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2019年10月07日

【三船雅彦さんインタビュー】自転車イベントで楽しむためには

「みんな、もっとマウンテンバイクとかグラベルロードとか乗ったほうがいいんじゃないかな?」
富士チャレンジ200のレジェンドライダーとして参加いただいた三船雅彦さんとの会話の中でそう呟きました。その意味を深掘りをしたくなり、後日ショートインタビューをおこないました。

b4_ff276photo:小野口健太

楽しむための準備をしよう
自転車でみんなと走るのは楽しいこと。でもその楽しいことをするためにも準備が必要だと思います。
これは一般的なホビーサイクリストだけに言っているのではなくて、ブルベの600kmや1000kmを体を壊さずに走るために私もペダリングやトレーニングを行なっていますから。

イベントに出場するなら範囲で自転車を楽しみながら走れるようにしておきましょうというのが私の意見です。
エンデューロといえども安全に走るためには、普段から自転車で遊ぶことが大切です。そこに上級レベルの要求はしませんが、ちゃんとできていない人が多い印象でした。

まっすぐ走っているつもりでも、それができておらず集団の中で正しく安全に走るという走り方が身についていないかったり、右側から抜いてはいけないというルールがあり、十分に左側にスペースがあるのに右側から抜いてしまったり。せっかく出て楽しもうと思うなら、そういうことも含めて、普段からバイクコントロールが上達するような乗り方や、心構えがあっていいですよね。

オフロードのライドはテクニック磨きにうってつけ
そういう意味でグラベルロードやマウンテンバイクでグラベルをまっすぐに走るように心がけると、遊びながらバイクコントロール技術を身につけることができます。ロードの世界トップクラスの選手には、マウンテンバイクやシクロクロスをやっていた経験がある選手が多く、ロードでも技術が生きているのは証明されています。とはいえ何でもかんでもやる、というのは一般の人には難しい面もありますが。

グラベルやシクロクロスはもっと自由度が広がる。なにせ林道を走れるといったら、ね。グーグルマップを開いて「あ、これ近道や」と思って行ってみると何割かは思いっきり砂利道(笑)やんと。そういうのもグラベルロードだったら行ってみようかなって思える、自転車がドロドロになったら掃除する、すると自転車に対する気持ちも変わっていきます。そういうのがいいですよね。

富士チャレンジ200(エンデューロ)のミッションをこなそう
今回の富士チャレは、序盤とトークショー、中盤に表彰プレゼンターがあり、数回に分けてコースを走ることになり、最初のフレッシュな状態、中盤のちょっと力尽きた人たち、後半の完全に売り切れた人たち、といろいろなカテゴリーをじっくりみることができました。
まず、ひとつの基準として、富士チャレ上位の人たちはレベルは高いと思います。あの時間で200kmを走りきることができるので、普段からしっかり走っている人でしょう。

ff164  ff166photo:小野口健太

後半の最後の15分は走りきれなかった人たちへ声をかけて走りました。
声をかけると、あと2周で達成できそうな人もいれば、残り50km! と達成できないような人もいました。そういった人の多くは坦々と一人で走っているんです。もちろん一人で走ってはいけないというルールはありませんが、200kmを時間内で走るという趣旨ではテクニックのひとつとして知らない人と協力するということを楽しむ、必須ミッションのひとつですね。
準備をして楽しむということを意識してほしいです。

富士チャレンジ200に3年連続でゲスト参加していますが、走っていると昨年も声をかけてくれた人がいます。リピーターとしては前年を越えようと思っている人が多いのでしょう。より速く走ろう、長く走ろうとそれぞれ目標設定があるから出るのであって、大会の存在意義にもつながっていると思います。

前半に早々からちぎれている、休んでいる人は練習をしていない可能性が高いです。ちょっときつい言い方をすると「練習をしてから出なさい」と。なによりリスクが大きいですし、練習をすればもっと楽しめます。

レジェンドライダーという役割で今回の富士チャレンジ200を走りましたが、一生懸命ついてくる人もたくさんいました。同じく大石さんや阿部さんのような人と一緒に走ることで、自分にはないものを感じとってくれれば、安全に走ることやこれから趣味として広がりがあるかもしれません。

集団走行を訓練する場所を
そもそもサーキットコースは普段走ることができません。こういった機会だからこそ走れる。
日本では道路交通法で一列でしか走れない。2列3列で走るのが苦手なのは仕方がないことです。だからこそ、機会を見つけてしっかりと走ることが大切ですね。
集団走行練習会など、坦々と選手と一緒に100km走りましょうとかいいと思いますよね。

基本的には玄関をあけたら、ゴールまで自分でマネジメントできるスポーツ。自分で遊び方を創造できるはず。他の国に比べて日本ではまだまだ薄いのかなあと感じています。富士チャレや他のイベントにしても参加した上で自分でどれだけ楽しみを追加できるか。
出場して満足じゃないです。“仲間と一緒に”、“優勝を狙いたい”というのもひとつ。“帰りに好物を食べる”というでもいい。そういったいろいろな楽しみを膨らましていけるといいですね。

 

 


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★三船雅彦(みふねまさひこ)
高校卒業と同時にオランダへ単身自転車留学し、94年よりプロ登録しプロロードレーサーとなる。
ツール・ド・フランドルに日本人としてはじめて出場、翌年にはリエージュ~バストーニュ~リエージュと言った当時のワールドカップ対象レースはじめ、世界主要レースも経験。
引退後の2011年にはブルベの最高峰ともいわれるフランスのパリ~ブレスト~パリ(以下PBP)に参加、53時間16分で完走し日本人選手の記録を更新する。
2015年にも再挑戦、前回の記録を大幅に更新し43時間23分で完走を果たす。
2017年 4年一度行われるイギリスのロングライドイベント ロンドン~エディンバラ~ロンドン(1436km)を81時間で完走。3度目の挑戦を2019年8月に行った。

 

写真:小野口健太、編集部

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