

しかしジテツウとして使うには、その頑強さや積載機能は過剰レベルである。

種類は用途によって細分化され、その分類もメーカーによってまちまちであるが、大きく分けるとリアサスペンションのないハードテイル、リアもフロントもサスペンションのあるフルサスモデル、山道の下りに特化したダウンヒルモデルになる。

見た目にはカッコいいサスペンションは路面の衝撃を吸収し、乗り心地を大きく向上させる。さらにタイヤを路面にしっかり接地させグリップ力を高める効果があり、しなやかに走りしっかり止まれる。そして急ブレ-キの際にはとくに前輪にかかる大きな力を吸収し車輪がロックする限界を高めている。

反面、ペダリングの力を吸収するためエネルギー効率は悪く、舗装路で速く走るには向かない。とくにリアサスペンションはその影響が大きい。

MTBの中でジテツウにお勧めなのはエネルギーロスの少ないハードテイルタイプのモデル、もしくはサスペンションの無いリジッドモデルである。

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小径車

<スモールバイク/ミニベロ>

最近街中でホイールの小さいオシャレな自転車を良く見かけるようになったが、一般的には車輪が20インチ程度より小さい小径のモデルをスモールバイク(ミニベロ)と言う。人気の秘密はそのかわいらしいスタイルにもあるが、軽く乗れて取り回しがしやすいことにある。ホイールが小さいとその分重心が下がるので安定感があり、全長が短くなることから機敏なハンドル操作がしやすく小回りが利く。また、回転させる車輪が小さいことから初動のエネルギーが少なくてすみ、信号などでのストップ&ゴーではこぎだしが軽快で都会に向いている。

小径だとスピードも遅くなるかと思われがちだが、ギア比がその分大きく設定されているため、ペダル一回転で進む距離は大径車と変わらず、中には小径車にもかかわらずロードバイク顔負けのスピードを楽しめるモデルもある。反面ホイールベースが短くなることで直進性が犠牲になり、またタイヤも小さいことから減りが早くなる。回転部分が小さいということはジャイロ効果が少なくなり倒れやすくなる。50円玉と500円玉では500円玉のほうが倒れずに長く転がるのと同じである。

また初動のエネルギーが小さいということは、逆に言えばこぎ続けなければすぐにスピードが落ちることとなる。慣性が小さく脚を止めると直ぐに減速するので、高速走行を維持するには脚を回し続ける必要がある。また、ダウンヒルなどではスピードが出にくく高速安定性も劣ってしまう。

サドルと後輪の間のスペースが広くなるのも小径車の特徴で、そのスペースを活用した大きなサドルバッグの装着が可能だ。リュックサックがそのままサドルバッグとして装着できるタイプもありワンタッチ着脱でそのまま背負って行ける。

ビジネスタイプのリュックもあるので、ジテツウ用としてはとても便利であり筆者は長年愛用している。

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<フォールディングバイク(折りたたみ車)>

フレームの一部などを分断して小さく折りたたむことのできる自転車のことで、ほとんどが小径ホイールのスモールバイクである。最大のメリットは簡単に輪行ができることだ。タイヤを外すこともなくほんの数分以内で輪行準備OKである。クルマのトランクにも入れやすく、また室内保管にもとても便利である。スモールバイクなので折りたたんでの携帯性が高く、とても便利な自転車だ。出張先まで自転車で行き、帰路は輪行する場合などは重宝する。そのぶん走行性能が犠牲になる部分もあり、また構造が複雑となるため部品数も増え、強度確保のために重量も増える。もちろん価格も高くなるが便利さを考えればリーズナブルである。

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個性的なバイク

<ランドナー>

ランドナーとは小旅行車という意味で、昭和の時代にはサイクリング車の主流であった。キャリアを装着しやすいフレームで、泥除けもあって太めのタイヤを履いており、安定した走りで雨にも強い。実はジテツウにとても適した自転車なのかもしれない。昭和時代の大学のサイクリングクラブ等では、ほぼ全員がランドナーでツーリングをしていたが、80年代のMTBの出現、2000年台のクロスバイクの台頭により源氏に滅ぼされた平家のように衰退した。現在でも山奥に平家落人集落が残っているように専門の職人が細々と作り続けているが、高価格になってしまった。しかし未だに根強いファンは健在であり、昨今の自転車ブームに乗じて復活の兆しもある。

 

<シクロクロス>

シクロクロスはMTBがこの世に出現するはるか昔から、ヨーロッパでのロードレースオフシーズン(冬季)に主にオフロードでのトレーニング用として使われていた自転車だ。ロードバイクにゴツゴツのトレッドのある細いタイヤをつけ、ブレーキは泥の詰まりにくいカンティブレーキやディスクブレーキなどMTBと同様の制動力の高いものが装備されている。担ぎやすくできておりロードバイク並みの走りの軽さとMTB並みの走破性を持つバイクだが、値段も十数万円以上とロードバイク並みである。クロスバイクはこのシクロクロスから派生したとの説もある。

ジテツウに使うには、その高機能は宝の持ち腐れになりかねないが、ロードバイクの軽快性とMTBの走破性を兼ね揃えているのは魅了だ。

 

