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2020年04月01日

【富士チャレンジ200】今中大介氏に訊く富士チャレの走り方 Q&A

編集部では4月29日開催を目指して、検討を進めてまいりましたが、今回は参加者と大会関係者の安全のために中止という判断を下すことになりました。
この記事は今回の春開催に併せて富士スピードウェイを走る皆さんのために作成しました。富士スピードウェイで思いっきり走れる日は必ず、また訪れます。その時のために“脚”を磨いておきましょう。

fc163写真:小野口健太

富士スピードウェイのコースはどんなコースですか?

今中さん「50年以上にわたり、国内外のトップクラスのレースを開催してきた伝統のあるコースです。他の国際規格のサーキットに比べ直線が長く、上りがダンロップコーナーからの第3セクションに集中しているという、メリハリのあるサーキットでもあります。コース幅が広いので、比較的に安全に走ることができます」

fc217写真:小野口健太

fc210写真:小野口健太


 

このコースならではの走り方はありますか?


今中さん「ロスなく走るためには、風向きをよく見ることが大事です。長い直線が追い風なら無理をする必要はないですが、向かい風なら少し頑張って速いグループに加わり、体力を消耗しないように気を付けましょう。第3セクションの上りを上手にこなすことができれば、自分の位置を維持しやすいコースです」
ff166写真:小野口健太

下りと上りはどのように対処すればいいのでしょうか。

今中さん「一気に下る1コーナーからの下りで差が大きくつく傾向があります。また第3セクターは、勾配の変化がありながらつねに上りが続く設計なので、ヒルクライムの能力も必要です。
練習としてお勧めしたいのは、100~200m程度の長さの丘越えが連続する丘陵地帯を走ること。上り口から一気に力を出し、頂上からの下りは惰性を使っていいので、なるべくブレーキを最小限にして一気に下ります。心肺機能を鍛える目的のほか、新たな刺激による上りのペースアップ効果が得られます。短いアップダウンのコースでも構わないので、時おり休みを入れながら、連続的に丘陵地帯を走ってみましょう。
初心者の方は思わぬところでブレーキをかけてしまったり、まっすぐ走れていなかったりすることがあります。どちらも追突の危険性が出てきますので、事前にライディングテクニックを身に着けるように心がけましょう。重心を後方に下げながらフロントブレーキを強く掛ける急制動をマスターすることでも、操作に余裕が生まれ、スピードへの恐怖感が薄まります。
本番でソワソワしないで済むように、上手なライダーの後ろについて走るなどして、事前の準備をするようにしょう」

fc228写真:小野口健太

上りがとてもきつく感じてしまいますが、対策はありますか。

今中さん「上りが苦手な方は、期間を決めて上りに集中した練習を行うと効果的です。3分間走や5分間走なども取り入れましょう。
ペダリングも大切で、時計に例えて3時の位置で最大力を発揮し、5時~6時の位置では脱力するようにします。8時から10時の引き足も有効です。重めのギアに設定して、左右を意識しながらペダリングすることで、ペダリングテクニックを習得することができます。また、下死点で踵を下げると、引き足が使いにくくなったり、スムーズな出力がだせなくなったりするので、踵の角度はなるべく維持するようにしましょう。
上りのスピードに対する刺激が少ない方が、イベントではたくさん見受けられます。長さ20~50m程度の短い上りを一気に駆け上がるなどして、身体に刺激を入れて、スピードを身につけましょう」

このコースの場合、集団走行ではどのようなところで気をつければいいでしょうか。

今中さん「コースの右側が初心者、左側が高速走行の集団になります。余裕がない初心者はついコースに広がりがちになりますので、右側走行をしかり守ってください。
集団走行では前の選手の左右の動きに影響されやすく、余波が拡大して後ろに行くほど蛇行が激しくなることがあります。これは大変危険なので、各々がまっすぐ走るように気を付けましょう。私は集団内で“前に影響されないように、まっすぐ走るようにしましょう”と、優しく声掛けをするようにしています。ぜひ皆さん意識をして走行をするようにして下さい。
ローテーションは、レースを上手に走る最も基本となるテクニックです。先頭に出る番になったら、ペースを上げても下げてもいけません。そのままのペースを維持しつつ先頭に出て、徐々に横にずれ、後ろの選手と牽引役を交代するのがルールです。後ろに下がっていく際に、スピードをわずかに落とすのが、きれいなローテーションを行うコツなのです。せっかくエンデューロやロードレースを走るのなら、ローテーションをマスターしたいものです」

富士チャレンジ200で自己記録を更新するためには、どんな練習が向いていますか?

今中さん「ソロに出る方は、これまでも様々なことを試行錯誤している事と思います。自分に合った集団や、少し速い集団で走ることが、もっとも記録更新につながります。走りながら十分なカロリーや水分を補給できるように工夫することも大切です。
長丁場なので、上りセクションで余裕が有るか無いかによって、後半の走りが変わってきます。なるべく普段から上りの練習をしておきましょう。
ロード選手は”競技と同じ時間のトレーニングをする”とよく言います。普段1時間程度しかトレーニングをしていないと、1時間でスムーズなエネルギー代謝が終了してしまいます。長時間の競技を目標にしている場合には、週末に同じ時間を自転車で過ごす必要があります。上り下りを含め、なるべくリハーサル的に走っておくことが大切です。
また、前述のローテーションをするなど、基本テクニックが身に着くようになると、自分自身を冷静に分析できるようになり、結果としてロスのない走りにつながるようになります」

100kmにエントリーをしています。3時間切りをめざしていますが、補給食はどんなものが向いていますか?

今中さん「3時間切りを目指す場合は、平坦部分のペースも速いので、固形物はとりにくくなります。濃厚なジェルや高カロリードリンクが使われる傾向があるのは、そういった理由があるからです。ただし、液状の補給は重量が増してしまうので、普段のトレーニングから様々な補給食を試しておきたいものです。途中でBCAAが入っている補給食を摂ることも、パフォーマンスを維持するため有効です。
ハンガーノック(体内のエネルギー切れ)になると、極端に出力が低下してスピードが落ちます。ハンガーノックが起きないように、用心深く早めの補給を心がけるようにすることがとても重要になります。万が一のために固形の補給食をポケットに入れておくことも有効です。また、水分が不足して脱水症状のようになると、パフォーマンスが低下します。前もってリハーサル的に走るなどして、どの程度水分が必要か、あらかじめ知っておくようにしましょう」

 

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今中大介さん●元プロサイクリスト。1994年〜1997年までイタリアのプロチーム、チームポルティに所属。94年、95年は世界選手権日本代表に。95年はジロ・デ・イタリア、96年には日本人として戦後初のツール・ド・フランスに出場している。引退後の98年にはディストリビューターの(株)インターマックスを設立。現在は全国の自転車イベント出演や、レース解説、ライディングスクール、講演会などを行なう。

 

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編集部ではさっそく次回大会の企画づくりに入りました。再び皆さんと富士スピードウェイでお目にかかれる日が来ることを待ち望んでいます。

写真:小野口健太

関連URL:富士チャレンジ200公式ページ

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