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2017年12月18日

各国からサイクリストが集結した南の島のロードレース【ヘル・オブ・マリアナ2017】

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サイパンを駆けるロードレース、ヘル・オブ・マリアナ(以下 HOM)が12月2日(土)に開催された。今年で11回目を迎えるHOM。私が参加させていただくのも、これが4度目。それにしても自転車レース名に「地獄」と名づけるなんて、日本ではあり得ないと改めて思う(日本では「ツール・ド」と名のつくイベントだらけなのも、少しどうかと思うが……)。
ただ現地に行くと、この「地獄」にネガティブな意味合いは全くないことがよく分かる。地元の人たちはとにかく陽気に、年に1度のチャレンジを楽しんでいる。そして
「俺らの島ではこんなキツいコースでレースができるんだぜ、すごいだろ。みんな楽しんでいってくれよ!」
なんて海外からの参加者に対する歓迎ムードもひしひしと伝わってくるのだ。ここまで陽気で、いい意味でアバウトで、そしてエキサイティングなレースはなかなか見つからない。

 

国際レース化が進むHOM

 

今回、6月に開催された第14回 Mt.富士ヒルクライムのチャンピオンである兼松大和さんと、昨年のHOMで2位となった森本 誠さんのお二人が主催者から招待を受けた。
お二人の他にも8名が日本から参加し、その中にはツール・ド・おきなわで上位入賞経験もある強豪レーサーである中尾 峻さん(Bicicletta SHIDO 沖縄店 店長)も。レース前日に兼松さん、森本さん、中尾さんの3名が顔を合わせ、日本チームとして上位入賞を狙うことに。

それにしても今年は例年にも増して海外からの参加者が多い。前日受付の会場となるマリアナリゾート&スパ ホテルでは、各国のサイクリストが、ウロウロとしており、さまざまな言語が飛び交っていた。主催者から発表があった国・地域別の出走数は以下のとおり。

韓国 23人
香港 17人
日本 10人
中国 7人
グアム 7人
フィリピン 6人
ロシア 1人
イタリア 1人
シンガポール 1人
サイパン 83人

とくに韓国や香港からの参加者が増加し、昨年優勝と3位を獲得したフィリピンチーム(セブンイレブンチームとNAVYチーム)もメンバーを増やして参加していた。日本チームの見立てでは、昨年同様にフィリピンチームが最大のライバルになるとのこと。
毎度のことだが、前日の受付はあっさり終了。レース当日に備え、試走に出かけたり、ゆっくりと部屋で過ごしたり、参加者は思い思いの時を過ごす。リピーターも多いので、年に一度の再会を喜ぶ姿もあちこちで見られた。

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前日受付はサッと終わる。今年も参加賞はTシャツだった
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受付会場にはコースディレクターがおり、直接質問することができる
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兼松さんと森本さんは前日試走へ。レーダータワーの上りなど要所をチェック

 

HOM史上もっともハイレベルなレースが幕を切る

 

HOMのスタートは6:15と早い。まだ太陽が空を明るく染める前に選手は会場をスタートしていく。
毎年のように陽気なMCが絶叫とともに選手たちを送り出す(じつはこのMC、ただのMCではなくこのイベントのレースディレクターだった、すごい兼業……)。

例年のHOMは100kmのロードレースだが、島内の道路工事の影響で今年はコースが115kmに延長され、地獄度(?)がアップした。難所の1つであるレーダータワー(電波塔)への上りがコースの最序盤に設定されており、昨年はこの上りを終えたころ(スタートから10kmほど)には7,8名に優勝争いが絞られたが、今年は倍以上の選手が先頭集団に残っている。各国の力のある選手がしっかり入っているよう。とくにフィリピンチームは6名全員を先頭集団に残し、序盤から積極的にアタック。レースを揺さぶっている。その動きに対応して、集団をコントロールしているのは日本チーム。集団は伸び縮みを繰り返しながら島の北側へ。スーサイドクリフへの長め上りでは、森本 誠さんが積極的にペースを作る姿も。

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6時15分。夜明けとともにレーススタート
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例年以上に先頭集団の人数が多く、序盤からアタックが頻発した
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スーサイドクリフへの上りでは昨年2位の森本さんが積極的にペースを作る

 

