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2019年07月30日

【READY STEADY TOKYO】テストイベントを終えて。東京オリンピック自転車ロードレースの成果と課題は?

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7月21日、READY STEADY TOKYOオリンピック自転車ロードレースの実施に向けたテストイベントが行われました。
プレイベントとして1年後のオリンピックコースよりも距離は短縮されたが、東京都内から三県をまたぐ179kmというラインレースの実施は史上初のこと。
この壮大なテストイベントは果たして成功したのでしょうか?
 
そこでキーマンとなる人物のインタビューを交えながらレースを振り返ってみましょう。
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スタート地点の「武蔵野の森公園」には多くのファンが詰め掛けバリアを2重、3重に埋め尽くした
 
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オリンピック競技開催地としての期待、喜びが多くのファンを集めた

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サインボードには様々な国の名前が刻まれた
 
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道志道での追走集団が決定的な動きとなった
 
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富士スピードウェイでは2位に入った現イタリアチャンピオンのダヴィデ・フォルモロ(イタリアナショナルチーム)が集団を牽引
 
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プレスのフォトグラファーは完全に管理された状態での撮影となった
 
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2回目の富士スピードウェイ通過時には9人の先頭集団に
 

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 屈強な選手でも後続は蛇行しながら三国峠のもっともきつい箇所を上る

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優勝したウリッシ(イタリアナショナルチーム)は逃げるというよりもテンポのようなペースで走っている印象
 
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三国峠から40kmを単独で逃げ切きったウリッシが優勝。2位にフォルモロが続きイタリアのワンツーフィニッシュ

「安全に確実にレースを運営する」を第一の目的に

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テストイベントの終了後には森泰夫大会運営次長/片山右京スポーツマネージャーの会見が行われた。(以下、敬称略)

片山●一番最初の印象は事故もなく、けが人もなく、コンボイを無事に運べたことです。本当にありがとうございます。

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車列(コンボイ)

森●これだけの距離で大規模な道路規制を実施する日本でも初めてのケースでした。また、参議院選挙と重なり周辺住民、自治体、警察の方々にご理解とご協力をいただき、レースが無事に終了したことにお礼を申し上げたい。
我々としては安全に確実に、レース運営をすることを第一の目的としています。その目的は達成できたのかなと思います。

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サイクリスト定番コースだが、これだけの人が訪れる日はこのテストイベントを除いて2020年の本番だけかもしれない©️nue

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都内から三県をまたぐという大規模なイベント。国民性もあるが、整然としたレース観戦となった©️nue

来年に向けて見えてきた改善点や問題点

森●今回テストイベントとしていくつかのポイントがありました。
ひとつは、これだけ広域にレースを行うことで、周辺の自治体や警察とどのような連携をしていくかです。道路規制の問題では、こちら(組織委員会)も自治体や警察と様々な会議を重ねて計画を行っていきます。
もうひとつはオペーレーション段階で、我々組織委員会のメンバー、また自治体、警察、コントラクターの方々、ボランティアの方々が一体となって運営をし、かつ統合していくために作業のトレーニングを行うということがありました。

それ以外では広域無線のテストや、選手に事故があった時の医療体制として医療責任者をコンボイに同行させるなどの体制をとったことです。

いずれにしても比較的スムーズに行うことができ、まずは運営が安全にできるということがわかったのが大きな収穫でした。

これからは、観客にどのようにして楽しんでいいただくか、どういうところで見ていただくか、その上で安全に運営するにはどうしたらいいか、これまでから一歩進めた形でオリンピックに向けて検討を進めていくことになります。

NF(ナショナルフェデレーション)やUCIはどんな評価を

片山●終わった直後に「素晴らしかった」と言っていただいて。UCI(国際自転車競技連合)やJCF(日本自転車競技連盟)のコミッセールの方々からも「(これまでのテストイベントと比べて)これほどまでオーガナイズされた大会は見たことがない」というお褒めの言葉をいただきました。
日本でもこれだけ長い距離のレースができるということが証明できたわけで、次に進めていきたいですね。

本番に向けた意気込みは 

森●とにかくロードレースは安全に行うのが大前提です。それに加えて、観客にどう見ていただくか。これからはここを様々な角度から進めていきたい。
これまで、これだけの長距離ロードレースは開催することができなかったのですが、テストイベントが行えて、本番のオリンピックで素晴らしいものを作って、これから日本でもこういうもの(レース)ができるように、そういうスタートにできるように、関係者一同思っているところです。
 
片山●ヨーロッパでの自転車競技はツール・ド・フランスに代表されるようにメジャースポーツです。オリンピック種目としての注目度も高い。日本では自転車活用推進法案が可決されたばかりで「自転車は車両」ということが明確にされたものの、さまざまな問題を抱えています。オリンピックを機に正しい乗り方を啓蒙するなど、スポーツとしての側面からも問題解決に取り組んでいきたいです。何より日本人選手がオリンピックで活躍してくれることで、いろいろなメッセージを送ることができます。(自転車の)ステージが上がって欲しいし、上げなければいけないと思っています。

