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2016年05月17日

3モデル インプレッション Vol.15/AGE(エンデュランスモデル)

DE ROSA / AGE

デローザがもっている溶接技術とデザインセンス、そして時代の変化に応じた新しいジオメトリーを組み合わせた2016年の新世代のスチールフレーム。ラグを使わずフィレット溶接でチューブ同士をジョイントしており、滑らかな接合部分は独特の美しさをかもし出し、よりスチールの魅力を引き出している。メッキ塗装を施したアジェ・ラスターはアップチャージとなるが、これも別格の美しさである。

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アジェ■ラグを使わずフィレット溶接でチューブ同士をジョイントしたスチールフレーム。滑らかな接合部分は独特の美しさをかもし出し、スチールの魅力を引 き出している。デローザがもっている溶接技術とデザイン、そして時代の変化に応じた新しいジオメトリーを組み合わせた2016年のニューモデルである。 メッキ塗装をほどこしたアジェ・ラスターはアップチャージとなるが、別格の美しさである。■フレーム:スチール■フォーク:スチール■試乗車のコンポーネント:カンパニョーロ・コーラス■ホイール:カンパニョーロ・ゾンダ■完成車実測重量: 8.5kg(ペダルなし)■カラー:シャンパーニュ、ブルー、クローム(アジェ ラスター)■サイズ:48〜61cm(1cm刻み)、カスタムオーダー可能■価格(税抜):395,000円(フレームセット)、432,000円(ラスター フレームセット)

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ノスタルジックなクイルステム。ステム側面にはデローザのロゴが刻まれている。

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スチールフレームらしい集合ステー。

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リアエンドの肉抜きがまたニクらしい演出。

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スタンダードタイプのボトムブラケット。最新スペックのBBを組み合わせた外観は思ったよりまとまりが良い。

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Wレバー台座、むしろケーブルが外引きであること自体も懐かしい。

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ヘッドマークが凛然と輝く。昔から変わらない鮮やかなデザインだ。


IMPRESSION

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走る愉しさを提供する♥菊地武洋

お客さまの立場になって……というのは、モノ作りだけでなく商売の基本だ。アジェも顧客のニーズによって誕生したモデルであり、デローザにとってスチール合金のフレームは特別な存在である。口やかましいロートルにしてみればラグレスのデローザなど受け入れられないだろうし、体力の限界に挑む機材を求める人にとっては、単なる懐古趣味のフレームにしかみえないだろう。どちらの意見にも賛同するが、アジェは過去の栄光をなぞるために開発されたわけでもなければ、最新のカーボンフレームを向こうに回して体力の限界に挑むためのバイクでもない。重量は重く、規格も最新ではない。しかし、スポーツサイクリングの愉しさを知るには十分であり、身の丈を知った大人が乗っていそうな佇まいは、ビギナーと達人に似合う。アジェの走行性能の限界は高くない。そう、限界の低さがアジェの面白さといっていい。能力を引き出せない高性能車と、限界領域でライディングを楽しめるバイク。どちらが楽しいかは、改めていうまでもない。走行性能のみを採点するなら、たかがしれている。でも、カーボンフレームが路面の振動を殺していくのとは対照的に、アジェは振動を調べにして楽しませてくれる。ゆっくり走れば楽しい。そう教えてくれるのがアジェであり、コーナーの進入から脱出するまでのフロントフォークの振る舞いは、まさにデローザのアイデンティティだ。予算に余裕があるならば、カスタムオーダーに応じているので、「デローザのカスタムフレーム」というマニア垂涎の贅沢を経験してみるといいだろう。

 

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クロモリの世界観を味わいたい♥芦田昌太郎

クロモリは楽しい。インナーでのんびり走っていると景色が自然と目に入ってくる。大地も大気も己の力も、全てをダイレクトに感じられる。パイプの継ぎ目はラグ・レスで仕上がっていて、外観の印象もスムースだ。凝った作りのラグもクロモリの楽しみではあるが、これはこれでまた美しい。さて、このバイクをどんなシチュエーションで乗れば良いのか考えてみた。軽量カーボンのフレームを好む私には、悩むところである。例えば、夫婦やパートナーとライドといったシチュエーションはどうだろうか。このバイクなら、ランチバスケットとコーヒーポットでも持って、サイクリング&ピクニックにのんびりと出かけるのも良さそうだ。サイクリングの魅力を存分に味わえ、きっと会話も弾むだろう。とはいえ、長い距離はさすがにキツいかもしれないが、デジタルな時代に敢えてアナログを楽しむ余裕をもちたいものだ。

 

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高嶺の花としての存在だったデローザを回顧するモデル♥山本健一

クロモリ時代からアルミニウム全盛期のバリバリのレーシングなデローザのイメージが当方にとってもっとも多感だった頃で、そのころのデローザのパワフルさが脳裏に焼き付いている。アニバーサリーモデルやチタンフレームでキレキレだったラインナップは、眩しいくらい輝いていて、10代の若輩者には到底手が出ないブランドだった。カーボン全盛の今においても、変わらないのだがここに来て新型のスチールフレームというモノを目の当たりにして、少々震える思いもするのである。しかしながらミドル層の我々をターゲットにしているのは一目瞭然で、同じく当時を振り返り羨望の眼差しを向けている年輩のことを思うとニヤリとしてしまう。しかしながらレーシングな当時のスチールフレームとはやや違っていて、さしずめマイルドレーシングといったところでホビーレーサーにとっては扱いやすく乗りやすいバイクに仕上がっているだろう。ロードバイクに要求するものとは対称的にはなるが、時間に追われずサイクリングを楽しむといった乗り方がこのバイクには相応しいと言える。ギアとしてのロードバイクではなく、ライドするという行為そのものを楽しませてくれる。そして休日を充実した時間で満たすことがアジェに課せられた使命だ。筆者は現在では、まだアジェとの相性がよいとはいえないが、いずれ訪れるそのときを楽しみにとっておきたい。

(写真:和田やずか)


問:日直商会 http://www.derosa.jp/

 

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