バードアイランド、グロット、バンザイクリフと北側の名所を巡るコースを駆け、先頭集団は島のメインストリートを南へ向かう。若干のふるい落としがあったものの、相変わらず先頭集団は人数が多く、アタックと吸収が続く。勝負どころである後半戦に向けて各チーム、選手の思惑が飛び交っているようだ。そんななか、森本さんが痛恨のパンク。レースも折り返しに差し掛かったところで、戦線からの離脱を余儀なくされた。一気に苦境に立たされた日本人チームであったが、さらに不運が重なり、兼松さんもパンクに見舞われる。日本チームで先頭集団に残るのは中尾さんだけに。さらなる数的有利を築いたフィリピンチームは、2名の逃げを形成。追走集団にも4名を残し、追走のペースアップを阻む。次第に先頭2名と追走集団の差は広がっていき、2名の逃げ切りは決定的なものに。後半のダイナミックなアップダウンで脚を削られた追走集団も次第にバラバラとなった。

最終盤のペースアップでライバルを引き離したマーク・ガレド(フィリピン、7イレブンチーム)が昨年3位の雪辱を晴らす優勝。日本勢は中尾さんの9位が最高位となった。
途中パンクで先頭からの離脱を余儀なくされた兼松さんと森本さんもそれぞれ13位、11位でフィニッシュ。日本チームとしては少しほろ苦い結果となってしまったかに思えたが、中原恭恵さんがエリート女子の部で優勝。一矢を報いる結果となった。

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バンザイクリフからの折り返しでまとまる日本チーム。金子大介さん(左から2人目)はフィリピンの7イレブンチーム所属だ
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先頭をひく兼松さん
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サイパンの市街地ガラパンを先頭集団が駆ける
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後半はアップダウンのきつい直線が続く。兼松さん、森本さんがパンクで遅れてしまうなか、中尾さんが気を吐いた
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50km過ぎから抜け出したガレド選手とロモトス選手が協調し、後続との差を広げる
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昨年3位だったマーク・ガレド選手が雪辱を果たし優勝した

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※大会HPより引用

上位リザルトは以下のとおり。

1位 GALEDO, Mark (PHILIPPINES)  3:15:51
2位 LOMOTOS, Ronald (PHILIPPINES)  3:15:55
3位 MORALES, Janpaul(PHILIPPINES) 3:21:32
4位 CARIÑO, Daniel(PHILIPPINES) 3:21:34
5位 DOROVSKIKH, Alexandr(RUSSIA) 3:24:14
6位 WONG, KAI CHUN (HONGKONG) 3:24:52
7位 REYNANTE, Lloyd (PHILIPPINES) 3:28:57
8位 OCHOA, MICHAEL (PHILIPPINES) 3:31:56
9位 NAKAO, Shun (JAPAN) 3:32:04
10位 CAPUTO, Paolo(ITALY) 3:39:03
11位 MORIMOTO, Makoto (JAPAN) 3:40:54
12位 WAN, SING LAAM (HONGKONG) 3:43:51
13位 KANEMATSU, Yamato (JAPAN) 3:44:41
14位 MARTIN, Jonathan (GUAM) 3:44:42
15位 YUEN, Chi Ho(HONGKONG) 3:45:53
16位 KANEKO, Daisuke(JAPAN) 3:57:55
17位 CHAN, Ho Wang(HONGKONG) 3:58:20
18位 NAKAHARA, Yasue (JAPAN) 4:01:51
19位 GIMOTO, Jake (GUAM) 4:01:59
20位 DIZON, Nap (NMI) 4:02:05

 

HOMはそれぞれのチャレンジ! そして全員で健闘を称える

 

トップ集団のレースが終わったあとも、コース上では多くの参加者がフィニッシュラインを目指し、己との戦いを続けている。そんな参加者に対して、沿道からの温かい声援が聞こえてくる。
HOMの制限時間は13:30。115kmのレースだが、スタートから7時間15分もあるので、マイペースにでもペダリングを止めなければ、ほぼ完走が可能だ。