選手からの評価は

片山●このサバイバルコースを完走した全員が勝者に等しいコースです。その辺りを選手はお互いに笑いながら毒づいていましたけど「すごいコースだ」と喜んでいました。 

日本人選手との差

片山●他のスポーツと同じように自転車でもちゃんとした環境を作れば、勝てる選手を輩出できると信じています。だからこそ我々はこういう大会でチャンスをつかめるように、選手のモチベーションを上げなければならない。東京オリンピックまでには苦しいかもしれないですが、今回をきっかけに、今後のオリンピックでメダルを取ったり、ツール・ド・フランスに出場したり、世界選手権で活躍したり、という選手を必ず出だせるようにできるはずです。

オリンピックのすごいところは全員がポジティブに同じ方向を向くことです。自転車の世界もそういう形になってきているので、慢心することなく邁進したいです。

 

一都三県にまたがるレースの難しさ 手応えも含めて

森●広域のロードレース組織と体制を作り、実施することは大変大きなものです。車列で動きながら競技運営をしていくセクション、会場のヘッドクォーターのセクション、各エリアにはブランチと言われる機能をつくり、無線などで連携を取りながら進めてきました。
今回はこれらが機能したと思います。周辺の自治体、警察とは打ち合わせも含めて様々なコミュニケーションを取らせていただき、一つひとつ階段を上っているところで、今回出た課題も一緒に乗り越えていく必要があります。一番大事なのは統合して進めていくということです。そういう意味では一定の効果が出たのかなと思います。

 

本番に向けて暑さなどの懸念材料は

片山●今回は湿度が高かったり、暑さに慣れていない状態もありました。ただ、標高の低い都内は暑くても山梨(道志村)に入ると日陰があったり、山中湖は標高が1,000mでカラッとしています。軽率なことはいえませんが、そういった意味では他の競技とくらべて良い部分もあるのかもしれません。
もちろん課題はありますし、暑さ対策の準備はします。しかし世界ではより過酷な環境で自転車レースが行われています。暑さの問題が一人歩きして、少し誤解を招くのが怖いと思っています。

森●対策の部分としては、まず選手向けの医療体制をしっかり構築していくことがあります。車列に医療の責任者も同乗し救急車も同行します。その診察を元に、追加の対応ができるような体制を整えています。

無事レースが成立したことが一番良かった。

JCF関係者談

先行した車列に乗っていたので、選手や本体の詳細な動きは(終わったばかりで)知らされていないが、UCIのテクニカルデレケートらの指示で動いたら、警察のシミュレーションと違っていたと指摘を受けたり、連携という点では不十分な部分もありました。
とはいえ、警察は用意された資料に沿って忠実に行っていますから「ズレ」に対して柔軟には対応できないのは当然。コミュニケーションを取っていけばさらに良くなっていくでしょう。

上りの感触としては自分の中では良かった。

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談:岡 篤志選手(宇都宮ブリッツェン)日本人1位(全体15位) 

岡●180kmと長く、絶えずアップダウンがあり籠坂峠を2回上り、一番きつい三国峠があり、そこで力がある選手が残るようなレースだったと思います。
これまででもっとも厳しいコースかといえば、そうではなかったですね。フランスで走ったツール・ド・ラブニールというアンダー23版のツール・ド・フランスのコースで、もっと長くてきつい上りがあって、勝負できずに終わってしまったことがあります。
今回は結果的に勝負ができませんでした。序盤から攻撃があり、それには乗れず。しかし残った集団の中から抜け出して、その集団のトップでゴールできました。上りの感触は自分の中では良かったです。

チームとしては増田選手をエースとして動きました。前半のアタック合戦に増田選手が乗ってくれたので、自分たちは後方待機になったんですが、蒸し暑さもあって増田選手が脱水症状になり三国峠で降ってきてしまいました。そこで順位が入れ替わる形になったんです。そこからブリヂストンの石橋選手と飛び出して集団を追いましたが、タイム差は広がるばかりで勝負はできませんでした。
結果的に勝負には絡めなかったのですが、調子は悪くありませんでした。自分ではいいレースができたと思っています。

イタリアチームは非常に強力だ

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ディエゴ・ウリッシ(イタリアナショナルチーム)

とても上りが多く、特に三国峠はかなりの急勾配だった。来年のコースは同じといっても、さらにコースは長いし、富士山麓方面の新たな上りも加わる。とはいってもイタリアチームは非常に強いので、いいレースができるはず。
自分は上りが強い選手ではない。ただイタリアチーム全体としては、ヴィンセント・ニバリ(バーレン・メリダ)など上りに強い選手がいる。来年はすごく強い選手が来るのではないかと思っている。

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東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 森喜朗会長も足を運んだ
 
 

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