<リカンベント>

Recumbentとは「寝そべる」と言う意味である。非常に低いポジションで視点が地面に近く臨場的なスピード感が楽しめる。桜や紅葉を見上げて走るのは最高。街中でのチョイ乗りでもパフォーマンスは高く、まわりからの注目度はNo.1だ。

スタート時の乗り出しが難しいが、それさえ慣れれば誰でも簡単に乗れる。乗りこなせれば長時間のライディングでも疲れにくい。姿勢が非常に低いので空気抵抗が少なく、また背中にも体重が分散されてペダリングの効率も高い。車体は重いので上りはつらいが、平地では快適にニコニコしながら楽しむことができるモデルだ。ジテツウに使っても高い注目度を得ること間違いなしである。

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ジテツウのための必須アイテム


<ヘルメット>

安全のためのアイテムがジテツウには必要不可欠である。まずはヘルメット。着用を義務付けている先進国もあり、万が一の時に身を守る必需品である。クルマのシートベルトと同様の感覚で必ず装着する。転倒や事故の際に頭を守るためだけでなく、目立つことでクルマなどに存在をアピールし、事故を抑制することが大きな目的である。

ヘルメット購入の際には一度かぶってフィット感を確かめておきたい。頭の形も大きさも人それぞれであり、とくに海外ブランドのものは日本人の頭にぴったりと合わないこともある。ヘルメットは前頭部から深めにかぶりメガネやサングラスとの隙間をあまり空けないようにする。次に後頭部にあるサイズを調整するベルトやダイアルで締め具合を調節する。その状態で頭を振ってずれなければOKだ。最後にあごのストラップを締めるが、これが緩いと有事の際にヘルメットが外れてしまい役にたたなくなるので、苦しくならない範囲でできるだけしっかりと締めておきたい。
メガネやサングラスはヘルメットを脱いだ際にはずれないようストラップの下にセットしておこう。尚、一度転倒などで大きなダメージを受けたヘルメットは機能が著しく低下するので使えない。筆者も転倒で頭を強打した事が2度あり、実際にヘルメットが割れ、衝撃を吸収してくれたことで命を救われた。

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ストラップの長さは指一本の余裕があるくらいが、安全と快適面からちょうどいい

 

<カギ>

世の中にスポーツバイクが多くなるに比例して、盗難件数も増えている。とくに高価なバイクは目立ちやすく狙われやすい。カギは2つかけると盗難のリスクが大きく減少する。つまり盗む側からすれば2つのカギを開ける、または壊す事は時間がかかり見つかってしまうから始めから諦めるのである。ひとつは見た目にゴツく頑丈そうなカギを準備することである。ワイヤーなら直径が1cm以上あれば視覚的かつ心理的な効果は大きい。そして必ずガードレールや標識のポール、柵や欄干などの動かせない構造物にくくりつけておく。

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<ライト>

ジテツウでは帰路が夜になる場合がほとんどで、ライトは必需品である。日の短い冬季には早朝出勤の場合に必要な事もある。ライトの一番の目的はクルマや歩行者に対しての存在のアピールである。路面を照らすことと思われがちだが、それは街灯の役目であり通常の自転車用のライト1灯では不十分である。暗闇の道で路面の安全を確保するには、数千カンデラと十分な光度のあるものが必要となる。最近では5000カンデラ以上の光度があるライトもありこれなら安心だ。
後方には赤いライトを使う。追い抜きですぐ横をかすめて行くクルマへのアピールはとても重要であり事故防止につながる。他にも反射板をペダルやサドルの後、ヘルメット、衣類やリュックサックなどにできるだけ多く付けておき、朦朧としているドライバーでもすぐに気が付くようにしておきたい。ライトは明るくコンパクトなLEDライトが主流であり、できるだけ光度の高いものを選ぶようにしたい。

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<予備チューブと携帯ポンプ>

パンクはジテツウでは多いトラブルである。これに対処できなければ走行不能になりジテツウは続けられない。修理が必要不可欠であるため、スペアチューブの交換やパンク修理の仕方は事前に習得しておくのが安心だ。パンク時の対応はチューブを取り替えるのが原則である。つまり替えチューブ持参は基本条件なのだ。もちろん空気を入れるための携帯ポンプ、チューブを取り出すタイヤレバー3本も必須アイテムである。パンクしたチューブは持ち帰って自宅でゆっくり修理すれば良い。しかし2度以上パンクした場合や、万が一にも替えチューブを忘れた場合にはその場でのパンク修理が必要になる。100円ショップでもコンパクトなパンク修理キットを売っているので持っておきたい。

 

 

(瀬戸圭祐さんの「快適自転車ライフ宣言」は隔週火曜日掲載です。次回は8月1日(火)に公開予定です。お楽しみに!)

(写真/本人)


第4章:ジテツウで、毎日をヴィヴィッドに、豊かな楽しみを!

1)自転車が毎日をイキイキさせる!

2)探究心に火が付く?ルート開拓

3)遠くてもあきらめない、ジテツウは楽しめる!

4)ジテツウ用バイクと必須アイテム

5)安全第一!市街地、幹線道路の走行テクニック

6)ミニマイズ!事故を事前に回避する

7)迅速に!交通事故での対応

8)確実に!盗難対策と自転車保険

9)自転車は社会を、未来を、地球を救う!

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