レース終了後は毎年恒例のアフターパーティがマリアナリゾート&スパのプールサイドで開催。飲み放題&食べ放題の会場では、国を越えて参加者同士がわいわいと健闘を称え合う。レース中、偶然一緒になった選手に「あの時は前に出て、ペースを作ってくれてありがとう」なんて言葉をかける姿もみられた。
毎度のことながらHOMのアフターパーティはとても長い(笑)。年代別のほかにMTBやリレーの部もあり、表彰カテゴリーはなんと29! 会場全体がほろ酔い気分になり、早起きした参加者がウトウトし始めたところで、長時間に渡った表彰式も終了。また来年の再会を約束しつつ、参加者たちはおのおののホテルへと帰っていった。

常夏の島サイパンで毎年12月に行われるHOM。日本ではロードシーズンの終わりに差し掛かっているが、1年の締めくくりに参加すればきっと良い思い出が作れるはずだ。ダイビングなどアクティビティも豊富なので、家族と一緒に訪れるのもおすすめ。今回の盛り上がりを見ると、今後より国際色豊かなお祭りイベントとして成長していきそうだ。

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給水所の子どもたちからはシャワーサービス(?)が
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地元のサイクリストはMTBでの参加も多い
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受付会場では毎年恒例のマッサージサービスが行われた
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アフターパーティはホテルのプールサイドで開催
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セレモニーを前に参加者をねぎらう舞いが披露された
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中原恭恵さんがエリート女子の部で見事優勝!

ヘル・オブ・マリアナ 大会HP:http://hellofthemarianas.com/

 

日本人参加者のコメント

中尾峻さん(男子エリート9位 ※日本人最高位)

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個人的に、ツール・ド・おきなわがに向けて1年で最も練習をし、例年そこで燃え尽きてオフに入っています。せっかく仕上げた身体を生かせるレースがあればと探しており、ヘル・オブ・マリアナを見つけました。チームを持っているので、レース後にダイビングなどもできるサイパンでのレース参加はチームイベントとしても楽しめるのではないかなと思い、今回は視察も兼ねていました。
ヘルというだけあってタフなコースなのは間違いないです。とくに後半はコースもきつく、気温も上昇するため、まさにヘルでした。レースレベルも、ツール・ド・おきなわ市民210kmに匹敵するものでした。おきなわの個人と個人のぶつかり合いとは異なり、国と国の勝負という要素もあり面白かったです。日本チームは団結して挑まないとフィリピンチームを倒すことはできないとも感じました。
後半、先頭がフィリピン2名、追走6名となりましたが、この追走6名も自分とロシア人以外フィリピンチーム。こうなると、非常に厳しいです。ここに日本人があと1,2名いるだけでレース展開が全然違ったと思います。来年挑戦できる機会があったら、暑さ対策とギア選択(今回39Tでしたが、36Tに)を間違えないようにして、事前に日本チームで話し合って挑みたいですね! 思っていた以上にレベルが高かったので、ツール・ド・おきなわ以降も一切気を緩めたら勝負は出来ないと思いました。

 

森本誠さん(男子エリート11位)

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心配していた天気も当日は抜けるような青空で最高の雰囲気の中でレースができました。兼松さんとうまく連携して危険な逃げには乗って行こうと思っていたのですが、フィリピンのプロ+セミプロ勢の波状攻撃を防ぎきれず、防戦に回ってしまったのは反省点です。個人参加の中尾さんも含めて、日本チームで動けていれば、あのフィリピンの二人逃げは防げたと思います。
僕だけじゃなくて、兼松さんにまで残念なパンクが起こってしまい、今年は日本チームの運が本当に悪いなと。ただ、パンクがなくても、まだ元気なフィリピン人選手が数名残っていたので、3位争いもかなり激しいものになっていたと思います。多人数のフィリピン勢がチームプレイを仕掛けてくるのは分かっていたので、もう少し日本チームとして話し合いをして臨むべきでした。
例年と違ってイタリアの強豪選手がいたり、途中までは韓国も先頭集団に2名を残してレースを進めていたように、レースとして選手層が厚くなりましたし、これからどんどんそうなっていくでしょう。
地理的な面でも、コースのキツさの面でも、いずれは、アジアのホビーレーサーがしのぎを削るような大会になって行くのではと思います。日本からもどんどん行きやすくなれば良いのにと思いますね。

(取材協力/マリアナ政府観光局)

※後日、第14回Mt.富士ヒルクライムチャンピオンの兼松大和さんによるレースレポートをお届けします。お楽しみに!

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