執念 〜入部正太朗、2019年全日本選手権優勝への軌跡～（後編）

プレッシャーを感じるのは、向き合っているから

全日本直前のシマノレーシングのミーティング。あらためて入部をエースにして、タイトルを狙いに行くことがチーム内で確認された。戦い方としては、前半から仕掛けていくのではなく、あくまで後半の力勝負まで入部を温存する。他の選手はアシストしつつ、入部にトラブルがあったときは代わりにエースとして勝負する。

 

「プレッシャーはかなり感じましたね。また中心で任せてもらえる喜びはあったんですけど、チームメイトも力をつけてきてます。僕も他の誰かがエースだったら、全力で支えたいと思っていた。それにTOJで失敗してへこんでいたのに、また中心でやらせてもらえることになったので、大きいプレッシャーでした。だから、ミーティング中も『また失敗したらどうしよう』とネガティブな言葉が出たんです」

それを聞いた野寺監督は「プレッシャーを感じるのはちゃんと向き合っている証拠だから、自分を成長させるいい機会なんだ」と励まし、入部もチームメイトとともに「がんばろう」と覚悟を決めた。

「チームメイトとの絆も深くなっていたと思います。ぶつかることがあっても、僕が迷惑かけることがあっても、みんなが手を差し伸べてくれてできた絆だと思っているので、みんなでがんばりたいなと思いました」

野寺監督に恩返ししたいという気持ちも強かった。

野寺監督と入部の間にも強い絆が築かれている

「野寺監督にはシマノに入ってからずっとお世話になっています。ほんとに優しいですね。選手を見捨てないで、いつでも味方でいてくれます。僕たちが結果で応えられない時期は監督も悔しさを背負っていたと思うし、僕の知らないところで外からのプレッシャーもあると思うけど、それを選手に見せない。いつでも僕たちを守ってくれる。僕たちは最高の場を提供してもらって、一切の不満も何もない。ほんとに感謝しかなくて、逆にもっと結果出したいなという感じですね。監督が喜んでくれる姿は僕たちもうれしいですから」

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