執念 〜入部正太朗、2019年全日本選手権優勝への軌跡～（後編）

誇れる勝利

表彰台の中央に立った入部。最後まで戦った新城からは「おめでとう」と声をかけられた

全日本選手権を終えて、SNSではひとつの話題が上がっていた。入部がレース終盤、先頭交代せずにスプリントで新城に勝ったことを疑問視する意見だった。これに対して、ロードレースでは起こりうること、勝負の世界だから勝つために最善の策を選んだ入部は間違っていないという声もあり、こちらの方が多数を占めていた。

それでも、入部は自らに対する批判を受け止めていた。

「正直、言われて気持ちがへこむし、悲しい部分もあります。全日本の動画見たら、苦しくなったりもします。いろいろな感情が起きるけど、自分の中ではちゃんと向き合っています。新城さんに力で負けたのは確かなんで、もっと力をつけないとダメだし、言ってもらえることはありがたいことです。それを乗り越えて強くなるための要因のひとつとして、自分に必要なことととらえています」

先述した約1カ月前のTOJ京都ステージで、入部自身も先頭交代しなかった選手に刺され、ステージ2位となった経験を味わったばかりだった。

「もちろん新城さんに悔しさはあると思うし、わかります。僕も京都ステージのゴール後は悔しかったけど、勝った選手は覚悟を決めて勝ちに執着して勝った。だから、僕は強い先輩に胸を借りて、自分の本気の勝負を挑んだ。そこにはリスペクトしかないんです」

支えてくれた仲間のためにも、自分が落ち込むことはできない。

「自分が胸を張れないと、チームメイトにも申し訳ない。みんなが支えてくれて、喜んでくれることが、僕にとっては胸を張れる要因ですね。全部がありがたいことです。もっと強くなるという決意につながります」

 

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